待望の一戦

 「ひのき舞台で顔を合わせる日を楽しみにしています」-2017年の6月。デビューから無敗のまま29連勝を飾り、将棋界の記録を塗り替えた14歳のスーパールーキーに、棋界の第一人者はこんなコメントを贈った。待っていますよ▲それから5年と少し。立場を入れ替えて両者がひのき舞台でぶつかることになった。将棋の王将戦で羽生善治九段が藤井聡太五冠=竜王・王位・叡王・王将・棋聖=への挑戦権を獲得した。ファン待望の夢の対決▲羽生さんは今季、トップ棋士7人が挑戦権を争う王将戦のリーグを無敗で勝ち抜いた。昨年度は棋士人生で初めての負け越しを経験した。「下り坂」の声も聞こえる中での見事な復活劇が同世代にはうれしい▲羽生さんは「タイトル獲得通算100期」の偉業を懸けて王将戦に臨む。快進撃への喝采を一身に浴び続けてきた藤井さんは“アウェー”の空気を初めて体験することになるのかもしれない▲二人の前哨戦が昨日、棋王戦の挑戦者決定トーナメントで実現した。将棋は中盤の難所で的確に踏み込んだ藤井さんが優位を築き、リードを保ったまま終盤へ。最後は即詰みの局面まで指して羽生さんが頭を下げた▲七番勝負の開幕は年明けの1月8日。もういくつ寝ると…と、気の早いカウントダウンを始めている。(智)


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