「松竹ヌーベルバーグ」の旗手として国内外で活躍した映画監督の吉田喜重(よしだ・よししげ)さんが12月8日午前8時33分、肺炎のため東京都渋谷区の病院で死去した。89歳。福井県福井市出身。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は妻の俳優岡田茉莉子(おかだ・まりこ)さん。
1955年東京大学仏文学科卒業後、松竹大船撮影所に助監督として入社。木下恵介監督らに師事し、60年に映画「ろくでなし」で監督デビュー。「秋津温泉」「日本脱出」などを手がけ、先鋭的な作品で大島渚監督、篠田正浩監督らとともに「松竹ヌーベルバーグ」と呼ばれて注目を集めた。
64年、岡田さんと結婚。松竹退社後、66年に現代映画社を設立、「エロス+虐殺」「戒厳令」などの作品のほかテレビドキュメンタリーも数多く制作した。
「人間の約束」(86年)で芸術選奨文部大臣賞を受賞。「鏡の女たち」が2002年のカンヌ国際映画祭で特別招待作品に選ばれた。
1990年にフランス・リヨンのオペラ座で「蝶々夫人」の演出を担当するなど文化交流に貢献したとして、2003年フランス政府から芸術文芸勲章オフィシエ章を受けた。各国の映画祭で特集上映が行われるなど、海外で高く評価された。