創業者の思いが息づく 広島のソウルフード「お好み焼き」を支える100年企業

戦後復興の象徴、広島のソウルフード「お好み焼き」を支えるオタフクソースが、創業100周年を迎えました。

オタフクソース 社員たち
「上下関係はあっても壁があるわけではなくて」

「わたしのような若手が話しやすい、上の者にかけあいやすい雰囲気」

「生意気ですけど、100年の中にあるオタフクイズムなのかなと思います」

そして、100年を支えてきた創業者の人生訓とは…。

オタフクソース 社長
「ものを売るという思いではなくて、『幸せを売れたら、ええね』と」

きょうのテーマは、『創業者の思いが息づく お好み焼きを支える100年企業』。

広島県民にとても身近なオタフクソースですが、創業100周年を迎えました。記念事業や社員・社長の言葉から100年続いた秘訣を探ります。

お多福グループ恒例「お好み焼きの実習」です。ことしの新入社員は20人。

オタフクソース 新入社員 田中亮太さん
「つらいです」

広島出身の田中亮太さん。料理経験は、ほとんどありません。

新入社員 田中亮太さん
「包丁すらあまり触ったことがなかったので、その時点で難しいです」

― 出来は?
「伸びしろです」

2018年に広島駅北口にオープンしたオタフクソースの「OKOSTA」。プロのお好み焼き作りを体験できます。講師はなんと…。

渕上沙紀アナウンサー
「教えてくださるのは、田中さんです。よろしくお願いいたします」

半年前の新入社員研修でキャベツの千切りに苦労していた田中さんが、OKOSTAに配属されていました。

田中さんの指導のもと、体験教室は順調に進みます。

渕上沙紀アナウンサー
「せえの。うわー。ちょっと場所がずれちゃいました」

オタフクソース OKOSTA(当時) 田中亮太さん
「お好み焼きは、やり直すことができる最高の料理ですので。これは、人生と違って、やり直すことができます」

半年前は、自信がなかったというキャベツの千切りは…。

渕上沙紀アナウンサー
「すごいです。これは、本当に半年間ですごい成長です」

オタフクソース OKOSTA 田中亮太さん
― 入社して半年たったが?
「最初は、これからどうなるんだろうというのが心配で。でも、ここまで成長できたのは先輩方のお陰なので」

「自分がお好み焼きを作っていると、すぐに先輩が声をかけてくださったり、そういった風土みたいなものはあると思っていて。生意気ですけど、100年の中にあるオタフクイズムなのかなと思います」

オタフクソース OKOSTA 秋田悌 店長(当時)
― 先輩との距離が近い?
「よく言えば、垣根が低い。悪く言えば、なめられるところもあるかもしれないですが」

「でも、本当にうちの社風の一番好きなところで、上下関係はあっても壁があるわけではなくて、簡単に相談できる先輩がいたり、助けられる後輩の関係があったり、田中ともその関係性があって、オコスタがよくなったなと思います」

オタフクソースは、100周年記念事業の一環として広島市西区の公園に子どもたちが遊べる遊具を寄贈しました。

保護者
「ありがたいですね。ふだんの遊具と違って、形もオシャレなので」

ここは、1952年から26年間、酢やソースを製造していたオタフクソースゆかりの場所です。

オタフクソース 佐々木孝富 社長
「会社が発展してきた大事な場所で、一緒に住んだ大芝の町民の方がたも仲間。子どもたちに何かしたいという若手メンバーの考えはよくわかる」

企画したのは、創業100周年プロジェクトの若手メンバーです。

遊具寄贈を考案した オタフクソース 峰岸宏行さん
「遊具の素人の集まりからスタートしたので、仮りで立てたような予算は全然、的はずれでしたね。予算はオーバー、オーバーしていきました」

― でも、思いを形にしたいことをしっかり会社がくみ取った感じ?
「何度も会社には答申をして、お好みソースのふるさとは大芝だよという誇りを持っていただけるように少しでもなれたらと思っている」

オタフクホールディングス 広報部 清水美希さん
「わたしのような若手が話しやすい、上の者にかけあいやすい雰囲気を上司を含め、社長を含め作っているのが、うちのよさかなと思います」

社員が先輩たちに意見を言いやすい社風というオタフクソース。

ここは、社長室…? ではありませんね。

オタフクソース 佐々木孝富 社長
― 社長室がない?
「経営者と社員で隠し事なんてないじゃないかと。常にみんな並んで話ができる。すぐ集まれる環境でいましょうというのが、わたしたちの企業文化の中にありますね」

100年続いた秘訣を聞きました。

佐々木孝富 社長
「わたしたちは、創業者の思いや人生訓を糧にして日々、事業を運営していますし、思いやりの心は創業以来、同様にあって、そういう思いを持ってやってきた」

― 創業者の人生訓?
「例えば、『一滴一滴に性根を入れて』とかですね」

創業者・佐々木清一氏の言葉は、今もオタフクソースに息づいています。そして、清一氏の妻・ハヤさんが贈った言葉…。

佐々木孝富 社長
「もとは創業者の奥さん、ハヤさんの言葉に、佐々木商店を立ち上げる前に、創業者・おじいちゃんが悩んだんですよね。そのときに言葉として『ものを売るという思いではなくて、“幸せを売れたら、ええね”』と。そういう言葉をかけて、今の清一おじいさんは、気持ちを高めて創業したと」

♪100年サンシャイン 100周年を記念して斉藤和義さんと楽曲制作

□ オタフクソース 100年の歴史

1922年 広島市西区横川町に「佐々木商店」創業

1950年 ソース製造開始

1952年 広島市西区大芝に本社工場を移転

1957年 家庭用お好みソース「オタフクお好みソース」発売

1975年 カープ初優勝の年に「オタフクソース」に社名変更

1975年 山陽新幹線開業で関東・関西へのみやげに

1992年 「お好み焼き文化を学んでほしい」新入社員の実習研修スタート

2008年 「Wood Egg お好み焼館」オープン

2013年以降 中国・青島工場 ロサンゼルス工場 マレーシア工場 稼働

商品数は約2000種類

そして、ことし、オタフクソースは、創業100周年を迎えました。

オタフクソース 佐々木孝富 社長
「ここまで支えていただいたことを大事にして、これからも企業を継続していこうと、食の幸せを広げていく活動をがんばっていこう。そんな気持ちでいますね」

― お好み焼きを支えてきたオタフクソースは、広島を代表する味。100周年イヤーは、来年9月まで。公園への遊具寄贈や斉藤和義さんとのコラボに続く記念事業があるということで、楽しみにしたいですね。

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