「長崎はウクライナの将来の姿」 避難民のガリーナさん 被爆地の復興研究で訪問

原爆の絵を眺めるガリーナさん=長崎市、ヒバクシャ・コミュニティ・センター

 ロシアの侵攻後に日本へ避難したウクライナの都市計画・建築の専門家、ガリーナ・シェフツォーヴァさん(49)=東大客員研究員=が被爆地の復興を学ぶため長崎市を訪問している。9日長崎新聞の取材に応じ、母国の再建を見据え「長崎はウクライナの将来の姿。自分の国のために長崎がどのように復興したか研究したい」と語った。
 「おばあちゃんからいつも戦争の話を聞いていた。歴史は繰り返した」。侵攻が始まった2月24日、ガリーナさんはサイレンが鳴る首都キーウにいた。侵攻が始まることを知ったのは前日の夜だった。
 都市計画や建築を専攻しキーウの国立大で教壇に立っていたガリーナさん。日本の木造建築に興味を持ち約20年前に来日して以降、両国を行き来していた。侵攻後、3月にウクライナ西部へ逃れたが「ミサイルがどこにでも飛んで来て」安全な場所はなかった。6月に来日したという。
 ウクライナではロシア軍の撤退地域から復興が始まった。どうすればよりよい再建ができるか。被爆地の現在を調べてみたくなり、1週間前に来崎した。
 同じ被爆地でも、広島が建築家の下に町を全く新しくしたのに対し、長崎は公園を整備した以外は自然のままに復興した点が異なると分析。港町や異国文化などの顔を持つ面も踏まえ「長崎は町に意思があるみたい。まるで自分の町の歴史を(自ら)守っているように」と表現した。
 ガリーナさんは9日、長崎市松山町のヒバクシャ・コミュニティ・センターを訪問。同日始まった「原爆の絵」展示会を見学した。県被爆者手帳友の会が30年近く前に出版した書籍に掲載されたものを中心に、被爆者が原爆投下直後に見た惨状が克明に描かれた絵などが展示されている。絵を眺め「今の人が見ても心に伝わる」と話した。
 母国の侵攻という悲劇に見舞われ、強く認識したことがある。「今の人たちは原爆を終わったことと思っている。私たちもそうだった。でも、(長崎の被爆の)経験が伝わることはものすごく大事。被爆者の活動は絶対に続けてほしい」。ガリーナさんは来週まで長崎に滞在する。


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