スーパー耐久第7戦鈴鹿で見かけたホンダ『UNI-ONE』がスゴい。さまざまな可能性見据え実証実験中

 11月26〜27日に、三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第7戦『SUZUKA S耐』。この週末、グランドスタンド裏のGPスクエア、そしてメディアセンターに見たことがない乗り物が紹介されていた。ホンダが現在研究開発を進めているハンズフリーパーソナルモビリティ『UNI-ONE』だ。モータースポーツとは直接関係するものではないが、モビリティの未来を感じさせるものであったのでご紹介しよう。

 スーパー耐久はアマチュアとプロが力を合わせレースを楽しむシリーズだが、2021年にST-Qクラスが創設されると、研究開発の場として自動車メーカーやパーツメーカーが活用を開始。それに合わせてサーキットでも水素や電気などを使った新たなエネルギー技術、モビリティ技術がレースウイーク中にファンやメディア向けにも紹介されるようになってきた。

 そんなスーパー耐久の週末、ホンダ(ST-Qに参戦しているわけではないが)がサーキット内に持ち込んでいたのが電動のハンズフリーパーソナルモビリティ『UNI-ONE』だ。この週末、GPスクエアで試乗が可能だったほか、スタッフが活用。またメディアセンターに用意され、自由に試すことができた。

 パッと見はただのスツールのようにも見える『UNI-ONE』だが、筆者が試させてもらったところ、これがスゴい。UNI-ONEに腰掛けシートベルトを装着し、右側の操作パネルにある白いボタンを押すと、UNI-ONE下部の車輪部分が伸び、座面がニョキっと上がり、そのまま移動ができるというパーソナルモビリティなのだ。

 何より驚いたのが操作方法。上体で体重移動をすると、その方向に進んでいく。それも意図して傾けるような体重移動ではなく、歩いているときと同様に「ちょっとこちらに行こうかな」と傾けるような何気ない体重移動を感じ取り、進行方向を変えてくれるのだ。乗る前は少し怖さもあったものの、人によるかもしれないが慣れれば5分でかなり自在に操れると感じた。実際に乗ると大胆な動きは必要なく、ふだん歩いているときには自然に行っている体重移動を、ちょっと意識して行うことでUNI-ONEが動いてくれる。

 このUNI-ONEの最高速度は時速6km。軽く走る人と一緒に走ることができる。もちろん前傾姿勢をゆるやかにすれば、歩調を合わせながら進むこともできる。成人男性と近い目線まで上がるので、“一緒に歩いている感覚”を十分味わうことができた。また体重移動で方向を決められるので、両手も自由だ。メディアセンターでは「そのままカメラを構えることもできると思いますよ」と教えてくれた。

 もちろん万一の際には自動で座面が下がり“ローポジション”に。可能な限り転倒を防ぐようにもなっているほか、このローポジションでも電動車いすのように、ジョイスティックで操作ができるという。

 このUNI-ONEについての詳細はぜひホームページ(https://www.honda.co.jp/future/UNI-ONE/)をご覧いただきたいが、生活空間でのパーソナルモビリティとして2012年に生まれたUNI-CUB、2013年に生まれたUNI-CUB βから受け継がれる『人協調バランス制御技術』と独自の全方向車輪機構の『Honda Omni Traction Drive System』をさらに進化させたものだという。人協調バランス制御技術が自然な体重移動を感じ取り、全方向車輪で自在な方向移動を実現しているのだ。

 そんなUNI-ONEだが、座位バランスがとれる下肢障がいの方にも対応すべく、横浜市立総合リハビリテーションセンターの監修のもと研究開発を行っているが、ホンダでは障がいがある方はもちろん、長時間の歩行に自信がない方や、さらに健常者でも、広いエリアを移動する際などで負担を減らすことにも寄与するとしている。また両手が使えることで、新たなエンターテインメントへの活用も想定されているという。

 実際、スーパー耐久第7戦鈴鹿では、ピットウォーク時の誘導にも使用されていた。移動しながらメガホンを構えることもまったく問題ない。また鈴鹿は登り坂のピットレーンだが、UNI-ONEに乗ることでスタッフの負担は明らかに軽減される。

 まだUNI-ONEは研究開発の段階であり、市販はされていない。2022年10月から鈴鹿サーキットパークで実証実験がスタートしたほか、大分県の障がい者支援施設である太陽の家や、障がいのある方が活躍するホンダ太陽などで意見交換やヒアリングを行い開発にフィードバックしているという。

 市販に向けては、さらに法整備等も必要になると思われるが、その利便性、さらに開発コンセプトはまさに新たなパーソナルモビリティの未来を表現していると感じられた。その“乗り味”はぜひ多くの方に体験していただきたいところだ。鈴鹿サーキットパークでは12月25日(日)までの土日に特設ブースを設け、試乗できるイベントも開催している。

 詳細はホームページ(https://www.suzukacircuit.jp/park/uni-one/)まで。

ホンダのハンズフリーパーソナルモビリティ『UNI-ONE』
スーパー耐久第7戦鈴鹿で実証実験が行われていたホンダのハンズフリーパーソナルモビリティ『UNI-ONE』
スーパー耐久第7戦鈴鹿では『UNI-ONE』がスタッフ用として活用されていた。

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