中絶の助言だけで懲役刑となる1960年代フランス 親友に見放される妊娠した女子大生 「あのこと」本編映像

2021年のヴェネチア国際映画祭で、審査員の満場一致で最高賞である金獅子賞を受賞した映画「あのこと」(公開中)から、妊娠への焦りと恐怖を一人で抱えきれなくなったアンヌが、親友に事実を告げるシーンの、本編映像が公開された。

映像では、ともに勉学に励み心の許せる親友であるエレーヌとブリジットに、悩むアンヌがふくらんできたおなかを見せる。「ウソでしょ」と絶句するエレーヌとブリジットに、「処置する。お願い、誰か探して」と助けを求めるアンヌ。エレーヌは手を差し伸べようとするが、ブリジットは「私たちには関係ない。刑務所に入りたい?」とエレーヌを止める。そしてブリジットは、「好きにして。でも巻き込まないで」とアンヌを冷たく見放すも、やるせない表情を見せる。

映画の舞台となる1960年代のフランスでは、人工中絶は法律で禁じられており、何らかの処置を受けた女性とそれを施した医師や助産師、さらには助言や斡旋(あっせん)をした者にまで、懲役と罰金が科されていた。いくら親友でも中絶に手を貸せば自身も罪を問われることになってしまう時代に、妊娠をしただけで友情すらも失い、孤独な状況下に置かれるしかないという、アンヌの理不尽な状況が描き出されている。

「あのこと」は、1960年代の法律で中絶が禁止されていたフランスを舞台に、望まぬ妊娠をした大学生のアンヌが、自らが願う未来をつかむために、たった一人で戦う12週間を描いた作品。監督を務めるのは、女性のオードレイ・ディヴァン。主演は、「ヴィオレッタ」のアナマリア・ヴァルトロメイが務めている。本年度のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーが、自身の実話を基に書き上げた「事件」を原作としている。

【作品情報】
あのこと
2022年12月2日(金)Bunkamura ル・シネマ他 全国順次公開中
配給:ギャガ
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