売れ残りパン、消費期限迫る防災備蓄食品をクラフトビールへ 横浜のベンチャーが食品ロス軽減へ挑戦

廃棄寸前のパンや備蓄食品を使ったビールの開発を手がけるBeer the Firstの坂本社長(同社提供)

 廃棄予定の食品をクラフトビールに変身させているベンチャー企業がある。横浜市神奈川区のBeer the First(ビア・ザ・ファースト)。消費期限間近の防災備蓄食品やパンを使い、食品ロスの軽減につなげるとともに、地域や企業と連携、持続可能な社会の推進や新たな特産品の創出に挑んでいる。

 「捨てる食品から、楽しむ食品に変わる取り組みを進めたい」

 そう語るのは、同社の坂本錦一社長(28)。以前は食品を扱う商社に勤務し、国内商品を販売する事業を手がけていた。産地や事業者を訪問した際、廃棄される食品の量を目の当たりにして衝撃を受けたという。

 「莫大(ばくだい)な量が捨てられていた。これらの食品を新たにアップサイクルしたい気持ちが強くなった」

 アップサイクルとは、本来ならば捨てられる物に新たな付加価値を持たせ、別の製品に生まれ変わらせること。自身が好きなクラフトビールに変えることができないかと考え、2021年3月に起業した。「生まれ育った横浜で、他にはないビールを造りたい」との思いが原点だ。

 同社が着目したのは、パンや企業の防災備蓄食品など。パン店で売れ残ったパンはその日のうちに捨てられ、備蓄食品は消費期限切れ直前の入れ替えのタイミングで処分されることが多いからだ。

 同年8月には、廃棄予定だったパンを使ったクラフトビール「RE:BREAD(リブレッド)」を開発。今年8月には、企業から集めた防災備蓄用の乾パンやアルファ米で造った発泡酒を横浜高島屋(同市西区)で販売した。「食品ロス削減の取り組みを応援する意味で買ってくれる人も多かった」という。

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