クリスマスに年末年始、干支も−−覚えておきたいマーケットで起こりうる経験則「アノマリー」とは

アメリカの作家マーク・トウェインは「歴史は繰り返さないが韻を踏む」といい、イギリスの政治家で軍人でもあったチャーチルは「過去を遠くまで振り返ることができるほど、未来を遠くまで見通せる」といったそうです。将来を予測したり過去を振り返ったりすることで、誰でも資産を増やせるのなら楽ですが、現実はなかなかうまくいかないものですよね。

今回は意外と身近な、投資にまつわるさまざまな「アノマリー」について解説します。


資産運用におけるアノマリーとは?

投資の世界において、理屈で合理的に説明できないものの、偶然の出来事と呼ぶには無視できないような確率で起こる現象のことを「アノマリー」といいます。理論的根拠があるわけではないものの、昔からよく当たるといわれる相場での経験則のことであり、相場格言として伝えられているものも多数あります。

2022年11月にも行われたアメリカ中間選挙に関するアノマリーとしては、「中間選挙の年は株価が下がり、翌年は上昇する」というものがあります。支持率低下中のバイデン政権の与党民主党が敗北すれば、翌2023年には景気浮揚策を出さざるを得ず、それによって株高になるというわけです。

おそらく最も根拠がなく有名なアノマリーは「ジブリの呪い」でしょう。日本テレビ系列金曜ロードショーでジブリ作品が放送されると、円高・株安になるというものです。毎月第1金曜日には、アメリカの重要な指標である「雇用統計」がありマーケットも影響を受けるため、もしかするとこの説の存在感を高めているのかもしれません。

いずれにせよ筆者の場合は、「そういう風に言われている」という程度に解釈しているものの、実際に相場を主体的に動かしているマーケット関係者は、このようなアノマリーやジンクスという類の話題を好む傾向にありますし、マーケットの形成・発展に貢献してきた先人たちへの敬意の意味も込められているのではないかと感じています。

このような解釈のもと、アノマリーを信じるほどではないものの、有名であったり話題性があったり、また興味深いものなどをいくつかご紹介しましょう。

代表的なアノマリー

まずは年末年始に絡むアノマリーですが、この12月と1月の関係はなかなか興味深くなっています。

例えば日経平均株価やNYダウなどのチャートをご覧いただくとわかりやすいですが、一般的には12月と1月は逆の動きをすることが多い印象を受けるものの、株価が大きく上下していた場合は、12月までのトレンドに追従するかたちで、同一方向にその動きが加速されることもあります。

これは日本においては大晦日からお正月、アメリカなどはクリスマスという節目となる休暇を挟むことで、いったんはポジション等の整理をしておきたくなる心理が働きやすく、徐々に動きがなくなっていきやすい傾向を表しています。

クリスマスに向けて節税対策の売りなどをこなしつつ、年末にかけては徐々に切り返していくなどの動きも多々あります。これは「ドレッシング買い」といって、月末や期末の保有資産の評価額を上げておきたいという狙いで買いが入るパターンです。

年末年始に限ったアノマリーでも、「クリスマスラリー」(サンタクロースラリー)や年内最後の取引日(大納会)へ向けて株価が上昇していく「掉尾の一振」(とうびのいっしん)、年末高・年末安、またはその正反対のものなど、さまざまなアノマリーが存在しており一概に言えない部分も多く、参考程度に思っていただくとよいでしょう。

つぎに、季節性のあるアノマリーをいくつかご紹介します。

季節性のあるアノマリー

アノマリーの活用事例

最後に、資産運用と日常生活との関係において、筆者がアノマリーをどう捉え、活用しているかの一例をご紹介します。アノマリーに対してはひとつの参考情報としてしか考えてはいないものの道しるべや羅針盤のようなイメージをもっており、「いったん立ち止まり、自分を見つめ直すきっかけ」といってもよいでしょう。

十二支にまつわるアノマリー

辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる

筆者もこのアノマリーを少しだけ意識しています。現状の世界情勢やマーケット環境を背景として「来年はどうなるだろうか」、それに対して「自分はどう対処していくか」というようなことを考えるベースとしています。

2022年は「寅(とら)千里を走る」でしたので、「パワーを貯めこむ助走期間」としつつも、「テーパリングや利上げの影響によって、何度も下値をトライする年になるだろう」ということを想定、それがたまたま現実の値動きとマッチしたため、保有資産のリバランス効果が大きくあらわれる年となりました。

また来年2023年は「卯(う)跳ねる」です。厳しい局面や難しい局面は継続するものの、意外と株価水準を大きく上げてくる局面があることを想定しておきたいと考えています。

周期的なアノマリー

満月売り・新月買い(またはその逆)

これは、満月から新月までおよそ2週間で1サイクルとなる月齢に関するものです。チャートの週足ベースでは2~3本分のスパンとなり、移動平均線の5日線はもちろん、25日線にも影響を与える重要な短期サイクルとなるため、相場サイクルや自分の生活サイクル、健康状態などを意識する際にも活用しています。

一般的に満月ではエネルギーが充満して開放され成果が得られる月、そして新月からはエネルギーが貯まり始める、新たに始まる月として捉えることができます。相場や健康状態などの転換点となり前後で流れが変わったり、さらに流れが加速したりする可能性なども意識するようにしています。

最後に、かなり抽象的になってしまいますが、アノマリーとは「合理的に説明できないものの、無視できないような確率で起こる現象」と捉えると、先人への感謝や謙虚な気持ちになれます。「いったん立ち止まり、自分を見つめ直すきっかけ」として、アノマリーを利用するのもよいかもしれません。

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