少子化「危機的な状況」の日本、海外との対策の違いとは?

「こども予算」の倍増に向けて、自民党の少子化対策調査会は想定を上回るペースで進む少子化への対応が急務だとして12月6日(火)、政府への提言をまとめました。

また、政府は出産時の保険給付として子ども1人につき42万円が支払われる出産育児一時金について、2023年度から約50万円に引き上げる方向と発表しました。2021年度平均出産費用は約47万円で、一時金の額を上回っています。出産をする人はその差額を自ら支払っている状況です。帝王切開や無痛分娩での出産の場合はさらに高額となります。


「危機的な状況」の少子化

1990年頃から出生率の低下が問題視され少子化対策が始まりました。既に30年以上が経過していますが、少子化に歯止めがかかりません。新型コロナの影響もあり2022年は新生児が80万人を割ってしまう可能性もあり、過去最小となるかもしれません。松野官房長官は「危機的な状況」と述べています。

政府は税金ではなく保険料を財源にした出産・育児支援を検討していて、全世代で社会保障(医療や年金)を負担する方針です。

子育てのために時短で働く人や、育児休暇が無い自営業や非正規雇用者への給付は雇用保険を上乗せし、その部分を財源にする案です。また、前述の出産一時金の増額分は2023年度の増額分を健康保険組合などの保険者が負担し、2024年度以降は75歳以上が加入する医療保険に上乗せして財源を確保する案です。

少子化が進むと人口が減り、国力が低下してしまいます。国力が低下すると国の活気が失われ、経済も低下していきます。日本の国そのものが、全体的に先細りになっていくイメージです。これまで日本は高齢者問題に重点を置いていました。少子化対策は二の次だったように思います。

海外の少子化対策

子どもを産む、産まないの選択はそれぞれ個人の考えがあると思うのですが、産みたいけれど経済的な問題で産まない、または産めないと考える人がいる状況を無くさなくてはならないと思います。ある調査で、日本の母親の約4割が子育て期間中に「子どもを産まなければよかった」と思ったことがあると回答していて、その理由は経済的な問題が占めています。

一方で2022年に厚生労働省が発表した最新の調査結果によると、男性の育児休業取得率は13.97%で前年の12.65%からは若干上昇したものの依然として伸び率は思わしくない状況です。2025年までに男性の育休取得率30%を掲げる政府目標とは大きな差があります。

ドイツでは両親が共に育児休暇を取ると給付金が受け取れる仕組みで、更に時短勤務をしても給付金が減額されないシステムにしたところ、新型コロナ禍の2021年も出生率が上がりました。またフランスでも2021年7月から父親の育休取得が義務化されました。これはマクロン大統領の方針「男女平等推進」の一部で現在は70%の父親が育休を取得しているそうです。

フランスの出生率にどれだけ反応があるのかは、今後の推移を見ないと分かりませんが、根本的な部分への着手をしていない日本の現状を考えると、思い切った舵取りをしているドイツやフランスをうらやましく思う日本人の方も多いのではないかと思います。

過去30年間、出産・育児に対して場当たり的な対策を繰り返してきた日本が本腰を入れて行えることは、どんなことなのでしょうか。安心・安全に不安なく、新生児を迎え、育てられる仕組みを考えると、全世代に心地よい社会になりそうな気がします。

とはいえ、理想と現実は早急に埋まらないことは承知しています。ただ昨年の税金の無駄使いが455億円ともいわれているので、政府には国民の大切な税金の賢いやりくりをお願いしたい気持ちでいっぱいです。

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