「使いづらそう」「選択肢広がる」 国産コロナ飲み薬・ゾコーバ 長崎県内医療関係者反応

 新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」が緊急承認された。軽症者に使える初の国産飲み薬で11月下旬以降、一部の医療機関などで処方できるようになった。県内の医療関係者からは「飲み合わせが難しく使いづらそう」との声がある一方、「いずれは(インフルエンザ薬の)タミフルのような存在になる可能性がある」「治療の選択肢が広がる」と期待も寄せられる。
 ゾコーバは塩野義製薬(大阪市)が開発。臨床試験で新型コロナの特徴的な症状(鼻水・鼻づまり、喉の痛み、せきの呼吸器症状、熱っぽさ・発熱、倦怠(けんたい)感)の消失が1日早くなることが確認されている。
 ただ制限も多い。妊婦、または妊娠の可能性がある人への投与はできない。薬の飲み合わせにも注意が必要で併用禁忌は36種類。処方時には服薬中のすべての薬剤を確認する必要があるという。
 今夏の流行第7波で連日、数十人の発熱外来を受け付けた県内のクリニックの男性医師は「患者さんから希望がない限りゾコーバを選ぶことはないかも」と話す。併用禁忌の多さに「かかりつけの患者さんなら何とかなるかもしれないが、初診も多い。禁忌の薬を使っていないか確認するだけでも相当時間がかかる。何十人も診療することになればそこまでできるかどうか…」と不安を口にする。
 産婦人科医の森崎正幸県医師会長は「(新型コロナの)重症化リスクが高い妊婦に使えないのは残念」としながらも「コロナに立ち向かうための選択肢が広がったことは歓迎。使える人には使っていきたい」。県福祉保健部の寺原朋裕部長は「海外では風邪やインフルエンザはほとんどの場合、医療機関に行かないが、日本人は行くケースが多い。重症化リスクのない軽症の人にも使える薬が承認されたのは心理的なプラス効果はあるかもしれない」と話す。
 道ノ尾病院(長崎市)の安岡彰感染対策部長(感染制御、呼吸器感染症)は「タミフルのような存在になる可能性はある」と話す。ただ現状は供給体制が十分ではない上、「薬価が相当高額になりそう」と指摘。「こうした課題をクリアできればコロナ禍で閉塞(へいそく)した社会情勢を変える可能性がある」と国産の飲み薬に期待を込める。
 厚生労働省は承認から2週間程度は、ゾコーバを扱えるのは米ファイザーの飲み薬「パキロビッドパック」の処方実績がある医療機関と薬局に限っている。近く要件が緩和される見込みで、県は取り扱える機関のリスト化を進めている。


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