【厚労省】医療用コロナ・インフル同時検査キット、薬局での特例的販売認める通知発出

【2022.12.12配信】厚生労働省は自治体へ向けて、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの両抗原を検出できる医療用抗原定性検査キットについて、薬局での販売を認める通知を発出した。同時流行下での医療逼迫を避けるための特例的な対応。

新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの両抗原を検出できる医療用抗原定性検査キットは、医療機関等での使用が想定されているが、新型コロナウイルス感染症及び季節性インフルエンザ同時期流行下での医療ひっ迫を避けるため、特例的な対応として医療用同時検査キットを薬局において販売することを認めたもの。

販売に当たっての留意点を以下の通り、整理した。

第1 基本的な考え方

1. 今般の対応については、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの感染が同時期に拡がる中で医療ひっ迫を避けるため、家庭等において、「高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦等重症化リスクの高い者や小学生以下 の子ども」以外の者が発熱等の感冒症状を生じた場合にセルフチェックとして抗原定性検査キットにより自ら検査を実施できるようにすることで、適 切な医療機関の受診等を図るため、特例的に、新型コロナウイルス抗原定性 検査キットに加え、医療用同時検査キットも薬局で販売することを差し支え ないこととするものであること。

2. 高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦等重症化リスクの高い者や小学生以下 の子どもが発熱等の感冒症状を生じた場合、又は重症化リスクが低い者でも症 状が重い場合は、医療用同時検査キットによるセルフチェックの結果によらず、 医療機関等を受診すること。

3 「新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」 において標準的なモデルとして示された「外来受診・療養の流れ」において は、新型コロナウイルス抗原定性検査キット(新型コロナウイルス抗原のみ を検出するもの)を自己検査に活用することとしていること。
※医療用同時検査キットについては、5に記したように、インフルエンザの検査に留 意すべき点があることも踏まえ、医療用同時検査キットと新型コロナウイルス抗 原のみを検出する抗原定性検査キットの両方を販売している場合には、医療用同 時検査キットの販売を優先するものではないこと。

4. 医療用同時検査キットは、無症状者に対する新型コロナウイルス感染症 及びインフルエンザの確定診断には推奨されず、有症状者であってもウイル ス量が少ない場合には、感染していても、結果が陰性となる場合(以下「偽 陰性」という。)があるため、陰性であったとしても引き続き感染予防策を 講じる必要があること。

5. とりわけ、インフルエンザウイルス感染は、発症後早期はウイルス量が 少なく偽陰性になる可能性が比較的高い*1 ため、結果が陰性であったとし てもインフルエンザを否定するものではない点に留意する必要があること。
*1 インフルエンザ診断マニュアル(第4版)(平成 30 年 12 月、国立感染症 研究所)。

6. 販売する医療用同時検査キットは、医療従事者による採取が必要な鼻咽 頭ぬぐい液のみを検体とするものは除き、自ら検査を実施できる、鼻腔内ぬ ぐい液を検体とするもの(別添1)に限ること。

7. 医療用同時検査キットを含む医療用検査キットについては、医薬品卸売 販売業者において、医療機関への流通を優先し、なお余剰の流通在庫がある 場合に、薬局への流通が可能となるため、薬局への流通量が限定される可能 性があること。

8. 医療用同時検査キットは、薬機法における薬局医薬品として取り扱われ るものであり、販売に当たっては、
・ 使用しようとする者(同居家族等を含む。)に対し販売するものであり、 事業者等には販売できないこと。
・ 薬剤師により、必要な情報提供や薬学的知見に基づく指導を行うととも に、適正な使用を確保できないと認められる場合は、販売又は授与しては ならないこと。
・ 販売した数量や日時、情報提供や指導の内容を理解したことの確認結果 の保存等が求められていること。
等を踏まえ、丁寧な説明や、販売に当たっての記録の保存等を適切に行う必 要があること。

9. これらを踏まえ、医療用同時検査キットを薬局において販売するに当た っては、第2に記載の対応を求めること。

10. なお、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成 10 年法律第 114 号)第 16 条の2第1項においては、感染症の発生を予防し、 又はその蔓延を防止するため緊急の必要があると認めるときは、新型コロナ ウイルス感染症の発生を予防し、又はその蔓延を防止するために必要な協力 を求めることができることとされており、都道府県は、必要に応じて薬局に 対し第2に記載の対応に関する協力要請を行うことが可能であること。

第2 薬局において販売する場合の対応

1. 医療用同時検査キットの販売に当たっては、薬局の薬剤師は、使用しようとする者(同居家族等を含む。)に対し販売することとし、以下の対応を適切に行うこと。
(1)医療用同時検査キットについては、「高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦等重症化リスクの高い者や小学生以下の子ども」以外の者が発熱等の感冒 症状を生じた場合等にセルフチェックとして使用するものであるため、以下の事項等について、丁寧に説明を行うこと。
①発熱等の感冒症状があり、高齢者、基礎疾患を有する者、妊婦等重症化リスクの高い者や小学生以下の子どもである場合、又は重症化リスク が低い者であっても症状が重い場合は、医療用同時検査キットのセルフ チェックの結果によらず、医療機関を受診すること。
②新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスのどちらの判定結果 にも偽陰性の可能性があること。
③陰性証明として用いることはできないこと。
④特に、インフルエンザウイルス感染は、発症後早期はウイルス量が少なく偽陰性になる可能性が比較的高いこと。
(2)検査の実施方法等について、十分に理解できるよう、製造販売業者等 が作成した説明用資料や別添2の資料を適切に用い、図や動画等も活用し ながら、説明を行うこと。その際、特に以下の内容について、丁寧に説明 を行うこと。
①検査の実施方法等について十分に理解し、自ら検体を採取すること。
②採取できる者は実施方法等を理解し、自立して自己採取可能な者とし、困難な者は対象としないこと。
(3)結果の判定について、使用者が検査後に適切な行動を選択できるよう、 特に以下の内容について、丁寧に説明を行うこと。
①判定結果に応じた対応
i) 新型コロナウイルス抗原陽性かつインフルエンザウイルス抗原陰性の判定の場合には、健康フォローアップセンターへの登録を行うと ともに、自宅での療養を行い、体調変化時には健康フォローアップセ ンターに連絡すること。
ii) 新型コロナウイルス抗原陰性かつインフルエンザウイルス抗原陽 性の判定の場合には、解熱鎮痛剤等の使用による症状の緩和などの対 応を図りつつ、希望する場合には医療機関の受診等を行うことも検討 すること。
iii) 新型コロナウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原ともに陽 性の判定の場合には、健康フォローアップセンターへの登録を行うと ともに、症状が重いなど等の事情により受診を希望する場合には、か かりつけ医・発熱外来の受診や、電話診療・オンライン診療を受ける ことを検討すること。
iv) 新型コロナウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原ともに陰性の判定の際は、偽陰性の可能性の他、他の感染症に罹患しているおそれがあるため、症状に応じて適切に医療機関の受診等を行うことを検討すること。

2 新型コロナウイルス抗原又はインフルエンザウイルス抗原陰性の 判定の場合でも、偽陰性の可能性があることも考慮し、引き続き、自 宅での療養を行うとともに、外出時のマスク着用、手指消毒等の基本 的な感染対策を続けること。

3 医療用同時検査キットの判定結果をオンライン診療等に活用する 場合には、発熱等の症状発現から検査までの時間を記録しておくとと もに、検査後時間が経過するとキット上の判定結果が変化することか ら、結果判定時のキットの判定結果を撮影しておくこと。
(4)使用者から判定結果の判断や受診等に関する相談があった場合は、健 康フォローアップセンターや受診・相談センター*2等必要な連絡先等を 案内する等の対応を行うこと。
*2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19\- kikokusyasessyokusya.html

2.販売に当たっては、外箱の写しなど薬機法第 50 条に規定する事項を記載 した文書及び同法第 52 条に規定する添付文書又はその写しを添付するこ と。販売価格については、社会通念上、妥当かつ適切なものとするこ と。

3.薬局医薬品を販売した場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及 び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和 36 年厚生省令第1号。 以下「薬機法施行規則」という。)第 14 条第3項の規定により、品 名、数量、販売の日時等を書面に記載し、2年間保存しなければなら ないこと。

4.薬機法施行規則第 158 条の7の規定により、薬局医薬品は、他の薬局 からの購入等の状況を確認した上で、適正な使用のために必要と認め られる数量に限って販売することとされており、販売に当たっては、 使用しようとする者(同居家族等を含む。)への販売であることを踏 まえ、適切に対応すること。

5.新型コロナウイルス抗原の有無を測定する検査キット(同時検査キットを含む。以下同じ。)のうち「第一類医薬品」、「体外診断用医薬品」 として承認を受けていることが表示されていないもの(以下「研究用 等と称する検査キット」という。)については、薬機法に基づく承認を 受けておらず、性能等が確認されたものではないため、消費者の自己 判断により、新型コロナウイルス感染症等の罹患の有無を調べる目的 で使用すべきものではないこと。また、多くの消費者が研究用等と称 する検査キットと薬機法に基づき承認された検査キットの違いを正し く認識しているとは言えない状況であるため、消費者が誤って購入す ることがないよう、薬機法に基づき承認された検査キット以外の、研 究用等と称する検査キットは販売しないこと。加えて、薬機法に基づ き承認された検査キットを購入しようとする者が、誤って研究用等と 称する検査キットを購入しないよう、別添3のリーフレットを活用す るなど、適切に案内すること。

6.陳列等について
・ 医療用同時検査キットについては、入手を希望する者がその販売について容易に認識できるよう、調剤室以外に陳列すること又は空箱を陳列することは差し支えないこと。
・ 医療用同時検査キット及び空箱の陳列場所は問わないが、販売にあたっては、薬剤師による説明、使用にあたっての留意事項を理解していることの確認等が必要であることに留意すること。
・ 陳列にあたっては、各製品の添付文書等における保管方法に留意すること。

7.広告等について
・ 薬局においては、入手を希望する者が、医療用同時検査キットの販売状況について容易に認識しやすくなるよう、「新型コロナウイルス及び インフルエンザウイルスの両抗原を検出できる医療用抗原定性検査キ ットを取り扱っている」旨について薬局内に掲示すること。また、薬局 の店頭や、薬局に隣接する店舗(当該薬局が入居する建物を含む。)への 掲示のほか、販売する薬局のホームページやチラシ等へ掲載することも 差し支えないこと。
・ その際、入手を希望する者が、その製品が医療用同時検査キットであ ることについて、容易に認識できるよう、名称、製造販売者名及び販 売価格並びに医療用同時検査キット及び空箱の写真を使用することは 差し支えないが、受診が不要である等の不適切な表示及びその他の事項に関する広告を行わないこと。

なお、承認されている同時検査キットは以下の通り。

※SARS-CoV-2&FluA/B ラピッド抗原テスト(製造販売業者:ロシュ・ダイアグノスティ ックス株式会社)は、鼻咽頭ぬぐい液のみを検体とするキットであるため、薬局での販売 に適さない
※新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルス以外のウイルスの抗原を同時検出可能 な医療用抗原検査キットは、含まれない
以降新規に承認される同時検査キットの情報は
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11331.html
a-2. 新型コロナウィルス/インフルエンザウィルス に掲載される

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