一時金、年金、併用…iDeCoはどのように受け取るのが正解か? 出口戦略をお金のプロが解説

iDeCoはいつから始めればいいのかというと、いつでもOKです。長期の積み立てになるので、始める時期はそれほど気にする必要はありません。しかし、早いに越したことはありません。なぜなら早く始めれば、より長期で積み立てることができ、その分金額も多くなるからです。では、iDeCoの受け取りは、どうすればいいのでしょうか?

iDeCoは、60歳から75歳までの間に受け取ることができ、「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つの受け取り方から選ぶことができます。つまり、タイミングや受け取り方法を自分で選択できるのです。では、受け取るタイミングと受け取り方は、どう選べばもっとも有利になるのでしょうか?

今回は、iDeCoの出口戦略、受け取り方について解説をしてみましょう。


iDeCoを受け取るタイミングとは

まず、いつ受け取ればいいのでしょうか? 一般的には60歳になったとき、退職金と同じようなタイミングで受け取る方法です。退職金とiDeCoを同時に受け取る場合には、資金が合算されて、退職所得控除は控除額の大きい方が優先されます。そのため有利に計算されることになります。

ただし、注意したいポイントもあります。iDeCoと退職金を合算すると金額が多くなり、控除額を超えてしまうと、課税されてしまいます。その場合は、後で説明をしますが、iDeCoを年金方式で受け取るなどの方法を使ってください。また、iDeCoは投資信託で運用しているので、基準価格が上がったり下がったりしています。ちょうど60歳で受け取ろうとしたときに、もしリーマン・ショックのような大きな事件が起きて、基準価格がグッと下がってしまうこともあります。そんなときは、しばらくマーケットのようすをみながら、基準価格が上がったときに、受け取るようにすることでもできます。

75歳までの間に受け取ればいいので、あせらず、しばらくは非課税のまま運用するのもいいと思います。ただし、拠出をしていなくてただ運用している場合には、「運用指図者」になり、その間は、管理手数料が必要になります。運用手数料は、金融機関によって異なりますが、最低でも月額66円(年間792円)はかかるので注意が必要です。

一時金で受け取るメリット・デメリット

次に受け取り方ですが、「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つについて説明をしましょう。

まず、「一時金」で受け取った場合のメリットは、なんといっても退職所得控除が使えるということです。「年金」で受け取る場合よりも節税効果が大きいので、実質の手取り額が多くなることがあります。デメリットとしては、一時金でまとまったお金が入ると、ムダ遣いをしたり、無用な運用をして損をしたりする可能性があります。

後から考えて「iDeCoのお金を何に使ったのか?思い出せない」となるともったいないですよね。

年金で受け取るメリット・デメリット

「年金」で受け取る場合、5年以上20年以内に受け取ることが可能で、運営管理機関で定められた方法で受け取ることができます。

メリットとしては、受け取り完了までは、非課税で運用を継続できます。つまり、手数料分を十分にカバーできる運用ができていると得になります。また、決まった金額を受け取ることができるので、生活費の補てんになります。計画的に使うことができるので、とても管理がしやすいのです。また、退職金と合わせることで、退職所得控除額よりオーバーしてしまうときには、iDeCoだけを「年金」で受け取る方法もあります。

デメリットとしては、「年金」で受け取る場合には、公的年金等控除が使えますが、これを超えた額が雑所得として課税対象になります。60歳以降も給与所得がある場合には、給与所得と合算された課税所得が算出されますので、それに応じた所得税や住民税を支払います。さらに社会保険料もアップすることになります。

もう一つのデメリットは管理手数料・振込手数料がかかることです。管理手数料は金融機関によって異なりますが、最低月額66円(年額792円)かかります。年金を受け取るときには、送金手数料がかかります。1回の送金で440円がかかります(金融機関によって違う場合もあります)。ですので、毎月受け取るようにすると12回分(5280円)かかってしまいます。しかしこの場合は、振り込み回数を選ぶことができるので、毎月ではなく、年1回の受け取りにすることで送金手数料を減らすことができます。

一時金と年金の併用で受け取るメリット・デメリット

「一時金と年金の併用」は、たとえば、iDeCoの受け取れる金額の40%を一時金で受け取って、残りの60%を年金で受け取る方法です。メリットとしては、資金計画が柔軟にできることと、退職所得控除額をオーバーしたときにも柔軟に対応できることです。その他のメリット・デメリットはそれぞれの項目で説明したとおりです。

iDeCoの出口戦略とは

さて、iDeCoの出口戦略としてはどれがいいのでしょうか?

これは、iDeCoの資産の多い人、少ない人、退職金の受け取り方、ライフスタイルや考え方によって違ってくると思います。今一度、それぞれのメリット・デメリットを考えながら、検討をしてみてください。

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