対馬高生を支援「フードドライブ」 余剰食材、寮生の舎食や弁当に 島内外に輪が広がる

余った食材の寄付を呼びかけるチラシを手にする松山さん。「フードドライブで地域に支えてもらいありがたい」と話す=県立対馬高

 長崎県対馬市厳原町の県立対馬高(植松信行校長)が寮生を支えようと、家庭などで余った食品を集めて寄付する「フードドライブ」に取り組み、支援の輪が広がっている。国連の持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにした学習にも力を入れており、地産地消やごみをゼロにする「ゼロウェイスト」にもつなげている。
 同校は約400人の生徒が通う市内最大の高校。フードドライブは離島留学生の増加がきっかけだった。韓国語を専門に学ぶ「国際文化交流コース」を2003年度に設置し、19年度に「国際文化交流科」に改組して定員を拡大。韓流ブームなどで島外からの離島留学生も増えた。ただ、離島は物価が高く、業務用スーパーもない。寮生の舎食や弁当に必要な食材費がかさみ、運営は逼迫(ひっぱく)していた。
 「節約しつつも、おいしいものを食べさせたい」。同校主幹事務長の岡田明美さん(58)は昨年5月、市内居住者向けに余った野菜や米などの寄付を募り始め、新聞にチラシを折り込むなどして周知した。

寄せられた食材でつくった舎食のカレーライス(県立対馬高提供)

 市民から家庭菜園で作った野菜や余った米が寄せられ、善意は島外にも波及。諫早市の建設会社からも米が届き、これまでに20超の個人や企業が寄付した。
 集まった食材は寮生の食事や弁当などに活用。カレーライスやスープ、みそ汁などを作った。米は累計で400キロ超、約十数万円の節約につながったという。
 市内の寺からは段ボール2箱分のお供え物の菓子類が届き、おやつになった。寮長の2年、松山侑奈さん(16)=福岡県出身=は「フードドライブを通して県外の人も温かく支援してもらいありがたい。部活動や勉強、地域の人への元気なあいさつで恩返しをしたい」と意気込む。
 韓国に近い地域性を生かした国際交流や、漂着ごみを通した環境教育に取り組む同校。15年には県内で初めて国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「ユネスコスクール」に認定された。
 生徒のために、と始めた岡田さんは「食品の地産地消やゼロウェイストにつながってうれしい。SDGsを学ぶ生徒たちにとってもいいモデルになる」と手応えを語る。募集は継続する方針。「対馬での生活が慣れない寮生にとって、食を通した地域の支えは心の栄養になる。引き続き、生徒たちを見守ってほしい」と感謝する。


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