モヤシ低価格「続けられない」 コスト高騰で生産者悲鳴、値上げする店も

モヤシの出荷作業を進める上原園の従業員=8日午後2時半、栃木市都賀町家中

 モヤシの生産コストの高騰を受け、国内一大産地である栃木県の生産者から、悲鳴が上がっている。安定した低価格から「物価の優等生」と呼ばれるが、「安さを追求していては続けていけない」との声が相次ぐ。主に原料となる中国産の緑豆の生産量は数年来、減り続け、今年の急速な円安が拍車をかける。原料種子の価格は過去30年で最高値を記録。廃業がちらつく生産者もおり、売る側も値上げに踏み切る店も出てきた。

 本県は大手をはじめ5社が生産工場を構える。2020年の全国産出額のうち、本県は115億円で5分の1強を占める。

 栃木市都賀町家中の「上原園」は1日約40トンのモヤシを出荷する。8日午後、工場で従業員が黙々と出荷作業を進める中、同社の岡部一法(おかべかずのり)社長(49)は「原料種子のコストは30年前の3~4倍。今は完全赤字です」と打ち明ける。

 岡部社長によると、中国国内で大豆やトウモロコシなどへの作付け転換が推奨されている。そこへ今年の円安の影響で価格が高騰。業界団体によると、中国産緑豆を含む原料種子の今年の平均価格は1トン当たり約25万6千円となり、昨年より約4万円上がった。1992年以降で最高値だ。

 さらにウクライナ侵攻による輸送コストの急増などが足を引っ張る。

 県内の別の生産会社の社長は「瀬戸際だ。廃業も考えなくてはならない」とため息を漏らす。

 「優等生」のモヤシだが、小売店の中には人件費や電気代のコスト増を受け、値上げする店も出て来た。

 「バイヤー歴10年で、値上げしたのは初めてだ」。県内外で計21店舗を展開するスーパー「かましん」の青果バイヤー瀧田一成(たきたかずしげ)さん(54)はこう明かす。

 今年9月、競合などを加味した上で、計4店舗で1袋約10円の値上げに踏み切った。しかし、瀧田さんは、今年収穫された高い原料を使って生産される来年以降のモヤシの更なる値上げを見越す。最低賃金引き上げで人件費も増えている。「今の値上げはその助走になるかもしれない」と案じた。

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