種田山頭火と尾崎放哉の厖大な作品群から厳選・解説! 又吉直樹×故・金子兜太による"奇跡の共著"が誕生!

小学館新書『孤独の俳句「山頭火と放哉」名句110選』(著・選/金子兜太、又吉直樹)が小学館より発売中だ。 新型コロナウイルス禍の影響で広がる潜在的な「孤独」や「孤立」。人との交流が制限される社会において、“放浪の俳人”種田山頭火(たねだ・さんとうか)と尾崎放哉(おざき・ほうさい)の自由律俳句が、再び脚光を浴びているという。 本書は、家と妻子を捨て、生涯の大半を放浪の旅につぎ込んだ山頭火と、酒に溺れてエリートコースをはずれ、小豆島でひとり生涯を閉じた放哉。漂泊・独居しながら句作を続けたふたりの厖大な作品の中から110句を厳選・解説。 戦後の俳句界を牽引し続けてきた現代俳句の泰斗・金子兜太が生前選んだ山頭火55句。自由律俳句の句集(共著)をもつお笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹が選んだ放哉55句。山頭火と放哉の自由律俳句を介して、“奇跡の共著”がここに誕生した。

「『火花』や『劇場』で貧しい若者を描いたとき、「昭和っぽい」「懐かしい」と言われることがありました。でも、これらの物語の舞台は現代です。令和にも、苦しい生活を余儀なくされている若者や経済的な事情に限らず人間関係などで社会から孤立している人は沢山います。誰かによって勝手に過去へ追いやられ存在すらないことにされている人たちは、その孤独を敏感に捉えていることでしょう。そんな人たちだからこそ、一人で過ごす時間に光を当ててくれる放哉や山頭火の俳句に救われるのだと思います」──又吉直樹

(本書「はじめに」より)

本書では、1句ごとに選句の背景や解説、解釈などが付されている。

うしろ姿のしぐれてゆくか 山頭火

……感傷も牧歌も消え、生々しい自省と自己嫌悪も遠のいて、宿命をただ噛みしめているだけの男のように、くたびれた心身をゆっくりと運んでいる姿が見えてくる。(金子)

咳をしても一人 放哉

……誰もいない孤独が満ちた部屋で咳をする。その咳は誰にも届かず、部屋の壁に淋しく響く。一つの咳によって部屋に充満していた孤独や寂寥が浮き彫りになる。(又吉)

世捨て人となった山頭火と放哉は、自らと向き合い何を見たのか。2人の吐き出した言葉が孤独な心を癒してくれる一冊だ。

▲選句された110句は大きめの活字を使い、コンパクトな新書判ながら1句1句をじっくり鑑賞しやすくなっている。

【著者プロフィール】

金子兜太(かねこ・とうた)

1919年埼玉県生まれ。戦後、俳句活動に入り、前衛俳句の旗手として頭角を現わす。現代俳句協会会長などを歴任、30年間にわたって朝日俳壇の選者を務める。主な句集に『少年』など。著書多数。2018年没(享年98)。

又吉直樹(またよし・なおき)

1980年大阪府生まれ。お笑いコンビ「ピース」として活動するかたわら、2015年に小説デビュー作『火花』で芥川賞を受賞。せきしろとの共著で自由律俳句の句集『カキフライが無いなら来なかった』などを発表。

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