歩行分析を簡単かつ高精度に カメラベース姿勢推定と慣性計測装置を融合

東京理科大学の山本征孝助教、石毛雄斗大学院生、竹村裕教授、県立広島大学の島谷康司教授の研究グループは、1台のRGBカメラ映像からの姿勢推定と1~2個の小型慣性計測ユニットから取得した情報を組み合わせ、高精度かつ簡便に歩行分析を行う新しい手法を開発することに成功した。

歩行分析は、リハビリテーションをはじめとするさまざまな臨床現場で活用されている一方で、多数のマーカーや大規模な測定機器が必要となりコストが高いといった問題がある。代表的な測定ツールである3次元モーションキャプチャ、慣性計測装置を用いたモーションキャプチャのいずれも同じ問題を抱えていることから、より簡便な代替手法が求められてきた。

これに対し、本研究では、カメラ映像から人体の関節点を推定する人体姿勢推定アルゴリズムと、足に装着した慣性計測ユニットから得られる情報を融合した新たな歩行分析法を立案した。解析に利用するのは、デジタルカメラなどにも使用されている1台のRGBカメラと、1~2個の小型慣性計測ユニットのみなので、専門的な知識も大規模な装置も必要なく、誰でも簡単に歩行分析を行うことができる。

本手法の比較実証実験では、歩行速度や歩幅、歩行周期など、歩行全体に関する多くのパラメータにおいて、従来法と同等もしくはそれ以上の高い精度で計測が可能であることが確認された。従来の姿勢推定アルゴリズムを用いたカメラベースのマーカーレスシステムでは、歩行中の関節角度、特に足関節角度の測定誤差が大きいことが課題であったが、研究グループが開発した手法を用いると、従来法よりも精度よく計測できることも見出された。

本研究の成果は、医療・福祉の現場で役立つだけでなく、高精度な運動解析を容易に行えるようになることで、スポーツ、ロボット、CGなど幅広い分野で応用が見込める可能性もあるとしている。

論文情報:

【Scientific Reports】Verifcation of gait analysis method fusing camera‑based pose estimation and an IMU sensor in various gait conditions

© 大学ジャーナルオンライン