日米でトラブル続発! 投資詐欺の定番「ポンジ・スキーム」とは

ポンジ・スキーム疑惑が持たれているサム・バンクマン・フリード米FTXトレーディング前CEO=写真中央(Photo By Reuters)

11月に経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディング(本社はバハマ)、12月4日に米証券取引委員会(SEC)から暗号資産(仮想通貨)投資詐欺集団として告発されたトレードコインクラブ。いずれも多数の投資家から資金を集め、関係者が私的横領をした疑惑が持たれている。こうした特定多数に出資を求める投資詐欺を「ポンジ・スキーム」と呼ぶ。その由来は何か?

スキームの由来は100年前の投資詐欺師

同スキームは1910年代から1920年代にかけて大規模な投資詐欺を実行したチャールズ・ポンジに由来する。イタリア生まれのポンジは、21才で移民として渡米。1919年12月に国際返信切手券での切手の交換レートと実際の外貨交換レートとの利ざやで利益を得る仕組みを利用した投資会社セキュリティ・エクスチェンジ・カンパニー(SEC)を立ち上げた。

当時の米国は日本同様、本土が戦争に巻き込まれなかった第一次世界大戦による戦時好況にわき、一般労働者を巻き込んだ投資ブームだった。SECは立ち上げから数カ月で350万ドルの資金を調達している。ところが1920年8月2日に国際返信切手券の取引の実態が無いことが明らかになり、8月12日にSECは破産した。

こうした運用実態がないにもかかわらず、新たな投資を配当に回して高利回りをうたう詐欺案件を「ポンジ・スキーム」と呼ぶ。当然、運用をしていないのだから、配当に回す新たな投資がストップした時点でスキームは破綻する。言いかえれば詐欺事件が露見するわけだ。

東京商工リサーチによると、日本でも出資金の返還を求める訴えを起こされている投融資業エクシア合同会社(東京都墨田区)のポンジ・スキーム疑惑が取り沙汰されている。同社の場合、仮想通貨などの金融商品ではなく、「社員権」を販売する仕組み。


「金満ぶり」をアピールして投資を呼び込んだポンジ

そうして集めた資金を資産や株式の売買にあて、運用益を「社員」に分配するとしていた。最近になって同社が出資金などの払い戻しに応じないケースが相次ぎ、出資金返還を求める訴訟が相次いでいるという。今年夏以降に同社の銀行口座が仮差押を受け、凍結されているとの情報もある。

同社はこの疑惑について「SNS等インターネット上に当社に対する虚偽の事実を摘示した上、当社の社員に対して当社に対する退社払戻請求訴訟等を提訴することを扇動する弁護士らが存在していました。かかる扇動の結果、一部報道にあるとおり、当社の社員から当社に対しては多数の退社申請及びそれに伴う払戻請求訴訟や銀行口座等への仮差押命令申立がなされました」と、否定のコメントを出した。

ポンジはマサチューセッツ州レキシントンに豪邸を購入したほか、湯水のように遊興費を使っていたことを隠そうとしなかったという。皮肉にもSECと取引していた事務用品店主が「そんなに儲かっているのに、なぜ事務用品をレンタルしているのか?」と疑惑を持ったことが、投資詐欺が発覚するきっかけとなった。

エクシアの経営陣は画像SNS「インスタグラム」で豪遊ぶりを披露していたほか、動画投稿サイト「YouTube」でも月収2億7103万円の給与明細書を公開している。投資詐欺に該当するかどうかは不透明だが、少なくともこうした情報発信が「そんなに儲かるんだ」と新たな出資者を呼び込んだことは想像に難くない。

ただ、FTXのサム・バンクマン=フリード前CEOの表向きの顔は、「大富豪でありながら質素な生活を好むミニマリスト」だった。「代表者が金満ぶりをアピールしていないから安全だ」とも言い切れない。もっとも同社の経営破綻後に、フリード前CEOとその両親、会社関係者が、過去2年間で約1億2100万米ドル(約165億円)の高級不動産を購入していたことが明らかになっている。喧伝するかどうか別として、やはり「やることは同じ」なのだ。

文:M&A Online編集部

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