「静かな町でなぜ…」佐世保散弾銃乱射15年 残る爪痕 教会に容疑者、その時住民は

 8人が死傷した長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件は14日、発生から15年を迎えた。容疑者の男は、事件翌日の早朝、市内の教会敷地内で散弾銃を使って自殺した。周辺の地域に暮らす住民らは「“あの日”を忘れたことはない」と話す。「静かな町でなんでこんなことが…」。事件は住民に大きな衝撃を与えた。

15年たってもなお、地域には事件の爪痕が残っている(写真はイメージ)

 事件は2007年12月14日夜に発生。佐世保市名切町のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」に男=当時(37)=が侵入し散弾銃を乱射。2人が死亡し、小学生の女児を含む6人が負傷した。
 当時高校生だった30代の女性は、教会の近くに、見慣れない車が止まっているのに気付いていた。「『誰の車だろう』と思っていた。その時には多分(容疑者は教会に)いたんだろう」
 男が教会にいるとは知らず、14日は午後11時ごろに一人で風呂に入った。家族もまだ知らなかった。
 15日午前6時ごろ。家の電話が何度も鳴り、何かあったんだと気付いた。電話は警察や友人からだった。友人からは「なんで避難しないの?」と言われた。
 「何が…?」。状況を教えてもらい、何が起こっているのか悟った。警察官も家に訪れ「とにかく家から出ないで」と言われた。警察から避難を促され、離れた建物に集まった人もいた。
 女性は事件後、しばらくの間、恐怖から一人で風呂に入れなくなった。父に頼み、家の外の風呂場の前に立ってもらう日々が続いた。「あの時は『怖い』という感情しかなかった」
 70代の主婦は事件当日、県外から帰宅するはずだった。事件を知った夫から「いまは帰ってくるな」と電話があり、帰宅を遅らせた。翌日家に戻ると、教会上空を複数のヘリコプターが旋回。報道陣の車もあり、物々しい雰囲気だった。
 4年ほど前には、市立大久保小で小6女児同級生殺害事件が起きたばかり。「なんで佐世保でばかりこんなことが起こるの」。戸惑いは隠せなかった。
 今は地域で事件に触れる人はほとんどいないという。「もう二度と、起こらないで」-。住民の1人は、玄関先で小さな声でこう話した。


© 株式会社長崎新聞社