人身事故1位と2位の「危険な交差点」 専門家が指摘する問題点とは

2021年に全国で人身事故が多かった交差点を調べたところ、ワースト5に東京の交差点が3つも入ってしまいました。交通事故の防止活動を行う日本損害保険協会が最新の「危ない交差点ランキング」を発表したものです。都内にある“危険な交差点”に潜む問題点を、専門家に現場で聞きました。

<6差路+首都高の支柱が真ん中に 複雑な「池袋六ツ又交差点」>

訪れたのは、2021年に全国で2番目に人身事故が多かった豊島区の「池袋六ツ又」交差点です。池袋六ツ又交差点では21件の人身事故が発生しています。交差点の利用者も「やっぱりなっていうのが正直な感想」「よく救急車やパトカーが止まっている」「車同士がよく交差しているので危ないと感じていた」などと話します。

今回、事故の分析を長年行っている交通事故鑑定人の中島博史さんに実際に交差点を見ながら話を聞きました。

中島さんは「この交差点は明治通りと春日通りが交差する。側道から合流する道もあるため、6方向に道が伸びる6差路になってしまっている点が危険」として、6差路という構造が事故が多発する原因だと指摘します。特に危険だと話すのが、右折レーンが1つにもかかわらずその先が2股に分かれている点です。実際に自動車に乗って走ってみると、中島さんは「急カーブで回り込むと減速することになるが、この道を知らない人は(前の車が)減速する理由が分からず、追突する危険がある」と指摘しました。中島さんによりますと、右折する方向によって車ごとに速度の差が生じるため、追突の原因になっているのではないかと分析しています。

さらにこの交差点には別の問題点もあります。それは「交差点中央部にある"柱”が視界を妨げていて危険」(中島さん)という点です。首都高の支柱が交差点の中にあり、ドライバーの視界を妨げています。中島さんは「視界を遮る支柱の先には横断歩道があり、車からは歩行者が見えにくく危険」「自動車が右折する時に歩行者用信号は赤になるが、横断歩道の渡る距離自体が短いため、赤信号を渡ってしまう人が少なくない」と話します。実際、支柱で見えづらくなる横断歩道を赤信号にもかかわらず渡る歩行者が取材中何度も見られました。

「6差路」+「高速道路の支柱が交差点内にある」という複雑な構造が生み出す危険に、ドライバーも歩行者も注意する必要があります。

<まだ右折車が続いているのに直進車が… 全国ワースト「大原交差点」>

続いて訪れたのは、2021年に全国で最も人身事故が多かった世田谷区の「大原」交差点です。

大原交差点は環七通りと甲州街道が交差し、さらにアンダーパスも通る交差点です。環七通りの交通量が多く、スピードもかなり出ているように見えます。この交差点では29件もの人身事故が発生しました。

中島さんは、環七通りの非常に多い交通量と甲州街道からの長い右折レーンが重なり、事故が起きやすくなっていると分析します。中島さんは「右折車が交差点の中をかなり先まで行って、交差点の中で右折車が待つ状態になる。交差点の中に入ってしまったら抜け切なければいけないので、直進方向の信号が青に変わっても横切っていく。直進車にとっては青信号になったのに交差点内で動いている右折車がいて、進行の邪魔になるので、タイミングが悪いと事故が起きる」と指摘し、赤信号になっても右折する車が交差点を抜けられず直進してくる車と衝突する恐れがあるといいます。取材中も右折する車が交差点を抜けていないのに、直進する車が交差点内に進み始めるシーンが何度も見られました。青信号とはいえ、非常に危険です。中島さんは「青信号は『進め』ではない。あくまで『安全を確認できれば進んでよい』であって、交差点内にまだ右折車が残っている状態で進入してはいけない」と注意を呼びかけます。

私たちの身近な交差点に潜む危険──。事故を起こさないためにも問題点を理解し、安全な通行を心がけることが大切です。

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