かんころ餅用の良質サツマイモ 佐世保の福祉事業所で生産 原料不足など課題解消へ

収穫したサツマイモなどを手にする関係者ら=西海市西海町

 長崎県佐世保市の福祉事業所が農作物生産会社の協力で良質なサツマイモを作り、かんころ餅製造会社に販売する。こうした取り組みが県内で行われている。販路の確保や原料不足など、各団体が抱える課題が解消できるとして、関係者らは期待している。
 参加しているのは、同市の障害者就労支援事業所「あっとほーむ」と、雲仙市で農作物の生産・加工などを行う「マルニ」、西海市のかんころ餅製造会社「長崎旨菓堂」。農山漁村発イノベーション地域プランナー(旧6次産業化プランナー)の井上亜矢さんが各団体をつなげた。
 福祉事業所は、離農した農家から約2千平方メートルの畑を借り、1月から作業を開始。かんころに適したベニアズマを中心に栽培した。井上さんによると、一般的に福祉事業所で良品質の作物を作るのは難しいという。取り組みでは、農作物生産会社に栽培方法を教えてもらうことで良品質のサツマイモを作ることが可能に。販売先も決めているため、工賃確保にもつながる。
 一方、かんころ餅製造会社は原料確保に苦心している。高齢による離農者が増え、かんころ用のサツマイモを栽培する農家も減少。数年前からサツマイモが腐る病気が全国で流行していることもあり、品不足状態にあるからだ。農作物生産会社も畑の一部を無償で使用させてもらうことで、病気リスク低減と農地確保が可能となる。
 10月、西海市西海町の畑で、関係者ら約10人が収穫作業をした。あっとほーむの利用者、松田明日香さん(22)は「一から作る大変さはあるけど、イモが大きく育ち、おいしいかんころ餅になるのは、やりがいがある。消費者の皆さんに商品を受け入れてもらえたらうれしい」と笑顔。マルニの西田信介社長(65)は「皆でワイワイ言いながら作業するのは楽しい。1年1年技術を向上させてさらに良いイモを作り、生産量も増やしたい」と意気込む。
 今季は約1.8トンを収穫した。長崎旨菓堂の小山秀利さん(63)は「今年確保したイモの約半分を事業所から購入した。良い出来だし、材料が不足していたから助かった。おかげでおいしいかんころ餅ができた」と話す。
 「かんころ餅」は1個430円で、同町の「特産品直売所よかところ」や「道の駅さいかい みかんドーム」などで購入できる。問い合わせは長崎旨菓堂(電095.807.5642)。


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