<長崎この1年>『西九州新幹線開業』 日本一短い新幹線 利用好調も弱点顕在化

対面乗り換えの合間に新幹線かもめ(右)を記念撮影する乗客=JR武雄温泉駅

 12月上旬、佐賀県武雄市のJR武雄温泉駅ホーム。西九州新幹線かもめの隣に、博多方面から在来線リレー特急かもめが到着した。観光客やビジネス客がぞろぞろと降り立つ。まだ真新しい新幹線の先頭車両に駆け寄り、慌ただしく記念撮影する乗客も。乗り換えは3分で完了。新幹線は定刻通り長崎へ走りだした。
 九州新幹線長崎ルート(博多-長崎、全長143キロ)の整備計画決定から49年。西九州新幹線(武雄温泉-長崎、約66キロ)が9月23日開業した。残る新鳥栖-武雄温泉の整備方式はまだ決まっておらず、「日本一短い新幹線」としての“発車”となった。
 JR九州によると、懸念された対面乗り換えによる混乱やトラブルはない。しかし、在来線区間での事故や大雨に伴う新幹線の運休・遅延は2カ月余りで5回発生。リレー方式の弱点が早くも顕在化した。
 同方式の固定化を避けたい長崎県議会は10月、全線フル規格整備に向けた議論を加速するよう佐賀県議会に申し入れた。大石賢吾長崎県知事も「佐賀県の理解を得ることが重要」と対話に意欲を示す。開業前後は両県知事がイベントなどで並び立つ場面も増えた。長崎県担当者は「トップ同士が対話できるようになったのは大きい」としつつ、未着工区間の整備財源やルート選定を巡る国と佐賀県の協議が進行中とあって「推移を見守るしかない」。
 西九州新幹線の利用者数は全国旅行支援を追い風に増加傾向にある。長崎県は当面、開業効果を県内広域に波及させることで「全線フル」への世論形成を促す考えだが、その取り組みは途上にある。
 長崎バス観光(長崎市)は9月から、長崎空港と雲仙・小浜温泉を結ぶ直行バスの実証運行をスタート。新幹線ダイヤに合わせて諫早駅も経由する。同社は「利用は増えているが、まだ少ない。新幹線で長崎に来る人々に、県内のさまざまな魅力をしっかり周知する必要がある」としている。


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