マッチングアプリで結婚、35歳女性の幸福な日々 コロナ禍で定着した出会いツール、リスクも把握を

マッチングアプリで出会った男性と結婚したMISATOさん。「真剣に相手を探している人にとっては便利なツール」と話している

 男女が出会うツールとして最近よく耳にする「マッチングアプリ」。大手生命保険会社の調査によると、2022年に結婚した夫婦の出会いのきっかけは、学校や職場を抜いてマッチングアプリが首位となった。新型コロナウイルス禍で対面での出会いの場が減る中、気軽に出会える方法として定着しつつあるようだが、福井県内ではどうなのだろう。どんな人が利用しているのか、リスクはないのか。調べてみた。

◇幸せな日々

 MISATOさん(35)=福井県福井市=は、マッチングアプリで知り合った会社員の夫(34)と結婚して1年になる。「家事を一緒にするだけでも楽しい。毎日がデートみたいで新鮮」と幸せな日々を過ごしている。

 アプリに登録したのは30歳の誕生日。婚活に本腰を入れるためだった。アプリには自身のプロフィルのほか▽年収500万円以上▽身長175センチ以上―など相手に求める約30項目を記入。加えて「本気度を示すため」(MISATOさん)、理想の夫婦像など結婚に対する思いを長文でしたため、公開した。

 夫とは21年7月、相手に「興味がある」という意思を示す「いいね」が互いに付きマッチング成立。初めて会ったときから会話が弾み、とんとん拍子に結婚が決まった。マッチングから3カ月のスピード入籍だった。MISATOさんは「真剣に相手を探している人にとっては便利なツール」と実感。「アプリがなかったら今ごろまだ独身だったね」。夫婦2人、こう声をそろえる。

◇時間短縮

 同県坂井市内の40代会社員女性は、10代の子ども2人を育てるシングルマザー。同僚の勧めで9月下旬にアプリに登録すると、いきなり10~80代の男性6、7人からメッセージが届いた。「顔写真を送って」「お話ししませんか」など、積極的な内容ばかりで驚いた。そのうち1人とメッセージをやりとりする仲になり、交際に発展した。

 女性には再婚の意思はなく、最初から気軽に会える相手を求めていた。マッチングアプリはプロフィルを読めば、結婚相手を探したいのか、友達を見つけたいのかは事前に分かる。コロナ禍で異性と出会う機会が限られる中、この女性は「相手の腹を探ったり駆け引きしたりする時間を短縮できて合理的」とアプリのメリットを話す。女性の70代の母親も「一緒にご飯を食べに行ける友達がほしい」と登録し、親子でアプリを利用している。

◇悪用リスクも

 マッチングアプリが定着してきた理由について、仁愛大学の山本雅代准教授(社会心理学)は「SNS(交流サイト)が広く普及し、ネットで知り合った人と直接会うことのハードルが下がったことが大きい」と分析。さらに「コロナ禍で人との接触が減る中、簡単に寂しさを埋めることができる手軽さも利用増につながっているのでは」と推測する。

 ただ、アプリを利用するには「一定のリスクがあることも認識しなくてはならない」と山本准教授。福井県消費生活センターによると、マッチングアプリに関する相談は性別、年代問わず寄せられており「知り合った相手からネットワークビジネスの勧誘を受けた」という人や「副業を勧められ、数十万円する教材を買わされた」との被害報告もあったという。

 「マッチングアプリが悪徳商法や詐欺などのツールになっているケースも見受けられる」と同センターの相談員。「契約を迫ったり何かを買わせようとしたりするなど、誘い文句が出た時点で警戒を」と注意を呼びかけている。

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