佐々岡真司前監督 退任後初めて明かした「カープ指揮官の舞台裏」 来季RCC野球解説者に復帰

3年間の監督生活を終えたカープの佐々岡真司前監督。これまでメディアで多くを語らなかった監督時代を振り返り、RCCの取材にその胸の内を明かしました。
(RCCテレビ『イマナマ!』カーチカチテレビeverydayより)

選手、コーチ、監督としてカープと共に歩んできた佐々岡真司。監督としての3年間で「残せたものは何もなかった」と悔やむ佐々岡氏は、コロナ禍という未曽有の時代に、それでも未来に向け種を蒔いてきました。

人間・佐々岡真司「優しさ」の裏に「責任感」

佐々岡氏には投手マネジメントができる厳しい指導者というもう一つの顔があります。コーチ時代から投手陣に課したハードルは決して低いものではありませんでした。

Q「佐々岡監督」「佐々岡ピッチングコーチ」「エース佐々岡」・・・一貫して、完投への責任感をすごく持っていたと思います。大瀬良・九里・森下の完封が増えたことについて、どう考えていますか?

――僕の考えでは、先発投手は、完投または長いイニングを投げて欲しい。でも、今の野球の中で、なかなか無理をさせられないわけで。僕らの時代と今の時代との違いというのはあった。

プロ18年間、「完投」の二文字を心にもってマウンドに立ち続けた佐々岡氏。ひとりで投げ抜いたからこそ、見えてくるものがあると確信しています。

――本人が自信になるのもあるし、特に森下は、将来カープを背負って立つ投手だと思う。そういう選手が、完投なり、苦しい時に長いイニングを投げると、本当に周りに影響する。特に野手に。いまからエースになっていく選手という気持ちで(野手陣に)守ってもらえる。信頼関係も得られるのではないかなと思う。

完投の先に得られるエースとしての信頼。それは現役時代、佐々岡氏が貫いてきた信念です。1991年には13完投でリーグ優勝に貢献。リーグ最多240イニングで腕を振り続け、「エース」としての地位を確実にした経験が物語ります。

栗林の陰に「幻の守護神プラン」候補に挙がったあの投手

さらに、佐々岡氏が蒔いた種は「守護神」にまで及びます。

――栗林をドラフトで獲ったとき、両方いけるタイプだなと思っていた。やはり、キャンプで見たときに、真っ直ぐは当然ながら、変化球のキレと精度が素晴らしかった。もうこれは抑えだなと。
その時は、誰を抑えにしようかなというのが、僕の2年目のキャンプの課題だったので。先発6人を早く確立したいという気持ちもありながらも、まずは抑えだと。色々考えた中で・・・4~5人は考えましたかね。その中での、栗林でした。

Q ほかに候補者はいたのですか?

――ケムナに、島内。あと、僕が考えていたのは、九里亜蓮。体が丈夫なところ、連投もきくタフさ。思い切っていくなら、九里もありかなと話をしていました。

指揮官として思索を巡らせ、勝利のため最善を尽くした日々。悔やまれるのは新型コロナの影響でした。就任1年目にしてチームテーマに掲げた「一体感」を作ることすら困難に陥ります。

――監督に就任して、秋季練習、そして春のキャンプと順調にきて。広島へ帰ったころからは、コミュニケーションどころか、練習も一緒にできない、なかなかつらい日々が続いたと思う。

未完の「一体感」 菊池涼介も口にした後悔の念

コミュニケーション不足を感じたのは、監督だけではありません。やるせない気持ちを抱えたのは選手たちも同じでした。後悔を口にしたのは、10年連続で「三井ゴールデン・グラブ賞」を獲得した、菊池涼介。

「佐々岡監督は本当に優しくて、いい人で。談笑しながら接してくれて。ただ、野球のことで、もうちょっとなにか話ができたかなと、思い残すことはあったなと。意見をするとかじゃないですよ。「僕はこうだと思うんですけどね」とか。普段の会話の中で、もうちょっとできたんじゃないかなと。僕は、退団されるときに、そういう風に思った」(菊池涼介選手)

かつてない厳しい時代を監督として過ごした3年間。後悔もありながら、佐々岡氏が蒔き続けた種は着実に芽吹き始めています。

このつづきは、新時代を担う新井新監督へ託されました。退任を決めた今シーズンのホーム最終戦。佐々岡氏には込み上げてくるものがあったと振り返ります。

――自分が選手を引退した時は、涙というのは出なかったんです。選手をやめた後は、(指導者として)このユニフォームをまた着るんだろうなと。でも、監督を辞めるときは、もうこのユニホームは着ないのだろうなと感じた。そのさみしさが、涙になったんだろうなと思います。

セレモニーの最後には監督との別れを惜しむ選手の姿がありました。

――ちょっとウルっと来るものがあったので、早く下(ベンチ横の監督室)に降りて、ひとりになろうかなと思っていたら、選手たちが「来てください」と。監督室へ呼びに来てくれて。まさか、写真をみんなで撮るというのは思ってもいなかったので・・・

こうして佐々岡氏は、選手・コーチ・監督という26年間のカープ人生に、ひとつの区切りをつけました。
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佐々岡真司前監督は、来シーズンからRCCの野球解説者に復帰することになりました。「2020年から3年間、コロナ禍での監督という貴重な経験をさせてもらいました。コーチ時代・監督時代の経験を踏まえて、深い解説ができればと思っています。ファンのみなさんと一緒に、カープを熱く応援したいと思います」とコメントしています。

<RCC野球解説者・佐々岡真司さん略歴>
1967年生まれ、島根県出身
1989年 ドラフト1位で広島東洋カープに入団
1990年 プロ1年目のシーズン 2桁勝利・2桁セーブを記録
1991年 最多勝・最優秀防御率・MVP・沢村賞を獲得 リーグ優勝に貢献
1999年 5月8日中日戦でノーヒットノーラン達成
2007年 現役引退 RCC野球解説者に
2015年 広島東洋カープ 2軍投手コーチに就任
2020年 広島東洋カープ 監督に就任 3季にわたり指揮
2023年 RCC野球解説者に復帰

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