なぜカタール? WEC首脳陣に新規開催地の選定理由を問う「金儲けだけでなく、レースへの愛が必要」

 WEC世界耐久選手権の首脳陣は、2024年シーズンの開幕戦としてカタールで6時間レースを行う理由について説明した。

 12月12日に発表されたように、シリーズはカタールの首都ドーハ近郊に位置するロサイル・インターナショナル・サーキットと6年間の開催契約を結んだ。2024年については、開幕戦としての開催も合わせて発表されている。

 WECのフレデリック・ルキアンCEOは、8戦が予定されている2024年のカレンダーにカタールが追加されたのは財政的な要因であることを認めた。

 カタールは中東においてWECのスケジュールに加わる2番目の国である。もうひとつの中東での開催地はバーレーンであり、こちらは契約により最終戦のレースを開催することになっている。

 ドーハで行われたカタール戦の発表会においてルキアンは、「カタールは、我々にとって重要な国だ。なぜなら、彼らはサーキットの全面改修を行っている」と記者団に語った。

「2024年に我々が使用するコースは、世界でもっとも近代的なもののひとつとなる。とても興味深い」

「少し早い時期にシーズンをスタートすることになるが、それも良いだろう。天候にも恵まれるだろうしね」

「それに加えて、我々は完全なる透明性を持って、どのようにカレンダーを構成するかについて説明する必要がある」

「このカレンダーは、プロモーターにとって完璧なバランスだ。また、サポートの問題でもある。カタールは明らかに、我々をサポートしている」

「この世界選手権にとって、特定の国によってサポートを受けることは重要なことだ。その種のサポートがない、ヨーロッパの伝統的な古いサーキットでレースを続けるためにも」

カタールでのWEC開催発表イベント。2023年にハイパーカークラスに参戦するトヨタ、プジョー、ポルシェ、フェラーリのマシンが並べられた

■中東は「クルマ文化が発展している」地域

 WECとカタールのモータースポーツ連盟との話し合いは、3年ほど前から始まったとされている。プレスイベントでルキアンは、以前ダカールラリーの副ディレクターを務めていたときに、カタール代表団と親しくなったことに言及していた。

「コースのレイアウトがとてもいいんだ」とルキアン。

「現在のコースはバイクのイメージがあるが、それは間違いだ。最初にコースへと行ったとき、とても驚いた。ドライバーにとっては最高のレイアウトだ」

「改修によって、とても近代的で素晴らしいグランドスタンドとホスピタリティを持つサーキットになるだろう。ファンタスティックだね」

「彼らが我々を必要としていることを、我々は感じることができる。それは、時には友情の場合もある。それが真実だ。彼らとともに仕事をしてきた、その最初の時点から、私は本当に気に入っているんだ」

「彼らはとてもスマートな人たちで、モータースポーツに対する情熱を持っている」

 FIAエンデュランス・コミッティのリシャール・ミル委員長は、中東で2番目となるレースを開催することは、この地域のモータースポーツ部門の成長に対応するために重要であると述べた。

「F1もそうだが、今日、中東を含まないレースを想像するのは難しい」とミル。

「情熱的な人たちと話すことは、重要なことだ。主催者として、プロモーターとして、モーターレーシングを本当に愛している人たちが必要なんだ。金儲けのためだけでなくね」

「また、中東でこの(モータースポーツ)文化を高めることも重要だ。湾岸地域にはコレクターがどんどん増えており、クルマに対する知識もどんどん深まっている」

「この地域では、クルマ文化が発展しているのだ。また、多くのマニュファクチャラーにとっても、重要な地域だ」

 FIAと共同でWECを運営するACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長は、チャンピオンシップがカレンダーを作成する際に、急成長するハイパーカー・クラスに参入するマニュファクチャラーの要望を考慮することを強調した。

 他の主要な大陸のレースがまだ予定されていないにもかかわらず、WECがバーレーンからわずか250マイルの距離にあるサーキットで湾岸地域での2つ目となるイベントを追加し、開催する理由を尋ねると、フィヨンは次のように答えている。

「それは、どのメーカーにとってか、なのかによる」

「プジョーは南米に戻りたがっているが、ポルシェは(カタールを)希望している」

「トヨタにとっても非常に重要なことだ。すべてのメーカーを満足させる必要があるのだ」

「南米に戻れるのであれば、そうするつもりだ。これは長期にわたる議論だ。我々は過去に南米(ブラジル)に行ったことがある。良いプロモーターなどを見つける必要があるのだ」

「カタールとは6年契約を結んだが、今後、あまりレース数を増やさずに別の開催地を追加することも考えている。なぜなら、我々はコストをコントロールしたいからだ」

■新規開催地は「東南アジアなども検討しなければならない」

 2023年は7戦を開催するWEC。2024年に加わるカタール6時間レースはどれかに取って代わるものではなく、“8つ目”のレースとして純粋に追加されるものと思われる。

 2024年のカレンダーはまだ確定していないが、カタールが新しい開幕戦の開催地になるものの、(2023年まで開幕戦を開催する)セブリングを含めることは現在「計画中」だという。

 2025年には、WECは第9戦を加えることを目指しているが、それ以上の拡大はコストとコースタイム(総走行時間)の点で持続不可能に近づくだろう。

「F1に比べれば、我々のレース数は多くない」とミルは言う。

「ステップ・バイ・ステップで(シリーズを)大きくしていく可能性はある。だが確実に、すべての大陸のことを考慮しなければならない。それが義務である」

「いまところ、我々はほとんどがヨーロッパ(のサーキット)だ。だが、一歩一歩拡大している」

「東南アジアや、その他のサーキットも我々は検討しなければならない。でも、あまり早急にレース数を増やしたくはないんだ」

2024年の開幕戦をカタールで開催することを発表した際にWECが用いたビジュアル

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