赤字ローカル線の見直し 通学の足をどうやって確保し将来につなげていくか JR陸羽東線沿線の宮城・大崎市

人口減少を背景にした赤字ローカル線の見直しが、沿線の高校生や教育者に波紋を広げています。通学の足をどう確保し将来につなげていくのか。議論が始まっています。

平日の朝、宮城県大崎市の古川駅は高校生たちの姿が目立ちます。古川学園高校の1年生、藤原彩光さんは、この春から陸羽東線で通学しています。両親が共働きのため、車での送り迎えは頼めません。アートやボランティアに取り組む部活動も時刻表を意識しています。
古川学園高校1年生藤原彩光さん「(時間帯によっては)1時間に1本しかないので。やっぱり時間は気にして生活してます」

JR東日本は赤字ローカル線の見直しを進めていて、7月に利用者が特に少ない66の区間の収支を初めて発表しました。陸羽東線の古川駅より西側も見直しの対象です。
2019年度、100円を稼ぐのにかかった費用は古川と鳴子温泉の間は1043円、鳴子温泉と山形の最上の間は8760円でした。

大崎市の懇談会

存続を目指す大崎市は利用者を増やす策を探ろうと、11月中旬に沿線の住民らでつくる懇談会を始めました。
懇談会には、市の幹部のほか商工業者や観光業者、教育関係者らが参加していて、古川学園高校の教頭、佐藤和博さんもメンバーの1人です。
古川学園高校佐藤和博教頭「生徒会を通じて、陸羽東線の存続に向けて生徒たちにアイデアを出していただいて共有していけるように頑張っていきたい」

古川学園高校に陸羽東線で通学しているのは、全校生徒約800人のうち190人ほどに上ります。
古川学園高校佐藤和博教頭「まず最初にみんなが思っている陸羽東線のイメージ。まず思うところを自分で紙に書いてみてください」
6日の放課後、生徒会や新聞部の部員ら40人ほどが集まり、陸羽東線について話し合いました。
生徒「車両が少ない。だって2両しかないから」「(沿線に)温泉街が多い」「県外までも行くことができたり、あと、停車駅が多いことなどです。車体が首都圏に比べて古い」「予定時刻に到着したり発車したりしてくれることと、景色が楽しめること」「安いし、親しみやすいので、誰でも活用しやすい。ちょうど良い時間がなかったり、待ち時間が長かったりします」

高校生がアイディアを

利用者を増やす方法についても意見を出し合いました。
生徒「足湯列車っていうのを考えたんですけど」「気持ちよさそう」「インスタ映えしたら多分、若者来るから線路に沿って桜とか植えたら良いと思います」
藤原さんも提案しました。
古川学園高校1年藤原彩光さん「駅の近くに、その場所でしか買えないという特産品の店をつくって電車の利用者を増やす」
大崎市には、買い物客らでにぎわう道の駅があり、ヒントにしたと言います。

生徒たちが出した意見は新聞部で記事にまとめ、今後、壁新聞や校内紙で紹介します。
古川学園高校新聞部部長鈴木杏菜さん「(新聞を読んでくれる人には陸羽東線に)乗ってほしいし知ってほしいし」

11日、教頭の佐藤さんは活性化を目指す生徒たちの意見を大崎市の第2回の懇談会で紹介しました。
古川学園高校佐藤和博教頭「こういう場でしっかり皆さんにお伝えできたのは、とても良かったなと思ってます」
懇談会を開いた大崎市の伊藤康志市長は。
伊藤康志大崎市長「通学の有力な交通手段として陸羽東線が利用されている。真剣に受け止めていただいていると、ひしひしと感じました」

大崎市は、商工業者らの意見も踏まえて利用者を増やす方策をまとめ、実現を目指す部署を設置する方針です。2023年の春以降に本格化するJR東日本との協議に備えます。

人口が減っていく中、通学の手段をどう確保していくのか、各地で模索が続きます。北海道を走るJR日高線の一部は、2021年春に廃止され代替バスが走っています。高校のすぐ前に止めるようにし、登下校に合わせてダイヤを組みましたが、通学定期は値上がりしました。

秋田県の由利高原鉄道は2021年春、通学定期を約半額に引き下げ、高校生の利用を約7割増やしました。
経営は、秋田県や由利本荘市などが出資する第三セクターが担っていて、年間1億円ほどの経常赤字は地元住民らの負担で補っています。

陸羽東線への思い

JR東日本が、赤字ローカル線の収支を発表して5カ月。古川学園の藤原さんは、春先は何気なく乗っていた陸羽東線への思いが変わってきたと言います。
古川学園高校1年藤原彩光さん「やっぱり、ありがたみが増えました。陸羽東線が無くなると自分の学校に来る交通手段が無くなってしまうので、そこには感謝しないとなと思いました」

高校1年生の藤原さん。陸羽東線の先行きは中学2年生の妹の進学にも影響しかねないと心配しています。
古川学園高校1年藤原彩光さん「自分たちの案を活用してもらって、赤字から黒字に回復が少しでも近くなれれば一番良いんじゃないかなと思います」

ローカル線の見直しと通学の足の確保をいかに両立させていくのか。JR東日本の三林宏幸東北本部長は「通学の足として使われている実態をしっかり認識し、地元と議論していきたい」と話しています。

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