「客が夏より少なくなるが、維持費は冬の方がずっと高い」新型コロナに物価上昇 例年以上に苦しい冬に直面する観光施設の知恵と工夫【現場から】

新型コロナの影響が長引く中、今度は物価上昇に観光施設が苦しめられています。寒さの厳しい静岡県富士宮市の朝霧高原の施設では、客の減る冬の時期を何とか乗り切ろうと知恵を絞っています。

雄大な富士山を間近に望む朝霧高原、動物たちと触れ合えるレジャー施設「まかいの牧場」です。2023年の干支「ウサギ」と一緒に年賀状用の写真を撮影できるコーナーが人気を集めています。

しかし、物価高が続く中、施設の維持には、これまでより多くの経費が掛かります。そこで、資材の経費を抑えるため、スタッフが敷地内の樹木を自ら切り倒し、活用しています。

<まかいの牧場観光部 新海貴志課長>

「3日前に、ちょうどそこのスギ、ヒノキを16本ほど倒した。製材屋に持っていき、その丸太から柵や杭をつくってもらう材料。そうした方が買うより安い」

さらに深刻なのが、約300匹いる動物たちのエサ代だといいます。2021年の2倍以上になっているエサもあるため、近くの農家から譲ってもらった稲わらでエサを作りました。

<まかいの牧場観光部 新海貴志課長>

「イベントをしたり動物の世話をしたりと、合間合間で田んぼに行って一生懸命作ったサイレージというエサがこちら。こういうものも使いながら、なんとか春を迎えたい」

しかし、増え続ける経費を努力だけでは賄いきれず、12月1日から入場料の値上げに踏み切りました。値上げするからには、サービスを向上させねばと、施設内を無料で巡回する車両の運行を始めました。

<まかいの牧場観光部 新海貴志課長>

「値段が上がったから、我々のお客さんを迎える心の中で、新しい仕組みも考えなければならないということで、何とかできることを行っている」

<富士花鳥園 加茂登志子社長>

「ここはスポット暖房をしている。全体も温めるが、特に南の鳥は、このようにスポットで暖房して温めてあげる」

「まかいの牧場」のさらに北、標高900mほどにある鳥と花のテーマパーク「富士花鳥園」では、屋内型の施設ゆえの経費が経営を圧迫しています。

<富士花鳥園 加茂登志子社長>

「冬の間は寒いということもあるので、お客様が夏よりは数が少なくなるが、維持費は冬の方がずっと高い」

鳥や花のために、重油ボイラーを中心に様々な暖房器具を使って、園内の温度を維持しています。2021年の冬は、重油代だけで約770万円。2022年は電気代の高騰などで、さらに増える見込みです。

そこで、鳥たちの展示場所を集約するなど、新たな節電対策にも取り組んでいますが、それだけでは冬を乗り切れないと、クラウドファンディングで資金を募ることにしました。

<富士花鳥園 加茂登志子社長>

Q.クラウドファンディングをやらないと乗り切れない?

「まだまだ冬は長いので、お願いしたいというのが本当に偽らざる気持ち」

これから訪れる本格的な寒さと閑散期。朝霧高原のレジャー施設は知恵と工夫で、冬を乗り切ります。

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