電気料金高騰。企業の価格転嫁率は1割未満。営業時間短縮で対応する企業も

 パンデミックやウクライナ侵攻、円安などによるエネルギー価格の高騰を背景に電気料金が高騰している。かつて景気動向を読み取る重要な指標として大口電力使用量が用いられていたように、電気は企業活動と直結しており、電気料金高騰は企業経営をコスト面から強く圧迫する。帝国データバンクの調査によれば電気料金の負担が前年と比べ増加した企業は9割近くに達し、このコスト増を「全く価格に転嫁出来ていない」企業は7割にのぼる。稼働・営業時間の短縮や始業・終業時刻の調整などで対応している企業も1割を超えており、企業の稼働率にも影響が出てきているようだ。
 
 12月7日、帝国データバンクが「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート」の結果レポートを公表している(調査期間:12月2~6日、有効回答:1265社)。これによれば、電気料金の総額が1年前と比べて増加したと回答した企業は86.6%。増加の程度では20~40%未満が全体の34.4%を占め最多となっており、平均値をとると28.7%で、電気コストは1年前と比べ約1.3倍になっている。

 電気料金の増加分を販売価格やサービス料金に「多少なりとも価格転嫁できている」企業は29.6%と約3割にとどまり、70.4%は「全く価格転嫁できていない」と回答している。「転嫁できている」企業のうち「すべて価格転嫁できている」企業は2.2%にとどまり、「8割以上できている」は1.9%、「5割以上8 割未満」が3.5%となっている。帝国データバンクが推計した「価格転嫁率」は9.9%と1割未満にとどまり、電気料金100円の増加に対し9.9円しか販売価格等に反映できていないことになる。

 電気料金高騰に対する対応策について聞いた結果では、「こまめな消灯」が70.9%でトップとなっており、次いで「空調など温度設定の見直し」47.7%、「消費電力の少ない製品・設備の導入(LEDなど)」31.8%と続く。この他、「稼働・営業時間の短縮」が6.0%、「休暇取得の推奨」4.6%、「始業・終業の時刻を早める」2.6%、「在宅勤務の強化」2.3%、「電力需要の少ない曜日に操業」0.4%などといった働き方を変えるような対応策を実施している企業は13.3%と1割を超えており、企業の稼働率にも影響が出始めているようだ。レポートは政府の「円滑に価格転嫁できる環境整備の推進など、多方面にわたる対策を強化することが肝要である」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)

帝国データバンクが電気料金値上げに関する企業の実態アンケート。電気料金は1年前の約1.3倍に増加

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