頬を平手打ち…「地元に帰れ」 監督ら部員に暴行暴言 瓊浦高野球部で休み、退部相次ぐ

 長崎市の私立瓊浦高野球部で監督(教員)らによる暴言や暴行が繰り返され、練習を休んだり退部したりする部員が相次いでいることが14日、同校や関係者への取材で分かった。監督らは今年9月の緊急保護者会で謝罪。学校側は暴行や暴言を禁止し監督を交代させたが、約1年半後に復帰させる方針を示した。同校は13日、県高野連に口頭で報告した。
 同校野球部は甲子園出場経験があり、プロ野球選手も輩出。同校によると、現在の部員は約30人。市外や県外出身者もおり、多くが寮生活を送っている。
 渡川正人校長によると、今夏、部員や保護者から部運営への不満が寄せられ、全部員と保護者にアンケートを実施。校長が全部員と個別に面談した後、暴言などで名前が挙がった監督とコーチ(職員)に事実関係を確認。監督は部員の頬を平手打ちにしたり、「お前は3年間レギュラーになれない」「地元に帰れ」と怒鳴ったりした。一部の部員に深夜まで練習をさせたこともあった。コーチはふざけて胸部分をつねったという。
 複数の関係者は、練習でミスなどをした部員に対し監督が蹴ったり硬球を投げ付けたりしたほか、けがから復帰した部員に「またけがをさせてやる」と言ったと本紙に証言。副部長(教員)も寮の部員の部屋に無断で入り、食事の食べ残しがないか荷物を調べたりしたという。校長は大半を「把握していない」としたが、部員の荷物を調べたケースについては「今記憶にないが、(本紙が取材で把握したのであれば)あったのかもしれない」と述べた。
 9月の保護者会では、校長が、精神的に耐えられず練習に参加できない部員が複数いることなどを説明。「子どもに不愉快な思いをさせてしまい、学校の責任者として深くおわび申し上げる」と謝罪。ただ監督らについて「悪意はない。一生懸命だが、ちょっと方向性がずれてしまった」と釈明した。同席した監督も「不適切な指導」を反省する姿勢を示しつつ「私の思いと生徒の受け止め方が全然違った」と述べた。
 校長は保護者に「野球部指導方針」の文書を配布し、▽部員に愛情を持って指導にあたる▽体罰、暴言を絶対にしない▽けが、痛みを申告しやすい雰囲気を作る▽寮では適切な睡眠時間を確保する-などと改善を約束した。
 校長は当面、監督を副部長に、部長(教員)を監督に、副部長を部長に配置替えするとしたが、監督については約1年半の「指導者としての資質を高める期間」を経て、元に戻す予定と説明した。関係者からは「それでは意味がない」との声も聞かれる。
 複数の関係者によると、監督交代後も「不適切な指導」があったという。今秋、部員が学校から約4キロ離れた練習場まで走る際、一部の部員が途中歩いたことが発覚し、全部員が「罰走」として練習場の外野の両翼のポール間を100回ダッシュさせられた。これで体の一部を痛めた部員もいたというが、校長は「把握していない」としている。
 校長は「今後、県高野連に正式に文書で報告し、処分を待ちたい」と述べた。


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