Vol.01:動画性能を大幅向上させたミラーレスやスーパー35シネマカメラ登場「カメラ部門」発表[PRONEWS AWARD 2022]

カメラ部門のノミネート発表

2022年のカメラ業界は、各社から動画機能を充実させたミラーレスカメラ登場に沸いた年だった。パナソニックのGH6は30万円を切る価格で5.7K60P、C4K120P、Apple ProRes 422 HQなど記録モードを実現。富士フイルムのX-H2Sは、6.2K30Pや4K120Pの動画撮影に対応。キヤノンのEOS R7は、1回の動画記録時間の上限を従来の29分59秒から最大6時間まで拡張してきた。これまで手の届きにくかったスペックがミドルクラスで登場。フラッグシップではないものの、例年以上に個性的な機種の発売が多かったという印象だ。

シネマカメラメーカーからの、スーパー35mmデジタルシネマカメラ新製品の登場も印象的な出来事だった。ARRIは17ストップの広いダイナミックレンジ、ネイティブ4K UHDで最大120fpsの収録が可能な「Alexa 35」、REDは8K、35.4MP S35 CMOSセンサーを組み込んだ「V-RAPTOR RHINO 8K S35」を発売した。スーパー35はシネマ業界ではまだまだ不動の人気フォーマットで、そんな需要に応えた新製品の登場といえるだろう。

カメラ部門にノミネートされた製品は以下の通りだ。

■ソニー FX30

発売日:2022年10月14日
希望小売価格:税別273,900円(ボディのみ)

FX30は、Cinema Lineの新商品として、新開発のAPS-CサイズのCMOSイメージセンサーを搭載したレンズ交換式カメラだ。Cinema Lineのルックと操作性を備えており、14+ストップのワイドラチチュードによる階調豊かな映像記録や、高解像度4Kで最大120fpのハイフレームレート動画撮影に対応する。また、デジタル一眼カメラαの開発で培った高精度なAF性能や、豊富なEマウントレンズとの組み合わせによる印象的なボケ描写とクリアな解像感で、シネマのような映像表現を可能としている。

■ソニー FR7

発売日:2022年11月11日
希望小売価格:税別1,320,000円

FR7は、フルサイズ裏面照射型CMOSイメージセンサー「Exmor R」を搭載し、高感度で低ノイズ、美しいボケ表現を特徴としている。また、ソニーの豊富なEマウントレンズを装着可能。広角12mmから超望遠1200mmの焦点距離までカバーする豊富なレンズ群の中から、映像表現に合わせてレンズ選択が可能。加えて、「S-Cinetone」を搭載することで、人肌の中間色を表現力豊かに、被写体を美しく際立たせる自然なトーンで撮影可能としている。また、「S-Log3」「S-Gamut3」による広いダイナミックレンジ・広色域での記録が可能な「Cine EI」モードを搭載するという。

■ソニー VENICE 2

発売日:2022年3月
希望小売価格:オープン。市場想定価格はVENICE 2 8K(本体のみ)が6,800,000円前後、VENICE 2 6K(本体のみ)が6,200,000円前後

VENICE 2は、8.6Kフルフレームイメージセンサー搭載モデル、および6Kイメージセンサーを搭載したデジタルシネマカメラ最上位機だ。両機種ともX-OCNまたはApple 4K ProRes 4444および422 HQ記録フォーマットによる本体内部記録に対応。VENICEとポータブルメモリーレコーダー「AXS-R7」装着時と比較して、VENICE 2は長さで44mmの小型化と約10%の軽量化を実現し、撮影時の機動性向上を実現している。

■キヤノン EOS R5 C

発売日:2022年3月10日 希望小売価格:オープン、市場想定売価は税込65万円前後

EOS R5 Cは、CINEMA EOS SYSTEMの動画性能とミラーレスカメラ「EOS R5」を踏襲した高い静止画性能を使い分けできるデジタルシネマカメラだ。約4500万画素フルサイズCMOSセンサーと、映像エンジン「DIGIC X」の搭載により、8K30P・RAW動画に加え、外部電源供給による8K60P・RAW動画の内蔵記録を実現。また、8Kの有効画素を全画素読み出すことで、オーバーサンプリングによる高画質な4K 4:2:2 10bit動画を生成することも可能。さらに、放熱構造と、放熱ファンの内蔵により、EOS R5と比べて長時間の動画撮影を可能にしている。

■キヤノン EOS R7

発売日:2022年6月23日 希望小売価格:オープン。キヤノンオンラインストアの価格は税込203,500円

EOS R7は、新開発の有効画素数最大約3250万画素APS-CサイズCMOSセンサーと、映像エンジン「DIGIC X」により、APS-CサイズCMOSセンサー搭載のEOS史上もっとも高い解像性能を実現。また、7Kオーバーサンプリングによる高画質な4K動画撮影を実現し、Canon Log 3に対応するなど、画質にこだわる動画クリエイターのニーズにも対応する。動画撮影は、1回の動画記録時間の上限を従来の29分59秒から最大6時間まで拡大。ハイフレームレート動画でも最大1時間30分まで連続撮影が可能。ドキュメンタリーや長回しなどの長尺撮影対応も特徴としている。

■キヤノン EOS R6 Mark II

発売日:2022年12月25日
希望小売価格:オープン。キヤノン公式ストアの価格は税込396,000円

EOS R6 Mark IIは、約2420万画素フルサイズCMOSセンサーと、映像エンジン「DIGIC X」により、高い解像感と常用最高ISO102400の高感度両立を特徴としている。ボディ内5軸手ブレ補正機構を搭載しており、レンズ内光学式手ブレ補正機構を搭載したRFレンズとの協調制御により、最高8.0段の手ブレ補正効果を発揮する。動画性能は、クロップなしの6Kオーバーサンプリングによる4K60P動画撮影や、フルHD180Pハイフレームレート動画撮影を実現。さらに、キヤノン独自のガンマ特性Canon Log 3やRAW動画の外部記録に対応するなど、用途に応じた動画記録方式により、多様化する動画制作のニーズに応えるとしている。

■パナソニック LUMIX GH6

発売日:2022年3月25日 希望小売価格:オープン、市場想定価格は税込26万3,000円前後

GH6は、新開発の25.2M Live MOSセンサーと演算処理速度が約2倍に高速化した新世代ヴィーナスエンジンを搭載し、解像感・高速性能・ダイナミックレンジの向上を特徴としている。LUMIX初の5.7K60Pの高解像動画記録や、4K120p/FHD 240pのハイフレームレート撮影やFHDで最大300fpsから生成できる多彩なスローモーションを実現する。Cinema4K 60P記録では、新たに4:2:2 10 bit最大800Mbpsの内部記録に対応し、放熱構造の進化により記録時間無制限で撮影可能。さらにLUMIXとして初めてApple ProRes 422 HQの内部記録に対応している。

■パナソニック HC-X2

発売日:2022年10月20日
希望小売価格:オープン。市場想定価格は税込38万3,000円前後

HC-X2は、1503万画素1.0型MOSセンサー搭載で、4K60P 10bit記録やFHD 120fpsのスーパースロー撮影に対応。13ストップV-Log/V-GamutとHLGによるHDR映像制作に対応する。レンズは広角24.5mm、光学20倍ズームを搭載。状況変化に素早く対応できる3連のマニュアルリング、NDフィルターやLAN端子(X2のみ)、3G-SDI対応BNC端子(X2のみ)搭載する。

■ARRI ALEXA 35 ARRI ALEXA 35は、ネイティブ4K UHDで最大120fpsの収録が可能なスーパー35mmデジタルシネマカメラだ。17ストップのダイナミックレンジを実現し、以前のALEXAカメラのハイライトに1.5ストップ、シャドウには1ストップが追加されており、フィルムのような自然なハイライトのロールオフを保つことを特徴としている。低ノイズでEI 160からEI 6400までの感度設定が可能。オプションのEnhanced Sensitivity Mode (高感度モード)はEI 2560からEI 6400まで設定することができ、微光でもクリアな画像をとらえることが可能としている。

■RED DIGITAL CINEMA V-RAPTOR XL 8K VV

V-RAPTOR XLは、コンパクトでモジュール式のV-RAPTORボディにマルチフォーマット8Kセンサー搭載が特徴。8Kラージフォーマットと6K S35の撮影を可能としている。S35レンズと組み合わせた場合でも、常に4K以上の画質で撮影できる。このセンサーは、同社のカメラの中でもっとも高い記録ダイナミックレンジとクリーンなシャドウ性能を誇るという。さらにV-RAPTORセンサーのスキャン時間は、これまでの同社のどのカメラよりも2倍速く、2Kで最大600fpsのキャプチャを可能にする。

■RED DIGITAL CINEMA V-RAPTOR RHINO 8K S35

V‑RAPTOR RHINO 8K S35は、スーパー35mmセンサー搭載の8K新型カメラモジュールだ。最大120フレームで8K撮影に対応したスーパー35mmイメージセンサーを搭載する。KOMODOよりわずかに小さいセンサーだが、S35レンズとの組み合わせで周辺落ちがないのを特徴としている。RHINOの仕様はRED Webサイトに掲載されていないが、REDのコミュニティー「REDUser」に投稿がある。8192×4320の35.4メガピクセルCMOSを搭載し、ダイナミックレンジは16.5+ストップを実現。RFレンズをサポートする一体型RFマウントを搭載し、RFマウントからEFマウントアダプターを介してキヤノンEFレンズをサポートする。フレームレートに関しては、RED V-RAPTOR 8K VVとほぼ同じとしている。

■富士フイルム X-H2S

発売日:2022年7月14日
希望小売価格:オープン。富士フイルム公式オンラインストアの価格は税込346,500円

X-H2Sは、現行比約4倍の信号読み出し速度の裏面照射積層型約2616万画素「X-Trans CMOS 5 HS」センサーと現行比約2倍の処理速度の高速画像処理エンジン「X-Processor 5」など、新開発のデバイスを採用したフラッグシップモデルだ。最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写やAIによる被写体検出などが可能な高性能AFを実現。さらに、6.2K30Pや4K120Pの動画撮影に対応し、高精細な映像も記録することが可能。高剛性ボディに5軸・最大7.0段のボディ内手ブレ補正機構や、CFexpress Type Bカード対応のデュアルスロットを含む豊富なインターフェースを採用している。

以下がカメラ部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2022カメラ部門 ファイナリスト

  • ソニー FX30
  • ソニー FR7
  • ソニー VENICE 2
  • キヤノン EOS R5 C
  • キヤノン EOS R7
  • キヤノン EOS R6 Mark II
  • パナソニック LUMIX GH6
  • パナソニック HC-X2
  • ARRI ALEXA 35
  • RED DIGITAL CINEMA V-RAPTOR XL 8K VV
  • RED DIGITAL CINEMA V-RAPTOR RHINO 8K S35
  • 富士フイルム X-H2S

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2022 カメラ部門 ゴールド賞

ソニー FX30

受賞にあたり、ソニー株式会社、今川航介氏よりコメントをいただいた。

このたびは栄えあるゴールド賞に選定いただきありがとうございます。FX30の開発にあたり、日々、クリエイターやこれからクリエイターを目指す皆様のことを考えながら商品の開発に向き合ってきましたので、携わったメンバー一同大変光栄に思います。

FX30は、ソニーの映像制作用カメラ商品群Cinema Lineで初のAPS-C(Super 35mm)センサーを搭載するモデルです。すでに多くの方にご好評いただいているFX3同等のコンパクトなボディに、新たにDual Base ISOを使ったCine EIという撮影方法を搭載しました。また、メニューや撮影中の画面もアップデートしており、映像制作に向けた使い勝手にもこだわりが詰まっています。

映像制作を始める方だけでなく、すでにお仕事で映像制作をされている方にも使い込んでいただけるカメラになっていますので、このカメラを使って様々な映像を制作していただけると嬉しいです。

製品を企画・開発する私たちとしては、このカメラを使って皆様が制作した映像を見ることを大変楽しみにしています。今後も機会があればぜひFX30を使っていただき、「FX30で撮ったぞ」、といろいろな場所でお話いただけると嬉しいです。

PRONEWS AWARD 2022 カメラ部門 シルバー賞

キヤノン EOS R5 C

受賞にあたり、キヤノンマーケティングジャパン株式会社よりコメントをいただいた。

このたびはカメラ部門シルバー賞をいただきましてありがとうございます。

EOS R5 C」は、高い次元で静止画性能と動画性能を両立させたデジタルシネマカメラとして、その立ち位置や仕様的にも今までにないタイプのカメラでしたので、開発から市場導入の過程で苦労した面がとても多かったのですが、多くの方にご注目をいただきこのような賞をいただけましたこと、大変嬉しく思います。

開発にあたっては、スチールおよびムービーのユーザー様、どちらにとっても使いやすいカメラであることが求められると思っていました。「PHOTO」のモードでは静止画撮影をしやすいEOSのUIに、「VIDEO」のモードではシネマカメラとして運用しやすいCINEMA EOSのUIになり、2種類の異なるUIを切り替えて使用いただくスタイルを採用しました。静止画と動画、それぞれのクリエイティブにしっかりと向き合っていただけるように、議論してきた結果です。

CINEMA EOSに馴染みのない方は、動画撮影時のUIに少し戸惑うこともあるかもしれませんが、映像制作に必要な仕様を盛り込み、使いやすさを追求してきたUIですので、ぜひ一度お手に取って確かめていただければと思っています。

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