斎藤工、妊娠・出産を経たからこそ出たセリフが感動…!話題作『ヒヤマケンタロウの妊娠』の撮影現場に託児所も

2023年1月5日からスタートするテレビ東京のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は、すべての男性に妊娠の可能性がある世界を舞台にしたストーリー。主演の斎藤工さんは妊娠した男性・ケンタロウを演じています。Netflixで配信されて話題を呼んだこちらのドラマですが、撮影現場では斎藤さんの提案で託児所が設けられたとか。今回のインタビューでは、ドラマの中に出てきた”(育児のために)だれも犠牲になってはダメ“という言葉にも通ずる、託児所設置の取り組みとその思いについて、斎藤さんにお話を聞きました。

【俳優・斎藤工×漫画家・坂井恵理」育児する親たちが、もっと生きやすい社会になれたら

妊娠・出産を経たケンタロウのセリフがドラマを見たママ・パパの心を打った

ーー物語の後半、出産したケンタロウが仕事と育児のはざまで悩むパートナーの亜季にかけた「俺たちはだれも犠牲になっちゃダメだよ」という言葉は、実際に子育て中の多くのママとパパの心を打つ言葉だと思います。

斎藤 僕もあそこのシーンが、この作品の一つの着地点であり、 一つの結論だと考えています。

“だれも犠牲にしない”で思い出されたのが、以前、別の作品でフランスにて撮影したときのことです。向こうにはユニオン(労働組合)の決まりがあり、昼休みは 2時間ぐらい休憩を取ります。キャストもスタッフも男女も関係なく、その時間、家族が合流してゆったり食事をするんです。また、労働時間も最高8時間というのが、決まっています。その姿を見て、とても健全だなと思えたんですよね。

一方、日本の撮影現場は、風通しのよさをめざす現場もありますが…、それでも出産した女性の大半が、たまたま実家が近くでサポートをしてもらえるから仕事が成り立つような状況です。でも、サポートがない環境の方も大勢いて、その場合、現場を去っていくことも。多くの才能が失われていると思っています。その損失に映像業界全体がもっと危機感を持って、改良に取り組む必要があるんじゃないかと感じていて…。

ーー斎藤さんは今回の撮影現場で、託児所を設置したと聞きました。それもそういった映像業界のしくみを受けての行動なのでしょうか?

斎藤 そうですね。全日は難しかったのですが、一日、託児所を設けました。以前から自分の監督作品では託児所を設置していたんです。初めて用意したのはもう6年くらい前の現場で、そのときは地方に移住したフードコーディネーターさんにお仕事をお願いしたかったのですが、ロケ地が遠方だったんですね。彼女には赤ちゃんがいるので、どうしよう?という話になり、いろいろと動いた結果、撮影現場に託児所を用意するのがベストだということになりました。
結局、他の人の赤ちゃんも含めて預かることになり、撮影が終わると、赤ちゃんたちがはいはいする姿が見られたんです。それがとてもかわいくて、印象的で。迷惑どころか、僕らも癒やされながら作品作りに取り組むことができました。そのとき、僕の感覚では子どもが現場にいることがプラスしかないなと思えたので、それ以降も自分の監督作品とか主演作品のときは、託児所を設置する提案をしています。

託児所の設置は男性スタッフからも喜ばれた

ーー今回の『ヒヤマケンタロウの妊娠』の託児所では、利用者からどんな感想がありましたか?

斎藤 今回、意外と男性スタッフが子どもを預けてくれたのですが、「子どもと一緒にいられた」と喜ばれましたね。そもそも映像業界で働く人の中には、生まれたばかりの赤ちゃんがいるのに、忙しすぎて全然会えてないという人も多いんです。だから、撮影現場に連れて来られるというのは、その男性スタッフさん自身にも、家族にとってもよかったのかなと思います。

ーーまさにだれも犠牲にしない取り組みですね。

斎藤 僕自身が子どもと対峙(たいじ)したときに教えてもらうことが本当に多くて、それに対する恩返しという意味もあります。
現状は、妊娠・出産と職場の二つが乖離(かいり)した状態にあって、子どもがいる人たちを守る体制が明らかに脆弱(ぜいじゃく)です。女性はもちろん、パートナーの男性も先ほどの話のように、仕事でなかなか子どもに会えないなど、困っている人がたくさんいると思います。僕ができることは微力ですが、撮影現場でそれをサポートする託児所のサンプルを積み重ねていけたらと。
まだまだ長期戦で、何年後になるかわかりませんが、いつか撮影現場の託児所が常態化し、もちろん、撮影現場以外でもこのような取り組みが増えたら…。そのときに僕がまわりの力を借りながらやってきたことも無駄じゃない、ほんの少しでも力になれたかなと思えるかもしれません。
『ヒヤマケンタロウの妊娠』は僕がそんなことを考えていたときに巡り合った作品なので、とても印象深いですね。

お話/斎藤工さん 撮影/有坂政晴[STUH] スタイリング(斎藤さん)/ 三田真一[KiKi inc.] ヘア&メイク/三浦佑介[MILK/MURIEL omotesando] 取材・文/江原めぐみ、ひよこクラブ編集部
斎藤さん:ニッ ト 5 万7200 円(税込)/stein (carol 03 ・5778 ・9596 ) 赤ちゃんの衣装は編集部私物

斎藤工 主演の話題作『ヒヤマケンタロウの妊娠』制作秘話 監督インタビュー

社会全体の問題として「子どもがいる人たちを守る体制が十分ではない」との思いから、実際に行動を起こしている斎藤さん。ジェンダーや社会から求められる“らしさ”への違和感など、さまざまな社会問題に対して軽やかに切り込んだ「ヒヤマケンタロウの妊娠」の主演をしたのは、必然だったのかもしれません。本誌「初めてのひよこクラブ冬号」では、表紙撮影をともにした赤ちゃんとのエピソードやドラマの裏話も満載。そちらもぜひチェックしてくださいね!

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

●Information
「ヒヤマケンタロウの妊娠」
テレビ東京 2023 年1月5日スター ト
毎週木曜深夜0時30分

広告業界でバリバリ働く独身男性の桧山健太郎(斎藤工)が、予期せぬ妊娠をしたことで、自身の身体の変化への戸惑いだけでなく、会社での立ち位置や、パートナーの亜季(上野樹里)や周囲との関係を含めて、自分を見つめ直していく姿を描くNetflixがテレビ東京とともに企画・製作したドラマ。坂井恵理による13年発売の同名コミックスが原作(講談社)。Netflixで配信中。

©坂井恵理・講談社/テレビ東京

斎藤工Profile

1981年生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビュー。22年は映画『シン・ウルトラマン』に主演。公開待機作に映画『イチケイのカラス』、主演作の『零落』や監督長編最新作『スイート・マイホーム』が控える。移動映画館プロジェクト「cinéma bird」や、撮影現場に託児所を設けるなど、多岐にわたる活動でも知られる。

© 株式会社ベネッセコーポレーション