社説:技能実習見直し 速やかに制度の廃止を

 もう小手先の見直しでお茶を濁すことは許されない。

 外国人の技能実習、特定技能の両制度の見直しに向け、政府の有識者会議が検討を始めた。

 国内外から「使い捨て」との批判が強い技能実習は速やかに廃止し、海外から労働者を適切に受け入れる制度を整備すべきだ。政府が目指す「外国人との共生社会」実現につなげる議論を求めたい。

 新興国への技術移転による国際貢献を掲げ、労働者を受け入れてきた技能実習制度は、創設から来年4月で30年になる。

 だが、実態は異なる。労働環境が厳しい業種の人手確保に利用され、賃金未払いや長時間労働などが後を絶たない。理念と懸け離れているのは明らかだ。

 2017年に技能実習適正化法が施行され、実習生の権利保護策が講じられた。しかし、いまだ過酷な環境に耐えかね、逃げ出す実習生が少なくない。

 一方、特定技能は労働力不足を補うため、19年に導入。建設や宿泊など12分野で転職の自由や家族の帯同も認めるが、技能実習と同じく待遇などへの不満が根強い。

 同会議のおとといの初会合で、技能実習を「廃止すべきだ」という意見に対し、「帰国後に国際貢献をしている実態もある」との主張もあったという。

 ただ、多くの実習生が来日時、母国の送り出し機関などに高額な仲介料を払い、借金を背負っている。国連の人種差別撤廃委員会は20年、借金返済のため労働を強いられる「債務労働」のような状況だと指弾。国連の自由権規約委員会も先月、強制労働の被害を適切に認定し、加害側を処罰するよう日本政府に勧告した。

 政府は来年秋ごろにまとまる最終報告を踏まえ、制度設計を進める方針だが、悠長過ぎないか。

 急激に人口減少が進む中、労働力不足はさらに深刻化する。

 約35万人に上る技能実習生が期限付きで滞在し、農業や建設業など国内産業を支えているにもかかわらず、政府は定住を見据えた外国労働者の受け入れについて本格的な論議を避けてきた。

 両制度ともベトナムやインドネシアなどアジア出身者が多くを占める。急激な円安に伴う賃金目減りもあって、昨今は日本行きを敬遠しがちというのも気がかりだ。

 持続可能な日本経済に、外国人労働者は欠かせない。優秀な人材を確保するには、定住も視野に入れ、結婚や育児を含め安心して暮らせる環境が求められよう。

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