なぜ放置したままなのか…静岡豪雨災害から2ヵ月、進まぬ復興、堀潤の悲痛な叫び

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。12月7日(水)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、キャスターの堀潤が豪雨災害から2ヵ月が経過した静岡県葵区から被災後の現状をレポートしました。

◆被災から2ヵ月、町は一見平穏なものの…

9月23日夜から24日朝にかけて、台風15号による影響で静岡県内では記録的な大雨を観測。川が氾濫し、広い地域で浸水するとともに、一部の地域では土砂崩れが発生するなど甚大な被害に遭いました。

堀は、その数日後にJR静岡駅から車で20分程という葵区の被災した現地に入り、取材。それから2ヵ月が経過し、復旧の目途さえついていないという地域もあるというなか、住民たちの暮らしはどうなっているのか、堀が静岡県葵区を再び訪れました。

当時氾濫した内牧川には、決壊部分を塞ぐ土のうが残っているものの、前回取材した住宅地を訪れてみると、道路を埋め尽くしていた土砂はなく、瓦礫などもほぼ撤去されていました。

一見、町は平静を取り戻しているように見えますが、住民の方々に話を聞くと、まだまだ見えにくい課題があるといった声が。例えば、災害発生から2ヵ月経つにも関わらず、内牧川はコンクリートなどによる補強はなく、川底も上がったまま。もしもまた嵐が来たときには「再び溢れ出してしまうのではないか」という不安が拭えていない現状を堀は伝えます。

さらに、同じ葵区でも被害の爪痕が大きく残っている場所があるものの、それを知らない住民もいると言います。それは「油山温泉」という地域で、今回、堀が話を伺ったのは、油山温泉で温泉宿「元湯館」を営む海野さん。

宿の中を見せてもらうと、その光景に堀は言葉を失います。というのも、いまだ1階部分は近くの油山川の氾濫で流れ込んできた土砂に加え、瓦礫や流木で床が見えません。

そして、本来は旅館と油山川との間には道路があったものの、それも川の氾濫で飲み込まれ通行不可。これにより復旧作業が進まず、現在も土砂が建物の中に残ったままだと海野さんは話します。

こうした状況が続くと、再び嵐が来ようものならさらなる惨事が容易に予想されますが、「川を元に戻さないことには先へは進めない」と海野さん。さらに「山間部は道も狭く、重機やダンプなども投入できない。なんとか梅雨までには川だけでも戻したいと土木業者と話しています」と現状を語ります。

復旧が滞り、営業もままならず、歯痒い思いをしている海野さんですが、それでも今まで来てくれたお客さんや応援してくれる方々のためにも、復旧に向けて一歩ずつ前に進む努力を続けるとしています。「この旅館に対する思いは私たちだけのものではなく、泊まりに来てくれたみなさまが思い出を持って旅館に対して接していただいているので、その思い出を少しでも残していけたら」と胸の内を明かしてくれました。

◆なぜあの状況を放置するのか…堀の悲痛の叫び

被災当時、現地の様子はメディアであまり報道されず、被害実態も明らかになっていませんでした。そうしたなか、海野さんをはじめ被災者がSNSなどに被害状況を投稿。そうした取り組みにより徐々にメディアでも報じられたことでボランティアが集まるなど支援の輪が拡大。

9月に堀が取材した際、自宅1階の床まで浸水していた住民の町塚さんは、そうしたボランティアのおかげで先日ようやく改修工事が進められるようになったそうです。

今回、厳しい現状を目の当たりにした堀は「2ヵ月も経っているのに、なぜあの状況を放置するんですか! 民間の事業者で直せる範囲じゃないですよね」と行政に向けて訴えます。

民間事業者がなんとか復旧させようと奮闘しているものの、大元が改善されない限りは危険が続く現状を心から案じ、「海野さんの奮闘が届いてますか? なぜ地元でも知らないという声があるんですか? おかしいですよね。すぐに動いてほしい。大切に守ってきた旅館が目の前で朽ち果てるのを見守るしかないなんておかしい。ぜひ届いてほしい。そういう思いで取材をしました」と強い口調で語ります。

スタジオにいる慶應ビジネススクール2年(MBA)の池田颯さんからは「(これほどの)甚大な被害があったにも関わらず、なぜ行政からのサポートがないのか」との質問が。堀は「今後、行政側の取材を重ねていきたいが、なぜという思いが先行する」と言いつつ、忸怩たる思いがある様子。

被災時、海野さんは役所に電話するも深刻な状況は伝わらず、お客さんや家族を守るべく現状をSNSで発信することで救助に結びついたことに堀は触れつつ、「結局、初期段階では自助でしか命を守ることができなかった」と嘆きます。そして「ただ、その後の公助、共助、時間がかかりすぎじゃないか。ここは検証しなければいけない。静岡市と静岡県との連携不足も含め、改善しないといけない」とも。

また、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、政治のもたらすネガティブな影響を案じつつ「気候変動が加速していくなかで、こうした甚大な災害が増えていくし、今後インフラが老朽化していくことは他の地域でも起き得る」とさらなる問題を危惧。「まずは復旧だと思うが、その後はいかに他の地域の教訓にするか考えないといけない」と述べます。

堀によると、海野さんも今回の災害を受け「これまでは起きなかったような災害が起きている」、「予期できない災害が起きるのが今、そういうことも全国の人に伝えたい」とも話していたそうです。

◆堀が視聴者に訴える…今、みんなにできること

この日は、大きな被害を受けた町塚さんにも直接話を伺うことに。まずは被災されたときのことを聞いてみると「自然の怖さ、水の怖さをすごく感じました。(被災直後は)ただ呆然としてしまったが、ボランティアの方にいろいろと支援していただいて、そういうことは知らなかったので、深く感謝しています」とボランティアへのお礼を述べます。

そして、油山のことについては全く知らなかったそうで「山ひとつ向こうのことですが、何も伝わっていなかったのは、本当に不思議な気がしました」と実感を語ります。

浸水した自宅は、床底にこびりついていた泥をボランティアが2日間かけて取り除き、消毒してくれたそうですが、問題はそれだけではなかったとか。壁の断熱材にも水が浸透していたのです。放置しおくとカビが生え、体にも悪影響を及ぼします。断熱材を取り出すにも費用がかかるため、町塚さんはボランティアの方に相談。

すると、専門のボランティアの方がいて、断熱材を取り出してくれたそうで「本当に地獄で仏にあったような思いでお願いしました。そしたら2日間、それこそ休憩もなく(動きを止めるのは)昼食をとるときぐらいで、朝から17時頃まで壁を切り取り、中の断熱材を出してくれたんです。本当に感謝しました」と町塚さん。

そのボランティアは、堀も知っている方だったようで、その方によるとこうした壁の内側や床下のことなどを楽観視する人は多く、ボランティアニーズそのものがこの地域で掘り起こされていないと心配していたとか。また、そもそも断熱材は水を含んだまま放置しておくと危険にも関わらず、壁を捲らないとわからないため放置されがち。そうしたことも防災情報として「もっと伝えるべき」とも言っていたそうです。

最後に町塚さんは「こうして報道していただければ行政のほうにもわかってもらえて、なんとか目処が立つんじゃないかと希望が湧いてきました」と感謝していました。

現地の方のリアルな声に、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは「こうした報道こそ行政を変えるものがある」と感じたと言い、「専門技術もなく、他所者の我々に何ができるのか、常に考える姿勢でいたいなと思った」と語ります。

また、池田さんからは、現地の堀に「油山温泉では11月末までクラウドファウンディングもしていたが、今、僕たちや視聴者にできることはあるのか?」という質問が。すると堀は、川や道路の復旧などは市民がなかなか入り込めないものの、できることは「2つある」と言います。1つは"知ること・伝えること”で「拡散してほしい、葵区の現状を、みなさん知らせてほしい」と切望。そして、もう1つは海野さんの旅館でもインターネット上でさまざまなものを販売しており、「そうしたものを購入することで繋がっているというメッセージにもなる」と堀。「クラウドファウンディングも多くの方が協力してくれたが、これから。息が長い支援が必要。ぜひ力を貸してください」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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