ラリージャパンは2022年の教訓から学ばなければならない。FIAからの前代未聞の声明と重大な欠点/海外記者WRCコラム

 来季2023年シーズンのカレンダー発表と同時に、2年続けての開催が決定したラリージャパン。WRC世界ラリー選手権の日本ラウンドとして、12年ぶりの復活を果たした2022年大会は、勝田貴元の表彰台獲得というポジティブな話題で盛り上がった一方、さまざまなアクシデントや事件も発生した。そんなラリージャパン2022は海外ジャーナリストの目にどのように映ったのか、アメリカのラリーメディア『DirtFish』で編集委員を務めるデイビッド・エバンスが振りかえった。

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 私はずっと日本が好きだ。冬に妙高高原の素晴らしい白樺林のなかを、深く積もったパウダースノーを静かに踏んで歩くことから、渋谷の交差点を渡る無数の人々のうちのひとりになることまで、私は日本が大好きなのだ。

 3シーズン連続で、希望が実現しなかったことに私はがっかりした。ラリージャパンは復帰の準備ができているように見えたが、スケジュール調整の失敗と世界的なCOVID-19パンデミックの2年間によって開催は消えてしまった。そしてようやく先月、日本はWRCに戻ってきた。前回2010年に北海道で開催された時と比べ、大きく異なる形で戻ってきたのだ。

■日本のラリーファンは熱心で情熱的

 豊田市を拠点にイベントを行うことは、当然であると同時に、素晴らしい選択だった。そして、その試みはうまくいった。開催期間中の豊田スタジアムのサービスパークは木曜日のシェイクダウンから連日満員だったのだ。この事実は、他のすべての世界選手権ラウンドを見ても非常に稀なことだ。

 ステージやリエゾンセクション(公道を走る移動区間)、サービスパークに並んでいるファンの数はこのイベントの真のハイライトだった。日本のラリーファンは世界的に見ても熱心で、情熱的で、感情のこもったファンだ。今回、多くの日本のファンをふたたび目にすることで、我々がこれまでどれだけ大きなものを失っていたのか実感した。

 私はいつものように、DirtFishの同僚たちとできるだけ多くのステージを走ったが、本当にいろいろなことを発見した。美しいセクションがあり、興味をそそられるセクションがあった。そして語るべきは、旧伊勢神トンネルだ。このトンネルはとにかく最高で、レッキの後で選手たちの話題をさらった。それだけに、2回目(SS2の再走ステージであるSS5)の走行時に、トンネルの前でステージが短縮されたのは残念だった。

11月10日(木)のデイ1から13日(日)のデイ4まで、サービスパークは連日多くのファンが訪れた

■安全対策はもちろん、ファンのための改善も求める

 ただ、今回の開催で安全対策については疑問の余地があると思われた。特に、組織と手続き上の変更についてだ。とりわけ、金曜日の午前中に炎上したダニ・ソルドのマシンのところへ緊急サービスが到着するのに長い時間が掛かったことと、サミ・パヤリがすべてのドライバーにとっての悪夢に遭遇したことがある。彼はSS4で前方から、一般車が対向車として向かってくるのを見たのだ。

 FIA国際自動車連盟がラリージャパンの安全計画について、これ以上の違反が出た場合は、「直ちにイベントを中止する」との声明を出したことは、現代のこのスポーツでは前代未聞のことだった。このことからも今回の日本のWRC復帰についてはいくつか重大な欠点があり、2023年のイベントまでに対処が行われる必要がある。

 さらに、いくつかのことが整理される必要がある。ひとつはセバスチャン・オジエ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)が「我々はラリードライバーだから、速くドライブすることを好んでいる!」と述べたように、スピード域の高いステージをさらに加えることだ。我々は愛知県にそうした道路があることを知っている。

 より多くのファンがステージに行きやすく、その過程で多額の料金を取らないようにすることもそうだ。報道によるとファンたちは彼らにとってのヒーローたちの走行やサービスパークでの様子を見るために、移動手段に高額な料金を支払う必要があったという。

 先ほども言ったように、私は日本を愛しており、日本がチャンピオンシップに戻ったことをうれしく思った。しかし、この美しい国でのWRCラウンドを適正なレベルに引き上げるには、2022年の教訓から学ばなければならない。

 日本がカレンダーに戻ってきた今、そこに留まるためにはあらゆる努力が行われなければならない。

旧伊勢神トンネルを走行するサミ・パヤリのシュコダ・ファビア・ラリー2エボ
スペシャルステージ(SS:競技区間)における中高速域の割合は少なく、多くが低速でツイスティな区間だった

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