性教育 明るく前向きに  西彼長与町の医師・岡田恭子さん 「子の幸せに必要不可欠」ブログ、イベントなど情報発信 

趣旨に賛同した友人らと共にイベントを行った岡田さん(左から2番目)=長崎市茂里町、みらい長崎ココウォーク

 ブログやイベントなどで性教育に関する情報発信をしている「ママの保健室@長崎」代表で西彼長与町在住の医師、岡田恭子さん(42)から、本紙情報窓口「ナガサキポスト」に「性教育に困るお母さんたちの力になりたくて活動しています」と情報が寄せられた。「性教育は子が幸せに生きるために必要不可欠。明るく前向きに取り組んでほしい」と語る岡田さんの活動を取材した。
 ■“本の力”活用
 11月19日、長崎市茂里町のみらい長崎ココウォークで開かれた親子向けのイベント「ながさき井戸端パーティー」(同市中央地域センター主催)。岡田さんはイベントの一環で、性に関する本や絵本の展示などを担当。約60人の親子が会場を訪れた。
 岡田さんは「正しい知識のよりどころになり、親子で言いづらいことを代弁してくれる側面もある」と、性教育に関する本を親子で一緒に読んだり、子の目につくところに置いて読むことをさりげなく促したりするなど“本の力”を活用することを薦めていた。

本を広げる親子らで賑わうイベント会場

 ブース内の絵本を熱心に読んでいた同市の奥野結璃(ゆいり)ちゃん(6)の母、佐智代さん(34)は「性のことを娘にどう伝えるか困っていた。本の存在は心強い」と納得した様子だった。
 ■4人に1人困る
 岡田さんは長女(14)と長男(12)の母親。長女が小学4年のとき学校から配布された生理用ナプキンを見て「わが子へ生理についてどう伝えてよいのか分からない」と焦ったという。さらに、望まない妊娠などで病院に駆け込む患者を目にして「正しい知識があれば、つらい思いをしなくて済む」と痛感。日本思春期学会の性教育認定講師の資格を取得後、2年程前から活動を始めた。
 8月の厚生労働省調査によると、未就学児の親の4人に1人が子の性を巡る言動への対応に困った経験があり、情報源をインターネットに頼るなど、正しい知識や適切な方法を学ぶ機会も少ないという実態が浮き彫りになった。
 親世代が子への性教育に難しさを感じる理由として、岡田さんは「性=恥ずかしい、いやらしい、汚いものと認識している」と指摘。「親世代は性をタブー視する親や学校から、正しい知識を教わってこなかった。性について“触れてはいけない”と受け止め、アダルトビデオやインターネットなどから得た偏った知識、不確かな情報に頼るしかなかったのではないか」と分析する。

 ■恥ずかしがらず
 子への性教育について国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「性交や性感染症などの体の発達」だけでなく、人間関係やジェンダーなどより幅広い観点で5歳から発達段階に応じて学ばせる「包括的性教育」を指針として示している。
 岡田さんは「性教育はいわば人権教育。決して下品でも恥ずかしいことでもないとまず知って」と力説。「例えば、子の『赤ちゃんはどうやってできるの?』という質問に『そんな質問してはいけない』『鳥が連れてきた』などとはぐらかすのはNG。『男の人の体にある精子と女の人の中にある卵がくっついて赤ちゃんになる』など、科学的に正しい知識を理解度に合わせて少しずつ教えてほしい」とした。
 活動の中で「子と一緒に学べて楽しい」など「性教育を前向きにとらえ始めた親の声をたくさん聞いた」と言う。「まずは性のことを親がポジティブにとらえ、正しい知識を積極的に身に付けて」と話した。
 岡田さんの活動の詳細はブログ「ママの保健室@長崎」で。

岡田さんが特に薦める4冊。左から「だいじだいじどーこだ?」(大泉書店)「ようこそ!あかちゃん」(大月書店)「げっけいのはなし いのちのはな」(みらいパブリッシング)「おうち性教育はじめます」(KADOKAWA)

© 株式会社長崎新聞社