弟の代わりに走った聖火リレー

2日間で総勢167人がトーチで炎をつなぎ、岡山県内での日程を終えた東京オリンピックの聖火リレー。最終ランナーとして聖火皿に火をともしたのは、久米中学校3年生の中野望羽さん(15)=宮尾=だった。「あっという間だけど、大役を務めた達成感がある」。
この日の姿を一番見てほしかったのは、小学校4年生の弟(10)だった。
腎臓病の一種で難病にも指定されるネフローゼ症候群を抱え、運動が制限される日々を送る。聖火リレーランナーの募集が始まる際、そんな弟が「走ってみたい」と言い出したという。前向きに挑戦しようとする姿に望羽さんはうれしくなったが、中学1年生以上という年齢制限もあって応募はかなわなかった。そこで「私が代わりに走る」と決心した。
リレーは結局、新型コロナウイルス感染拡大を受けて公道の使用を中止し、走らない「トーチキス」の式典に変更。それでも、「悲しい思いをする人がいる中でオリンピック、パラリンピックは夢や希望のある大会だと自分なりに伝えられた」と胸を張る。
父親の和樹さん(42)=院庄小学校教諭=は「本番を迎えるまでは期待と不安が入り混じった様子だったが、家族の思いを背負い、立派にやり遂げてくれた」と我が子をたたえた。
式典が終わり、父親が運転する車で帰宅した。「お姉ちゃん、見たよ」。望羽さんがトーチを手にする姿をテレビ中継で目にした弟がうれしそうに言った。日ごろはけんかもするが、テレビゲームなどをして遊ぶ2人。聖火リレーを終え、きょうだいの絆はより深まったと感じている。

美作地域最高齢ランナーの植月さん

西粟倉村出身でパラリンピッククロスカントリースキー金メダリストの新田選手

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