【DeNA】大田泰示が振り返る移籍1年目 原点は東海大相模時代の恩師・門馬敬治氏からの言葉

サヨナラ勝ちを決める殊勲打を放つなど勝負強い打撃を見せた大田=横浜

 横浜DeNAの大田泰示外野手(32)は、試合に出ようが出まいが、常に先頭で声を張り上げた。「一体感を持ってひっくり返した試合が面白い。それがベイスターズらしさ。ベンチが同じ方向を見てやることは大事」。3球団を渡り歩いたからこそ、そのマインドは育まれた。地元の東海大相模高出身のスラッガーが移籍1年目の今季を振り返る。「何歳になっても野球は楽しいな」。

 10月10日、阪神とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦の最終回。大田はベンチ裏で代打の出番を待っていた。

 「準備はしていた。一也さん(藤田)が呼ばれて、『頼む決めてくれ』という思いで背中を見ていた」

 本塁併殺で最後の打者となり、ショックの色を隠せなかった40歳の藤田を救ったのは、大田がかけた一本の電話だった。

◆ベテランが先頭に立つ

 「ここで野球をやめてほしくないと思った」と大田。屈辱にまみれたナインを見届けたその胸に何が去来したか。今シーズンの躍進を生んだチームの団結力。中心に立ち、仲間に寄り添う大田の姿はその象徴だった。

 思い起こすのは日本ハム時代。相手ベンチで絶え間なく味方を鼓舞するソフトバンク松田の姿があった。「ベテランがベテランの風を吹かせてベンチにいるのと、率先して先頭に立つのとは全然違う。松田さんはその役回りをしながらレギュラーで引っ張っていた」

 今オフには、その松田も同じセ・リーグの巨人に移籍。「仲良く話してもらっていたし、学ぶものもたくさんあった」と再び成長の場につなげる。

◆熱い心でチームを支え

 来季でプロ15年目を迎える。ベテランに差し掛かってこそ、立ち返る原点がある。

 「一日一生」。母校の恩師だった門馬敬治氏から当時ミーティングで伝えられた言葉だ。「明日やればいいやという気持ちではなく、今やろうと。年を重ねるごとに言葉の重みを感じるようになり、手を抜いたら自分に返ってくるっていうのは痛感した」。だからこそ、試合前の早出練習も若手と肩を並べ、当たり前のようにバットを振ってきた。

 冷静に自身を省みて、熱い心でチームを支える背番号0。「ハマスタで優勝し、横浜、神奈川、全国のベイスターズファンが盛り上がる。そういう瞬間を味わいたい」。まだまだ、夢は尽きない。

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