2022年も残すところ10日あまり。「2022年現場は今」と題し、2022年の重大ニュースを振り返ります。第1弾は、9月に静岡県牧之原市のこども園で園児がバスの中に置き去りにされ死亡した事件です。悲劇を絶対に繰り返さない、幼い命を守る取り組みが静岡県内でも広がっています。
事件は、2022年9月5日、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で起きました。通園バスに乗っていた女の子(当時3)が、バスの中に約5時間にわたって取り残され、重度の熱中症で死亡しました。バスの中の温度は40℃を超えていたといいます。
<群馬県から献花に訪れた元・通園バス運転手>
「運転席に座っていられないくらい暑いんだよ。10分、15分前にエンジンかけて、クーラーかけて冷やしてからじゃないと園児は乗せられない。それなのにそこに…考えられない。かわいそ過ぎる」
警察は園側のずさんな安全管理が事件につながったとみて捜査。事件発生から3か月。警察は12月5日、バスを運転していた増田立義元理事長や担任ら4人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。
バスの中に園児が取り残されていないか、確認しなかった元理事長らの過失に加え、登園を確認しなかった担任らの過失が重なり、悲惨な事故につながったと判断しました。
<小倉将信こども政策担当大臣>
「今回、しっかり対策を講じてもらうことによって、二度と同種の事故が起きないような体制ができるのではないかと思っております」
事件を受け、政府は2023年4月から通園などに使われるバスへの安全装置の設置を義務付けると発表しました。
<園でバス出迎える職員>
「おはようございます」
<バス内の職員>
「全部で17人です」
<園で出迎える職員>
「17人ですね」
「よん、ごー、ろく…」
3台の通園バスを運行している静岡県藤枝市の私立幼稚園です。この園では、2021年、福岡県内の保育園で起きた園児の置き去り事件を受け、安全運行のためのマニュアルを作成。川崎幼稚園での事件翌日、運行マニュアルに新たな項目を加えました。
<藤枝順心高校付属幼稚園 鈴木季彦副園長>
「いま、バスは車庫に納車された状態ですが、このように子どもでも簡単な力で開けられるように、常に鍵を開けてあります」
車庫のシャッターも常に開放することに変更し、万が一のリスクに備えています。
また、静岡県富士宮市の自動車部品メーカーが開発している安全装置の実証実験に協力し、日々テストを続けています。
<藤枝順心高校付属幼稚園 鈴木季彦副園長>
「子どもの安全のためには、やり過ぎということはない。安全のために、何をしなければいけないのか、常に考えていきたい」
<常葉大学 木宮敬信教授>
「やるべきことを増やしすぎないことが一番大事。やらなくてもいいことまでやると自分たちの負担を増やす。むしろ、注意力を下げる」
事件があった牧之原市では11月7日、安全教育の専門家を講師に招き、保育施設で働く職員の研修会を開きました。市は研修会を継続的に開き、安全装置などのハードだけに頼らず、職員の意識も高めていく方針です。
川崎幼稚園を運営する学校法人榛原学園は11月、静岡県と牧之原市に改善報告書を提出しました。通園バスは、3か月以上経ったいまも「保護者からの要望がない」として、運行を再開できていません。
大人たちの慢心が、子どもたちの命を危険に晒しています。同じ悲劇を繰り返さないために、子どもと関わる大人たち全員が、命を守るという強い意識を持つことを求められています。