専守防衛政策の転換、なし崩し 総理は否定

 岸田文雄総理は「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」を含む、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3文書を閣議決定後の記者会見で、ジャパンタイムズの記者から「3文書への反撃能力の保有記載に、国内外には専守防衛政策の転換点になるのでは、との懸念がある。状況によってはなし崩しになる可能性もあるのではないか」と質問され「(反撃能力の保有も)専守防衛の考えに則っており、今後とも、専守防衛は堅持していく。ご指摘のような懸念についても今後とも丁寧に答えていきたい」と専守防衛政策の転換、なし崩しを総理は否定した。

 岸田総理は「専守防衛とは相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その対応も自衛のための必要最小限にとどめ、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、これは憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢というものであり、我が国の防衛の基本的な指針であり、今後も変わらないと考えている」と述べた。

 岸田総理は「安倍政権において成立した平和安全法制によって、いかなる事態においても切れ目なく対応できる体制が既に法律的、理論的に整い、今回、新たな3文書を取りまとめることで実践面からも安全保障体制を強化することとなった。3文書とそれに基づく安全保障政策は戦後の安全保障政策を大きく転換するもの」と語った。

 当然ながら「もちろん日本国憲法、国際法、国内法の範囲内での対応であることは言うまでもない」と説明をつけ「非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは、今後とも不変。こうした点について、透明性を持って国民に説明するのみならず、関係国にもよく説明し、理解をしてもらう努力を続けていく」と記者団の問いに答えた。

 なお具体的な防衛力整備のための費用に「今後5年間で緊急的に防衛力を抜本的に強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施する。2027年度には抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取組みを合わせて、GDP(国内総生産)の2%の予算を確保する」としている。(編集担当:森高龍二)

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