地元産業活性化につなげたい 埼玉工業大学の研究シーズを埼玉縣信用金庫の若手職員が視察

2022年11月17日、埼玉工業大学と産学連携協定を締結している埼玉縣信用金庫と一般社団法人さいしんコラボ産学官は、埼玉工業大学の研究シーズ把握のため研究施設などを視察に訪れた。

今回の視察は、多くの農作物の生産において全国トップクラスを誇る埼玉県の農業ニーズに対し、埼玉工業大学の研究シーズを適用する可能性を検討する目的で企画された。地元金融機関である埼玉縣信用金庫から、県内各地の若手職員総勢34名が参加した。

当日は、国内の大学としても先端的な研究として知られる自動運転をはじめ、再生可能エネルギーの活用に向けた蓄電池、バイオマスによる循環型農業の共同研究、そしてDX時代のものづくり発信基地として2022年にオープンした機械工学科の総合実験実習棟を視察した。

サステナブル農業(循環型農業)に関しては、埼玉工業大学と埼玉縣信用金庫が地元深谷市の企業と取り組んでいる牛糞の堆肥化・高付加価値化について、その堆肥製造設備とバイオガス発電設備を視察。生命環境化学科の本郷照久教授が堆肥製造の発酵過程について説明したほか、バイオガス発電の設備を持つ株式会社セキネの篠﨑壮登氏が、バイオガス発電と併設する堆肥製造の密接な関係やバイオガス発電の残渣が堆肥の高付加価値化に貢献していることなどを解説した。

また、自動運転技術開発センター長の渡部大志教授が自動運転技術の開発の現状や、全国各地での実証実験の参加実績などについて説明し、同大学のスクールバスとしても一部運用されている自動運転バスに体験試乗した。自動運転に関しては、今後、地元地域の山間へき地の輸送手段の確立や農業分野への応用が検討課題となっている。

ソーラーパネルとレドックスフロー蓄電池を組み合わせて館内電力を賄う実証実験を進めているものづくり研究センターでは、生命環境化学科・松浦宏昭教授より、原理的に火災の心配も無く安定して長期利用が可能なレドックスフロー電池の特徴について説明を行った。

最後に2022年から利用が始まった機械工学科総合実験実習棟を、中島慎介専門員、向井竜二係長が案内した。最先端の研究から現在製造現場で使用される設備まで豊富に取り揃えられた設備群は、学術的研究から地元企業支援まで幅広く利用可能となっている。

視察を終えた若手職員たちからは活発な質問が多数出て、説明を担当した各研究者や教員との情報交換が予定をオーバーして行われるなど各プログラムにとても関心を持ち、最新の研究内容を積極的に理解しようとする光景が見られた。

埼玉工業大学は、埼玉縣信用金庫及びさいしんコラボ産学官と産学連携協定を締結して連携してきたが、地元企業との連携においては「産学官金(金融)」の連携が必須となる。今回のような研究シーズ視察を通じて、埼玉縣信用金庫が技術面・財政面から地元産業とのパイプ役・指南役を担う存在になることが大いに期待される。

参考:【埼玉工業大学】埼玉縣信用金庫様が地元地域の産学連携強化のため本学を視察

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