誰にも相談できず孤立する女性を支援 予期せぬ妊娠や出産をめぐる悲劇を防ぐ仙台市のNPO法人

予期せぬ妊娠や出産をめぐり、誰にも相談できずに孤立する女性を支援する仙台市のNPO法人です。設立から2年半。女性からの悲痛なSOSは後を絶ちません。

キミノトナリ代表理事東田美香さん「はい、今週もやってまいりました。キミトナラジオの時間です。皆さん、こんばんは」
予期せぬ妊娠や困窮した状況下で出産する女性を支援する、仙台市青葉区のNPO法人キミノトナリの代表理事、東田美香さん(53)です。
キミノトナリ代表理事東田美香さん「どこへでも出前授業に行きますので、ぜひお聞きの方の中で来てほしいなという方は、メールをくださると良いなと思います」

電話やSNSなどで相談を受け付けているほか、週に一度、太白区のコミュニティーFMで性に関する番組を担当しています。
キミノトナリ代表理事東田美香さん「(女性を取り巻く)状況がなかなか改善しないなと思っています。(団体設立当初)妊娠9カ月で病院にかかっていませんという(20代前半)方からご連絡をいただいて、一緒に病院に行って、そこから1週間後に生まれた方がいらっしゃるんですよね。(連絡をもらえなかったら)危険な自宅分娩とかになっていたかもしれないなって」

全国から相談が寄せられる

東田さんは、2020年6月に友人の弁護士や助産師や社会福祉士ら約20人でキミノトナリを設立。10代から20代を中心に全国から悲痛なSOSが寄せられます。これまでの相談は1300件以上。

「検査薬を使ったところ、陽性。LINEしか知りません」
「陽性反応が出ました。16歳、高校2年生です」
「妊娠検査薬で2回検査して陽性と反応が出ました。彼氏とは、すでに別れています。どうしたらいいか分かりません」
「妊娠検査薬で妊娠が発覚し相手に伝えたところ、LINEをブロックされ困っています」
キミノトナリ代表理事東田美香さん「(相談件数は)全く減っていないですし、むしろ団体ができてすぐの頃より、相談件数はとしては若干増えている」

キミノトナリでは、相談を受けるとアドバイスだけではなく、病院や行政窓口への付き添いなど直接的なサポートもしています。
キミノトナリからの支援を受けている、宮城県出身の20代の女性Aさんです。10代だった2020年秋に妊娠が発覚しました。
支援を受ける女性Aさん「その人(当時の交際相手)とはアプリで知り合って、(妊娠発覚前に)けんか別れしたというか、連絡先も消してしまったので、本当に頭が真っ白になった」

直接的なサポートも

家族や親戚とは疎遠で、頼ることができなかったAさん。腹部エコー検査で赤ちゃんを見て産みたい気持ちがありましたが、一人で育てることを思うと産まない選択も考えたと言います。
支援を受ける女性Aさん「自分にはほぼ何も無いみたいな状態だったので、本当におろすしかないなと思っていたので、ずっと泣いてました」

そんな中で知ったのが、キミノトナリでした。行政の支援を受けられることを知り、産むことを決意。2021年春に女の子を出産しました。現在は、行政から住まいや育児の援助を受けながら、宮城県で暮らしています。
支援を受ける女性Aさん「最近、洗濯物を干してたら娘が、どーじょどーじょって言いながら、一つ一つ(洗濯物を)手渡ししてくれて、(子どもは)本当に宝というか、産むっていう決断をしたのは、間違ってなかったかなって思います」

厚生労働省によると、予期せぬ妊娠や経済的困窮など出産前から支援が特に必要と認められる特定妊婦は、2020年までの10年間で8倍に増えています。
キミノトナリでは11月から週に一度、国分町や仙台駅周辺などの繁華街で夜回り活動も始めました。路頭に迷う女性がいないか声を掛け、悩みがあれば相談スペースで話を聞きます。
夜回りする相談員「今までの経験と勘でしか言えないんですけど、この子は困っているなっていうものがあるんです。何となくみんなSOSを出しているんです」
キミノトナリ代表理事東田美香さん「多分、これから毎週回っていく中で、あ、あの人たちだねというふうに分かっていただけると思うので、相談窓口です。何かお困りですか?では出てこない本音が、ここでお茶とかお菓子を囲んでみんなでくだらない話をする中で(相談も)出てくると思う」

夜回り活動も

予期せぬ妊娠や出産をめぐり、孤立する若い女性たち。東田さんは、悲劇を防ぐためには、若い世代への性教育が大切だと考えています。
この日は、宮城県名取市の高校を訪れ、定時制の生徒たちに出前授業を行いました。
キミノトナリ代表理事東田美香さん「(妊娠検査で)陽性が出ちゃいました。どうしましょうってなる日も来るだろうなとは思っています。でもね、そういう時に一人じゃなくってもしそういうことがあったとしても、絶対私たちが一緒に何とかするから大丈夫だよっていうメッセージを伝えたい」
女子生徒「最近、中学校の友達に連絡を取ったらそういうことになっていて、(妊娠してしまっていて)誰にも相談できないってなってる人は1人いたので、今回話をしてあげようかなって思っています」
男子生徒「自分なりに少しでも情報などを集めて、性に対して接してくことが大事だと思いました」

女性からの悲痛なSOSに耳を傾け悲劇を防ぐ。
キミノトナリ代表理事東田美香さん「今、まだ誰ともつながっていなくて、困っている女の子を一人でも多くご連絡いただいて、一緒に考えていきたいなと思っています」

キミノトナリへの相談は無料で、ホームページやLINE、電話で受け付けています。電話は050-3503-7707で、火曜・木曜・土曜の午後5時から午後10時までです。匿名での相談も可能です。

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