福井大学の60代女性教授が国際学術誌に投稿した自分の論文の「査読」に関わったとされる問題で、福井大学は12月20日、2015~21年に掲載された論文6本について不適切な「査読操作」があったとの調査結果を公表した。学術誌の出版社が既に撤回を表明している2本を除く論文4本の取り下げを勧告、今後学内で処分を検討する。
⇒福井大学が論文6本の「不適切」認定
福井大学が設置した調査委員会の末信一朗委員長(理事)ら3人が福井県福井市の同大学文京キャンパスで会見した。
調査委の報告書によると女性教授は、査読を担った千葉大学の男性教授、金沢大学と浜松医科大学の元教授の3人から依頼を受け、論文の評価に関する査読コメント案の作成を研究チームの論文共著者に指示し、査読者3人に提供した。3人はコメント案を利用し出版社に提出し、女性教授は出版社から届いたコメントに回答する形で、論文6本の査読を操作した。女性教授は学術誌側に査読者3人を推薦していたという。
調査委のヒアリングに対し、千葉大学教授ら3人の査読者はいずれも「多忙だった」と回答。女性教授は「自分より高名な教授であり、忙しいことも分かっていた。査読に関する労力を少しでも軽減すべきだと思った」と答えたという。
査読は学術誌に投稿された論文を同じ研究分野に精通した研究者が評価する仕組み。一般的に査読者の選定は匿名で行われる。
調査委は「研究者倫理から逸脱した行為であり、査読審査プロセスにおける不適切な行為」と認定。末委員長は「守るべきルールを軽視した」と批判した。一方、女性教授から査読操作の働きかけや計画性は認められず、研究データの改ざんなど研究成果をゆがめるものではないとした。
福井大学、千葉大学、金沢大学、浜松医科大学に大阪大学を加えた5大学は、子どもの発達などを研究する連合大学院を形成している。