<社説>給食費のコスト増 国の施策で無償化実現を

 物価高騰で県内市町村が学校給食費のコスト増に苦慮している。無償化を実現した自治体でも2023年度は保護者負担に戻る可能性もある。 各自治体で経費を抑え込むために工夫をしているが、給食の質にも影響しかねない状況だ。物価に左右されず、子どもの成長を保障するためにも給食の無償化を国が積極的に推進するべきだ。

 本紙調べでは県内41市町村のうち、17自治体で仕入れ先や調理法を変更することによって保護者負担を増やさないよう対応している。

 より安い食材にしたり、調理方法を変更したりと工夫しているものの、やりくりにも限界がある。さらに物価高が続くことになれば、給食の質にも関わる。

 無償化を実現している19市町村の中には、新型コロナウイルス対策で国が実施する地方創生臨時交付金を充てているところが6自治体ある。来年度の交付がなければ、保護者への負担となってしまう可能性があるという。

 給食費を別財源で負担して無償化を実現している自治体では値上がり分についても補?(ほてん)して、無償を維持する意向のところもある。

 保護者負担は避けられるが、財政負担は増加する。別の行政サービスに充てることのできる予算を給食費に振り向けるのだから、住民への影響が全くないとは言えない。

 近年では地元産品を用いた地産地消の献立など、食育の観点からも注目される給食である。沖縄大の喜屋武ゆりか講師によると、日本の子どもの肥満率は他国に比べて低く、背景に給食の実施があるとの研究もあるという。

 子どもの貧困が注目され、学校給食をほぼ唯一の栄養源としている児童生徒らがいることも分かった。給食の重要性や役割が見直されている。だからこそ、落とすことのできない給食の質である。

 学校給食法は施設の整備費や調理員の人件費は自治体、それ以外は保護者負担と定めている。

 しかし、憲法26条は義務教育を「無償」としている。食育の重要な機会であり、満足に食べられない子どもたちの貴重な栄養源であることを考えると、給食の無償化は憲法の理念にも合致するはずだ。

 政府は生活保護や就学援助で給食費を補助するとの立場だが、必要とする人が制度につながることができていない実態も指摘されている。

 交付金による補?といった付け焼き刃の対応ではなく、政府は無償化の実現、給食のさらなる充実に向けた施策を展開するべきだ。

 実施には5300億円程度かかるとの試算もある。来年度は約1兆円を積み増し、大増税も伴う防衛費の増額よりも喫緊の課題だ。

 原油価格や為替相場の変動に左右されず、安全な提供を継続することにつながる。貧困対策や子育て支援にも資することになる。

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