<ジモトピア>街見守る「巨人の手」 閑静な住宅街に隠れた名所 無添加にこだわる絶品パン工房も

紅葉の時期には見事に黄色に彩られる大イチョウの木。枝ぶりは巨人の手のよう=埼玉県さいたま市南区別所の真福寺

 JR武蔵浦和駅から600メートルほど歩いた路地沿いにある真福寺。寺の向かいに「逆さイチョウ」と呼ばれる大木がある。さいたま市の天然記念物に指定されており、四方八方に伸びた枝は下から見上げるとまるで巨人が手を広げたかのよう。幹には鍾乳石のようなこぶもあり古木の迫力を感じさせる。

 台地の端にあり、海がここまで迫っていた昔、舟をつなぐため、イチョウのくいを逆さに打ち込んだところそれが根付いたとする伝説から名付けられたという。高台に位置し、武蔵浦和方面の高層ビル群が見渡せる。巨人の手が街を見守っているようだ。

 住職の木村直人さん(65)は、「幹回りは5メートル以上で、今も増えている。大きいので宿り木ができるが天然記念物なのでそっと見ていくしかない」と教えてくれた。

 国道17号に出て、坂を下った交差点を東に行くとすぐ左に白幡沼沿いに続く白幡緑道がある。桜並木の下を歩く緑道は静かで歩きやすい。冬の時期は所々にあるツバキが赤い花を咲かせている。緑道の終点から東に坂を上り、大きな桜の木がかかる浦和商業高校の正門前に着く。

 この辺りは小さな谷が入り組んでおり、坂の上り下りが連続するような地形となっている。北へクランクに進むと、木々に囲まれた起志乃天神社に行き当たる。学問の神様として有名な菅原道真公の北野天満宮を勧請したと伝えられており、今は岸町公園となっている。

 その先の岸町公民館前から東向きに始まる馬場先通りの左に「無添加パン工房あきもと」がある。店主の秋本文春さん(64)が防腐剤、乳化剤などを使わず、時間はかかるが手作りにこだわったパンを焼いている。香りと食べた後もおいしさが口に広がる。

 通りをさらに進み右側の医院の先の小道に入ると、東に延びる岸町緑道がある。台地から下りてくる水を集める水路を暗渠(あんきょ)として造られた道で、人1人通るほどの細い道がJRの線路際まで続いている。緑道の脇に植えられた木々と家々の木が相まって緑が迫ってくるような所もある。線路沿いを北に10分ほど歩くと、にぎやかなJR浦和駅前が見えてくる。

 【メモ】無添加パン工房あきもと=午前10時~午後5時。木、日曜休み。電話048.822.1555

【左】ユニークな形の切り株パンを持つ秋本さん【右】ちょうど人1人通れる幅の道が続く岸町緑道

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