差別…5歳を育てる女性カップル、さいたまファミリーシップ制度に疑問 全国初?「子の意思確認」で市長は

さいたま市の担当者と意見交換する家族(手前)=13日午後、さいたま市役所

 埼玉県さいたま市のファミリーシップ制度で、5歳の息子を育てる市内の女性カップルが「差別的な内容で、改正を検討してほしい」と訴えたことについて、清水勇人市長は20日の定例会見で、記者の質問に「当事者の家族から意見を聞く大変貴重な機会だった。勇気を持って意見交換に参加していただいたと思うので、その声を真摯(しんし)に受け止め、より良い制度にしていきたい」と述べた。

 ファミリーシップ制度は、性的少数者(LGBTなど)のカップルと同居する子どもを公的に認める制度。市は今年11月、パートナーシップ制度の要綱を改正して導入し、「毎年1回、子どもの意思を確認する」と規定した。女性カップルが今月13日、市の担当者と意見交換して、「差別的」と改正を求めていた。

 清水市長は制度の改正について、「11月に(要綱を)改正したばかりで、今回の意見交換1回のみで改正することは考えていない」とした。一方で、当事者を含め多くの人たちの意見を聞くとして、「皆さんの声をしっかりと生かしながら、参考にしながら、制度をより良いものにしていきたい」と述べた。

 意見交換の場で市に提出された意見書には、「さいたま市が多様性を認める社会に後ろ向き」とも指摘されていた。清水市長は「決して多様性に後ろ向きということではない。子どもの権利を尊重しながら、制度を行っていく必要があると考えて、今回の形になった」と説明した。

■市と意見交換した際のやりとりは

 さいたま市のファミリーシップ制度について、5歳の息子を育てる市内の女性カップルが13日、市の担当者と意見交換した。市の制度は「毎年1回、子どもの意思を確認する」と規定。当事者の家族は「差別的な内容で、改正を検討してほしい」と訴えた。

 当事者家族は自営業のMさん(56)、会社員のKさん(43)、息子のCさん(5)。Mさんらは同規定に反対する同性カップルや異性カップルの意見を載せた意見書を提出。「私たちは制度を利用しない結論に至った。申請しない人は多いと思う。再考して申請したい気持ちになる制度にしてほしい」と求めた。

 担当する市人権政策・男女共同参画課の新藤達也課長は「子どもの権利を考え、導入した。意見交換を受け、すぐに改正することは考えていない」と述べた。新藤課長は取材に「(当事者の)話を聞きながら、より良い制度にしたい。必要と判断すれば、(年1回の意思確認を)含めて改正していきたい」と応えた。

 Mさんは「私たちのような家族にだけ、年1回の意思確認を求めるのは、子どもの尊厳を損なうし、差別的と訴えたかった。1年ごとを消してほしい。検討してもらえないなら、同じ家族の意見をどんどん吸い上げ、市に提出していきたい」と取材に述べた。

 ファミリーシップ制度は、性的少数者(LGBTなど)のカップルと同居する子どもを公的に家族と認める制度。市はパートナーシップ制度の要綱を改正し、11月1日から施行した。年1回の子どもの意思確認は全国初の規定とみられ、現在のところ、申請した人はいない。

■女性カップルは息子と3人家族

 自営業のMさん(56)と会社員のKさん(43)は、11年前から同居。Kさんがドナーからの精子提供を受け、息子のCさん(5)が誕生した。3人家族として暮らし、Cさんの通う保育園には親戚同士と説明。来春の小学校入学時に、2人は家族関係を学校側に伝える意向を持っている。

 市の制度が11月から施行され、2人は市のホームページを閲覧して、毎年1回の意思確認の規定などを読み込んだ。Mさんは「異性婚の人に毎年同じように聞いているのなら分かるが、私たちだけに聞くのは差別的な印象を持った」。Kさんも「差別されていると思った」と振り返る。

 市側はこれまで、「当事者は負担かもしれないが、年1回の届け出の機会を通して、相談や支援につなげたい」と説明している。Mさんは「同性カップルに育てられている子どもは不幸なんじゃないか、嫌な思いをしているのではと無意識の思い込みがあるのではないか」と指摘した。

 2人はCさんが小さい頃から、「うちはママが2人いる。あなたに会いたい気持ちが2人ともあった」と伝えてきたという。子ども向けの性教育本を使って、女の人2人では子どもができないことや、ドナーから種をもらい、Kさんのおなかに入れて、Cさんが産まれてきたと説明した。

 Mさんは「毎年の確認は差別的で嫌なこと。行政が寄り添って、うれしいシステムのはずなのに、さいたま市に限っては申請する人がいないのではないか」。子どもを望む同性カップルは多いとして、「私たちみたいな感情になってしまう。話をする機会を頂いたので、しっかり話したい」と語っていた。

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