<社説>ジェンダー平等 女性活躍で沖縄社会変革を

 沖縄の日本復帰50年の今年、さまざまな分野で半世紀を振り返り、未来を見据えた議論がなされている。ジェンダー平等もその一つだ。国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)はゴール5に「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」と設定する。では、沖縄女性は平等を達成し能力が強化されているだろうか。 20日に県が主催した復帰50周年記念女性活躍シンポジウムで、日本人女性初の国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さんは「貧困や格差など社会問題を解決するために追求すべきなのがジェンダー平等だ」と話した。沖縄社会を変革するには女性の声が政策に反映されることが重要だ。

 復帰前、沖縄は日本国憲法が適用されず、基本的人権すら保障されなかった。女性たちは厳しい経済環境下に置かれ、基地から派生する事件事故の被害者ともなった。

 復帰後は、基本的人権が保障され性別により差別されないとされた。1986年の男女雇用機会均等法で職場の差別はなくなるはずだった。しかし88年に女性バスガイド35歳定年制が問題となったように、雇用差別はまだあった。嫡子(長男)に財産を継承させる、いわゆるトートーメー問題、駐留米軍人と沖縄の女性との間に生まれた子どもが国籍を得られない無国籍児など沖縄社会のひずみが生む課題もあった。

 91年、沖縄で初、全国でも2番目の女性副知事が誕生した。これを機に県庁で女性の管理職が次々に誕生し、女性登用の道を開いた。

 女性への人権侵害に、先頭に立って反対してきたのも女性たちだった。95年の少女乱暴事件で真っ先に抗議の声を上げたのは、北京で開かれた世界女性会議に出席した女性たちだった。女性たちは、住民とあまりにも近くに軍隊が存在し続けることが性犯罪を生む構造的な問題となっていることを強く訴えた。

 沖縄の女性たちは着実に改善を進めてきた。しかし、まだ壁は厚く、課題は山積している。

 中でも政治の壁は厚い。議員に占める女性の割合は県議で約15%、市議で約12%と政治参加が進んでいるとは言いがたい。

 管理職は県庁で約15%、民間企業で約25%。政府の目標「指導的立場の女性比率3割」には及ばない。男女の賃金格差(男性の給与を100とした場合の女性の給与)は81.4で、差は縮まらない。経済的にも劣位に置かれている。

 米兵による性犯罪もなくならない。DV(配偶者暴力)は人口10万人当たりの保護命令件数で全国ワーストだ。女性への暴力が収まらない社会的背景を考える必要がある。

 復帰後の歩みを見てもウチナー女性は変革する力を備えている。官民挙げてジェンダー平等に取り組み、よりよい沖縄社会をつくりたい。

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