「不明となる10分前はミニカーを持って座っていた」 広島・5歳児死亡 明らかになったこと

4月、広島市の保育園で行方が分からなくなった5歳の男の子は、園の近くの川で見つかり、亡くなりました。

事故後、広島市は会見で「保育士が最後に確認できたのは、園庭の隅にある手洗い場でミニカーを持って座っていた」と男の子の園内での様子を説明していました。

保育園の保護者たち
「自分の子どもにも十分ありうる話」
「なぜ急にこんなことになったのか」

事故発生当時、保育園の保護者からは不安の声が聞こえていました。「保育園で起きた5歳の男の子の死亡事故」でこれまでに明らかになっていることとは…。

ことし4月、広島市西区の市立保育園で5歳の男の子の行方が分からなくなりました。男の子が見つかったのは、園の近くを流れる川でした。その後、死亡が確認されました。事故は、いったい、なぜ、起きてしまったのか。あらためて現場を歩きました。

家森亮 記者
「事故から8か月が経過した保育園です。男の子は、保育中に園庭から外に出てしまったということです」

これまでに分かっている事故当日の経緯です。

午前9時すぎに登園した男の子は、午前10時過ぎからほかの園児23人と保育士2人と一緒に園庭で遊んでいました。

午前11時20分ごろ、園庭の手洗い場でミニカーを持って遊んでいるところが確認されています。

その10分後の午前11時半ごろ、保育士が男の子がいなくなっていることに気づきました。男の子は、このわずか10分の間に園の外に出たとみられています。

家森亮 記者
「男の子がいなくなったとき、保育園の正門は施錠されていて、ほかに2か所ある出入口も同じくカギがかけられていたということです」

事故当時の映像を確認すると、園庭は生垣で囲まれて、場所によっては生垣の内側に金属製のフェンスが設置されているところもありますが、それ以外のところにはネットが張ってありました。ただ、ネットがあっても生垣には「切れ目」のような場所があったことが映像から確認できます。

事故を受けて行われた広島市の緊急点検では、市立保育園88のうち、およそ9割にあたる77の園が園児が1人で外に出る可能性があり、施設の改善が必要だとしました。

このうち生垣だけで園庭と園外が隔てられている箇所があった園は11。事故があった保育園はまさにそのうちの1つでした。

家森亮 記者
「保育園では、園庭を囲んでいた生け垣が撤去され、高さ180センチのフェンスが設置されています。フェンスの設置作業は工事は今月末までということです」

続いては、事故のあった日、男の子の行方が分からなくなったあとの動きを確認します。そこからみえてくるものとは…。

午前11時半ごろ、男の子がいなくなっていることに気づいた保育士は、園内を捜索。男の子の家族にも連絡し、自宅にも帰っていないことから、午後0時半前、警察に通報しました。警察と園の周辺を捜索していたところ、午後2時半すぎ、園近くの太田川放水路の砂地で保育士が倒れている園児を発見しました。

家森亮 記者
「保育園から川までは歩いておよそ5分です。一方で男の子が発見されたのは男の子がいなくなってから、およそ3時間が経過したあとでした」

事故発生後、市は、園児が行方不明になった場合、警察への通報を早期に行うとともに、川や海、道路など園周辺の危険箇所を最優先で捜索するよう、市立の園の危機管理マニュアルを見直しています。

こちらは、市が事故後に実施した緊急点検の結果です。園の周辺で、川や海など自然の危険個所がある保育園は、88の広島市立の保育園などのうち67園。239の私立保育園などのうち57園。道路や線路など人工的な危険個所に関しては市立が80、私立が125と多いことが分かります。ですが、園の外に子どもが誤って出ることがなければ、危険も少ないはずですが…。

園からこどもが出てしまう可能性についての結果です。園の回答は「延べ数」ですが、園庭が生垣だけで囲われている保育園が市立で11。門やフェンスがあっても高さが不十分な園は市立で62、私立で34などとなっていました。

事故の後、保育の現場ではどのような対応がされているのでしょうか。そして、市が設置した検証委が事故の検証をすすめていますが、事故の原因と再発防止策は…。

広島市東区にある認定こども園です。こちらでは事故の前から施設の安全対策に取り組んでいます。ですが、西区の保育園で起きた事故のあとは、これまで以上に注意を払っているといいます。

認定こども園 広島光明学園 岡﨑法子園長
「(事故後)市からも点検など対策をしましょうというお知らせがありました。今回あらためて見直す中で、あとはここの裏門のところだなと。ここ(フェンスの上)にパネルを付けていこうと」

園長は施設の改善を行う一方、大切なのは、ハード面だけではないことを再確認しています。

認定こども園 広島光明学園 岡﨑法子園長
「職員同士が仲良くあること、声を掛け合ったり不安なことが声に出せるそういったことが大切」

こどもたちを守る大人たちの「連携」は保育園の中だけではありません。

「施設と施設がある地域と、行政とみんなが一緒に子どもを守っていくという姿があるといい」

5月末に市が立ち上げた有識者などによる検証委員会は、これまでに保育園や市の担当者から当時の状況などのヒアリング、男の子が見つかった川を視察するなどして、事故の原因と再発防止策を検証してきました。

そして20日、検証委員会の最後となる7回目の会合が開かれました。まとめとなる報告書は12月26日に市に提出される予定です。

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