【医薬品供給情報】「DSJP」のこれから/“現場”の声を反映し続けるサイト運営に貢献へ

【2022.12.22配信】「#薬がない」のハッシュタグがツイッターでトレンド入りするなど、医薬品の供給問題が解消されない中、いまだ「DSJP」が存在感を示している。 「DSJP」とは、医療用医薬品供給状況データベース「DrugShortage.jp」(https://drugshortage.jp/)の略称。薬局薬剤師の有志によって運用されており、閲覧者数は10万人以上を誇る。メーカー・卸・病院・薬局など、医薬品業界関係者が広く使用しているサイトに成長している。その「DSJP」の運営者に今後の展望などを聞いた。

最近では日本医薬品卸売業連合会(卸連)副会長の一條武氏が各所の講演の中でDSJPのデータを使用。DSJPからデータを提供してもらったとした上で、出荷調整品のアイテム数について説明。それによると、出荷調整品の状況は2022年1月の1万2800アイテムをピークに4月ごろまで減少傾向をみせたものの、また上昇に転換し2022年8月時点で1万3000アイテムを超えていた。

こうした供給状況のデータに関して卸連がDSJPのデータを用いるほど、業界で頼られる存在になっている。供給状況については、もちろん、卸企業や日本ジェネリック製薬協会(JGA)でも提供している。しかし、卸では取引先に濃淡があるし、JGAも会員外への呼びかけには限界がある。

DSJPは今後、JGAと連携を図っていくことを公表している。詳細はまだ決まっていないが、DSJP運営者は、「仮に国や業界のサイトの精度が上がっていったとしても、常に現場で使う側の声を反映し続けるサイトが必要」との考えで、その運営にDSJPの経験が今後も生かされていくとの認識を示している。

例えば、JGAの供給情報サイトとDSJPの大きな違いの1つとして指摘できるのは包装単位ごとの表示だ。JGAのサイトでは成分名、メーカー名などは検索できるが、そこから先はメーカーが提供している一覧表などの資料へのリンク。包装単位ごとの状況は必ずしも見やすくはない。DSJPでは成分名で検索した際に供給状況の情報が表示されるのは包装単位ごと。なぜなら、実際は患者に渡す際には規格も重要な要素になるからだ。「国やメーカーは、極端にいうと500錠のバラがあれば“ある”と判断するかもしれない。しかし、実際は患者に渡すために必要なのはヒートシートであることがある。こういった現場の細かな感覚は現場にしか分からないのかもしれない」(DSJP運営者)。

「情報開示の姿勢を評価するような環境をつくりたい」

だからこそ、DSJPがJGAと連携していく意味がある。加えて、DSJPは供給情報をしっかり開示している企業とそうでない企業を表示するような機能も持たせていきたい考えだ。
「法整備で今後、企業の義務がどこまでのものになっていくか、変わっていくところもあると思うが、製薬企業の価値として情報開示の姿勢を問うようなサイトにしたい」(同)。

一方、その供給情報開示の姿勢を“価値”だと感じるには、受け手である薬剤師の倫理観醸成も不可欠との考え。「薬剤師側がその価値を感じなければ企業側も“開示しなくても売れるからいいではないか”となってしまう。薬剤師側がどう受け止めていくべきなのかも、考える場をDSJPが提供できればよい。企業側と現場の両方に対して中立的な立場があって初めてDSJPの貢献も出てくるのではないかと思っている」(同)。

DSJP自体が客観性を維持するために第三者評価委員会などは考えているのか、と聞くと、「考えたことはなかったが、そういう体制があってもよい」との考えを示した。

医薬品提供の担い手として薬剤師がどう供給問題に向き合っていくのか。供給情報だけでなく、薬局間での情報共有の在り方や処方医との連携体制、地域で滞りなく医薬品を使用するためのフォーミュラリへの関わりなど、期待は大きい。その中で、有志から始まったDSJPの取り組みも今後、拡大していくだろう。DSJPは運営会社として一般社団法人asTas (アスタス)を立ち上げ。今後、さまざまな業種や関係者と連携を深めていきたい考えだ。

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