鈴木おさむ&映画評論家の松崎健夫が、独断と偏見で選んだ本年最強の映画10作品をかく語る。

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火曜日の「シンラジオ」は文系CLUBラジオです。12月20日(火)の放送は週替りパートナーの映画評論家の松崎健夫さんと共に、今年観た新作映画「個人的ベストテン」をご紹介します!

__鈴木おさむ(以下、鈴木) 僕、こういうメディアでベストテン発表するの初めてです。
松崎健夫(以下、松崎) へえ、意外ですね!?
鈴木 でも松崎さんとこうして番組やるようになって観る映画の本数も増えたので、嬉しいです。__

ここで鈴木さん、個人的プレゼントを発表! USJに行って映画「E.T.」の等身大ぬいぐるみ(28000円)を自腹で買ってきてくれました。2体買って1体は自宅にあるそう。結構存在感があってキモカワイイです。当選1名のラッキーリスナーは誰だ!? ※応募は終了

まずは10位から……

__鈴木 さて10位からですが、僕が紹介するのは邦画『ハケンアニメ!』です。松崎さんに強くお勧めされまして、良かったです。吉岡里穂さん、中村倫也さん出演で同じ時間帯のアニメ放送があって、裏番組のアニメとどちらが覇権をとるかという話。アニメの裏側を描いた話はあまりないし、ストーリーの中にオリジナルのアニメが出てくるんですよね。
松崎 それがすごいですよね。原作である辻村さんの小説の中にもアニメは出てくるけど、小説は文字だけの表現のところが、映画はそれ以上に視覚的にも見せないといけない。作品中の2つのアニメのクオリティが高くないと成立しないんです。そこが素晴らしかった。
鈴木 アニメファンじゃなくても、青春ものとしても観れる。日本のアニメは大人気だけど、アニメを使った実写映画は新しい描き方として注目されると思う。さて松崎さんの10位は?
松崎 ちょっとニッチな映画ですみません(笑)。『ハケンアニメ!』という映画で、地方公開されているもので、東京ではそれほど当たらなかったんで何とか見てほしいんですが……。かつて起きた未解決の事件が元になっています。
鈴木 本当に起きた事件ですね?
松崎 はい。スイミングスクールインストラクターが殺された事件があって、担当刑事が事件を追ってたのですが、迷宮入りして終わってしまったんです。その事件を追っかけていたのがとら男で、刑事を退職しても追っかけていく話なんです。
鈴木 はい。
松崎 その刑事役が本当に犯人を追っていた、とら男さんなんです。
鈴木 ええっ、その刑事がその役を?
松崎 ただドキュメントではなく、演じる役柄として犯人を追ってこの映画なりの答えを出しているのがポイントです。自主映画ですが若い監督で、こうした方が社会的なものをすでにうまく描き出しているのがすごくて、10~20年後が楽しみでぜひ応援してほしいと思って10位にしました。__

もはや定番作品の揃った第9位

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__鈴木 僕の9位は『すずめの戸締り』。もう内容説明するまでもないですけど、新海誠監督が東日本大震災に向き合って作ったエンタテイメントですね。松崎さんが涙腺崩壊したということで、僕もよくこれをエンタテイメントにしたなという感心しています。時間が経ったらもっと上位になりそう。噛みしめるのに時間が必要かな。
松崎 僕も新海監督の長編作品では一番好きです。けど手放しに好きだといいにくいところがミソで、なぜ手放しで表現できないか、この10年間位の見た人の社会への思いが映画の中で深く代弁されていているんです。
鈴木 公開タイミングによってこの作品の印象が変わったかも。確かに大ヒットしているけど、同時期にワンピースやスラムダンクのジャンプの2大作があって、時期が違ったらはまり方も違ったかもしれない。
松崎 夏休みに公開されてたら、また違ったかもしれない……
鈴木 世の中の空気感や公開時期で、映画の印象は変わっていきますね。
松崎 「暗い時代には暗いもの好む」という傾向があって、最近は明るいワンピースとかヒットしてきて、時代が変わってきたのかという気がします。
鈴木 ネット漫画とか暗いものが多かった気がするんだけど、観客はスカッするものが受けてきているような気もする。
松崎 そこで僕の9位はそういう意味ではスカッとすると思うんですけど、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』です。
鈴木 ああーーーっ! 僕もこれ入れたかったです。
松崎 こちら3作目ですけど、1作目の精神をそのまま引き継いで作られたような作品です。かつての主人公の孫たちの話になってる。また前2作を手掛けたアイヴァン・ライトマン監督の息子で、ジェイソン・ライトマンが監督をしているんです。これにも継承を感じます。
鈴木 そうですね。
松崎 ジェイソン・ライトマン監督にとって親父があまりにもヒット監督で、コメディー映画を得意としていたので反発して社会派ストーリーばかり作ってたんですが、今同じ道を進もうとしている。それが本作のストーリーでも同じような展開・シンクロがあって。
鈴木 しかも公開してすぐに、お父さんのアイヴァン・ライトマンは亡くなっているんですよね。なんか運命的だなあ。__

時代を超えて受け止める作品も

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__鈴木 8位はこれも松崎さんがおすすめしてくれたのですが、『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』です。こちらはアニメシリーズで放送されたとき、大きな話の間のつなぎ役的なストーリーだったものを、よくみるといい話じゃないかと2時間の映画にしたものです。
松崎 最近、リイマジネーションというモノづくり法があって、原作にあるものを今風に仕上げるというもので、こちらも40年前につくられたアニメなのに、現代的な疑似家族の物語になっていたり……。
鈴木 はい。
松崎 ちょうど公開の頃にウクライナの戦争が勃発して、ウクライナがガンダムの舞台にもなっているので、どこか勝手に重ねて観てしまいますね。
鈴木 そうなのか~!
松崎 もちろん狙って作れるわけはないですけども、この時期に公開したからこそガンダムの話を越えて今の社会と重ね合わせて観ることになってる。
鈴木 なんかすごいタイミングです。続いて松崎さんの第8位は?
松崎 『ヘルドッグス』です。鈴木さんがまだ観てないということで、ぜひ見てほしい。警察の潜入捜査もので、主演の岡田准一さんが刑事としてヤクザ組織に入って中からつぶしていく話です。昔からこういうストーリーは海外ではよくありましたが、日本映画でこんなシャープな作品が作れるのかと。あとは岡田さんの身体能力がすごい。
鈴木 これ見たかったんですよ~。
松崎 これだけの技術やアクションで見せられるなら、香港や韓国などとの合作も日本で作れるような気がします。__

超おすすめがすでに第7位で登場

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__鈴木 これはもう個人的にこうした設定が大好き。7位に『ハケンアニメ!』を選びました。韓国の興行収入では第2位の大ヒットでしたが、日本では全くヒットしてない。最近、各地でいきなり地面が抜ける現象が起きてますけど、こちらはマンションを買ったある家族の話で、マンションごと500メートルほど落ちるんです(笑)。奈落に落ちたマンションから脱出する話。
松崎 (笑)
鈴木 脱出物はいくらでも作られてきたけど、少し器を変えるだけでこれだけ新しく見えるんです。マンションが下に落ちると。実際にも似たようなことがあってリアリティもある。「そんなあほな」ということも起きますが、展開が好きです。
松崎 まだまだ映画におけるアイデアはあるよっていう。
鈴木 そう。日本っていい設定はあるけど“今までにないもの”って少なくて、もっと出てもいいのかも。
松崎 日本ではオリジナルな企画が通らない話もよくありますよね。
鈴木 TVとかみると『仰天ニュース』で面白いのがあって、これ映画にすればいいのにって(笑)。ネタはいっぱいある。さて松崎さんの7位は?
松崎 はい、僕のセレクトはアカデミー作品賞を獲った『Coda コーダ あいのうた』です。
鈴木 あ、これ今年に入れていいのですね?
松崎 え? いやこれは…1月公開か、あぶねー。試写で2021年11月に観たから去年のものかと。
鈴木 そうなんですよ。俺これ(今年だと勘違いしてなかったら)入れてた(笑)
松崎 ろうあ者の家族で、長女だけ耳が聞こえる。長女が音楽の道に進むけど、家族は聞こえないから本当に上手いかどうかわからず葛藤するという話なんですけども。
鈴木 うんうん。
松崎 今年はこうしたテーマのものが多くて。『猿の惑星』やド『ライブマイカー』などでもハンドサイン(手話)が出てきたり、ホラー映画などでも使われてたりと、ここ何年か申し合わせたわけでもないのにあちこちで出てきています。最近ではTVドラマ『silent』でもそうしたテーマで話題になりましたね。
鈴木 多分この作品がヒントになっているんじゃないですかね?
松崎 そう思いますし、それはいいことだと思いました。そうしたことを表現できる土壌がこうした作品からどんどん派生していって、将来普通になるように社会が変わっていけばいいですよね。
鈴木 お父さんの前で歌を歌うシーンがあるんですけど、感動で号泣しましたよ。しかしこの作品が7位なら、この先どうなるんだ?__

ここで「名画の見方」のコーナーです。今回取り上げるのは「ダイ・ハード」! クリスマスの季節感も出ているこの映画について、鈴木さんと松崎さんが切り込んでいきます。

__鈴木 さて今回取り上げるのは『ダイ・ハード』です。
松崎 こちらは1989年日本公開ですね。
鈴木 僕よく覚えているのが、おすぎさんが『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」で「こんな面白い映画がある」って、オチまで話してたんですよ(笑)。
松崎 (笑)
鈴木 で、これは見たいと思ったんですけど映画館はないし、レンタルビデオ屋もなかったんです。高校になってようやくレンタルビデオ店ができたときに、一番最初に借りたのがこちらの作品です。
松崎 おーそんな思い出が!
鈴木 それで20年ぶりに見たんですけど、80年代後半の映画ですがやたら日本が出てきます。バブル期で、金で日本がなんでも買い漁ってる時代で日本人がテロで襲われるという設定で。
松崎 そうなんですよね。
鈴木 それでこのストーリー、舞台になったブルース・ウィルスのいるビルの外にいる黒人とのリモートによるバディものでもあるんですよね? あと悪役の典型的な悪者ぶり。まさにアクション映画のお手本みたいなもので、ここから色んな形でパロディされてました。
松崎 制作当初は全く期待されていなくて、そもそもスタローンやシュワルツェネッガーを想定して進んでたんです。それが諸事情で流れてしまい、ブルースに話が。
鈴木 でもスタローンやシュワルツェネッガーならもともと強そうじゃないですか? 一方でこの、しがないおっさんが主人公で大丈夫かって思うんですけど、ストーリーが進むにつれてどんどんヒーローに見えてくるのが面白いんですよね。
松崎 また脚本は伏線の張り方についての教科書みたいなもので、そのときまさかというものが後に続々と生かされているんです。それは観客の記憶力を信用していることの裏付けにもなっています。
鈴木 最初のシーンから後に続く伏線がありましたよね。
松崎 それとこちらには、実は原作があります。
鈴木 原作あるんですか!?
松崎 フランク・シナトラの『刑事』という小説があり、その続編が『ダイ・ハード』なんです。本当なら『ダイ・ハード』はフランク・シナトラの主演だったかもしれない(笑)
鈴木 正直、それがレンタルビデオ店に置いてあったら見なかったと思う(笑)
松崎 原作のテイストは全く残っていないです。『刑事』のことは知らないけど、この話は超有名になりましたね。
鈴木 改めて観ていただくと、アクション映画だけどクリスマス映画でもあるこの作品。クリスマスにいかでしょうか?__

さてランキングも佳境に入ってきました。洋邦問わず、様々なジャンルの映画がここまで出てきていますが、あくまで個人的な判断によるもの。どんな作品が出るが全く読めません。

うまいこと振り分けられた2人のランキング

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__鈴木 ここでは第6位、第5位をまとめて出したいと思います。まず僕の方ですが、第6位は『ONE PIECE FILM RED』です。新海監督とかも歌を重視しているように、ウタというキャラにadoを使って楽曲と作品のコラボが実現していてすごいなと。
松崎 うんうん。
鈴木 『ワンピース』を見てない人も、爆裂に面白いミュージカル映画になってると思います。今年最大のヒットが主題歌の『新時代』なんじゃないかと思うくらいですが、ワンピースというみんなが見慣れているコンテンツからヒットさせるのは難しかったんじゃないかと。
松崎 第5位はいかがでしょう。
鈴木 第5位は『さがす』です。佐藤二郎さん主演で片山慎三監督。多分松崎さんのランクのどこかに入ってるから、ここで僕は何も言いいません(笑)
松崎 読まれてますな~。なるほどなるほど。ではまず私の第6位ですが、現在公開中の『ケイコ 目を澄ませて』です。
鈴木 あーこれいい映画ですよね、(ランクに)入れようと思ったもん。これは僕もめっちゃ迷いました。
松崎 この映画は先ほどの『Coda コーダ あいのうた』と同時期に出た、耳の聞こえない女性ボクサーの葛藤を描いたものです。なぜボクシングをやってるか、岸井ゆきのさんのまなざしだけで観ている私たちが察することができるんです。
鈴木 はい。
松崎 モデルになったのが実際のプロボクサーである小笠原恵子さんです。耳が聞こえないんですけど、彼女は他人とコミュニケーションするとき、表情から読み取っているとインタビューで話していまして、僕らも作品中で同じようにセリフのない岸井さんの表情を読み取ろうとしている。同じことをしているなって不思議に感じました。
鈴木 岸井ゆきのさんを見て、いよいよ日本にもこんなすごい俳優が出たかと思いました。最初のボクシングの迫力あるシーンも本人がやっていて……
松崎 劇中の効果音もうまく削られていて、逆にミットを打ってるシンプルなリズムが音楽のように聞こえてきて、この感じをぜひ映画館で体験してほしいですね。
鈴木 そして第5位はいかがでしょう。
松崎 『アンデス、ふたりぼっち』という作品です。
鈴木 これ見に行こうかと思ったんですけど、単館で回数が少なすぎて見に行けなかったんです。
松崎 アンデスの山奥で暮らす老夫婦のことを描いた映画で、電気もインターネットも通っていないんです。
鈴木 ドキュメントじゃないんですよね!?
松崎 夫婦が暮らすだけの映画なんで最初何が面白いんだと思ったんですけど、後半はこんなにドラマチックになるのかとビックリしました。
鈴木 へえ~
松崎 それでこの作品のオスカル・カタコラ監督はこの作品後に亡くなってしまってこの1本しかないんです。こんなに才能があるのに……
鈴木 ええっ、そうなんですか!?
松崎 大ヒットして、ペルーで年間興行収入第1位になりました。いまなかなか上映機会がなくて、もしタイトル見かけたらぜひ観ていただきたいです。
鈴木 やっぱり松崎さん、すごいです。僕のこのメジャー作品中心のパンチと、松崎さんの映画評論家らしいセレクト(笑)。
松崎 (笑)
鈴木 でもいいですよね!? 松崎さん絶対ワンピース入れないだろうって思ってたから(笑)。この対照的な、うまいこと振り分けされている感じが面白い。__

このあとはいよいよ上位4作品をご紹介。あの話題作や、これから超期待できる作品など、聴きどころ満載なランキングが続きます。しかもなんと、第1位は2人揃ってまさかの同タイトル! はたしてその作品とは……!?
続きはradikoでお楽しみください!!

シン・ラジオ-ヒューマニスタは、かく語りき-

放送局:bayfm78

放送日時:毎週火曜 16時00分~19時00分

出演者:松崎健夫

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