日銀のサプライズ政策変更後に売られた業種、買われた業種は? 2022年の金融市場を振り返る

12月20日に日銀がサプライズで金融政策の変更を発表しました。まずは簡単にどのような政策変更だったのかをご紹介します。


年末の日銀のサプライズ

長短金利操作(イールドカーブコントロール)という日銀が行っている金融政策では以下のようにルールを定めています。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

上記の長期金利部分について、これまでは「ゼロ%から±0.25%の変動を許容する」としていたところを、今回「ゼロ%から±0.5%の変動まで許容する」と方針を変更しました。実質的には長期金利が+0.5%まで上昇することを意味しており、これに対してマーケットは「日銀は実質的な金融引き締めに動いた」と受け止めました。

これにより変更が発表された12月20日に市場は大きく反応しました。おもな反応は以下のとおりです。

・日経平均株価が669円の大幅安となった
・1ドル137円程度だった米ドル円が一時1ドル130円台まで円高に動いた
・円高が嫌気され輸出で稼ぐ自動車関連銘柄などが大きく売られるとともに、今後住宅金利が上昇する可能性が想起され、東証33業種の不動産やJ-REIT指数も大幅に下落した
・金利上昇が収益増加につながるとの思惑がメガバンクなどの株価が大幅に上昇

一方で日銀は国債の買い入れ額を増やすことも発表しており、黒田日銀総裁は会見で「市場機能の改善を図る意図で、実質的な利上げや金融引き締めに当たらない」ことを強調しました。ただ、翌21日の取引でも自動車や不動産は大きく売られ銀行が買われる動きは続いており、市場は警戒モードを解いていません。来春には退任が予定される黒田総裁が、退任に向けて地ならしを始めたのではといった見方も出ているようです。

今年上がった株・下がった株は?

さて、年の最後に思わぬサプライズがありましたが、今年の株式市場はどのようなパフォーマンスだったのでしょうか?

まず各国の代表的な株価指数のパフォーマンスをご紹介します。

表を見れば一目瞭然、今年は株式市場にとって非常に厳しい年だったことがわかります。日経平均は7.7%の下落、マザーズ指数は26%超の大幅下落となっています。輪をかけてパフォーマンスが悪いのが、米国のNYダウ平均とナスダック総合指数で、ダウ平均は9.6%、ナスダック総合指数は33%近い大幅下落で表の指数の中で最も悪いパフォーマンスとなっています。

これらの低パフォーマンスをもたらした理由は大きく2つあると考えられます。1つ目はコロナ禍におけるIT関連企業への過剰な成長期待が剥がれたこと、そしてもう1つは米国の金融引締め政策による米金利の上昇とそれに伴う景気鈍化懸念です。2つの要素が重なり、IT関連の成長株が特に厳しいパフォーマンスとなっているのがマザーズ指数やナスダック総合指数の低パフォーマンスに現れているのでしょう。その他の指数を見ても、ドイツのDAX指数、英国のFTSE100、ブラジルのボベスパ指数、香港のハンセン指数、中国の上海総合指数がいずれもパフォーマンスがマイナスです。

インドのセンセックス指数が孤軍奮闘といった格好で+5.9%と唯一のプラスパフォーマンスとなっています。センセックス指数は12月に入って史上最高値を更新するなど長期的な好パフォーマンスが目立っています。

では最後に、個別銘柄のパフォーマンスをご紹介します。日経平均採用銘柄について、昨年末と今年の12月20日の終値を比較し、騰落率ベスト20・ワースト20の銘柄を抽出しました。

上がった銘柄ベスト20(日経平均構成銘柄)

上昇した銘柄を見ていくといくつかのパターンが見られます。まず、三菱重工業(7011)、日揮ホールディングス(1963)、東京電力ホールディングス(9501)、IHI(7013)は原子力発電所の再稼働期待と見られます。また、高島屋(8233)、三越伊勢丹ホールディングス(3099)は外国人観光客(インバウンド)の大量来日が見込まれることへの期待から買われたのでしょう。その他に三井物産(8031)、双日(2768)、丸紅(8002)といった大手商社やINPEX(1605)は原油価格の上昇による業績改善期待が高まったものとみられます。

下がった銘柄ワースト20(日経平均構成銘柄)

一方で残念ながら株価が冴えなかった銘柄もご紹介します。株価下落率ワースト1位は楽天グループ(4755)でした。携帯事業で巨額の赤字を計上しており、業績改善の兆しもあまり見られないことが失望売りを誘ったのでしょう。その他にもZホールディングス(4689)、日本電産(6594)、リクルートホールディングス(6098)、サイバーエージェント(4751)、エムスリー(2413)など長期的に高成長を続けてきた銘柄の大きな下げが目立ちます。先に記したように、一昨年・昨年といわゆるITグロース株が大きく買われましたので、その反動が出ているといえそうです。

これまで見てきたように、今年は非常に株式市場に厳しい年でした。米国のFRBがいつまで金融引き締めを続けるのか不透明感があることに加えて、日銀が金融政策を変更するなど来年の相場動向もますます読みづらくなっています。

短期的に相場の底や天井を当てることはほぼ不可能な一方で、長期的に適切な方法で続けていけば大きな成果を得られることも投資の特徴です。NISA制度の拡充が報じられるなど、ますます投資をしやすい環境が整ってきそうですし、ぜひ短期的な上げ下げに目を奪われすぎることなく、長期的な果実を享受いただければと思います。

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