星野リゾート代表が北海道に重大提言!?ことしの観光どうなる

今回の特集は「観光」。星野リゾートの星野佳路代表と株式会社「大人」の五十嵐慎一郎社長をゲストに招き、2023年の北海道観光がどうなるかを考える。

【北海道での存在感強める星野リゾート カギは「マイクロツーリズム」】

星野リゾートは、トマム・OMO7旭川に続き、昨年OMO5小樽、OMO3札幌すすきの、白老町の民族共生象徴空間ウポポイのそばに界ポロトをオープンした。2026年秋にはひらふ地区に高級分譲ホテルとして星のやを開業する。

星野リゾートがコロナ禍で力を入れるのが「マイクロツーリズム」だ。上川の占冠村にある星野リゾートトマム。

ここにできたドーム型の建物。なんと氷でできた北海道のコンビニ大手セイコーマートだ。

パンに菓子類、そしてマスクやティッシュなどの日用品がずらり。目を引くのは、店内調理のホットシェフにちなんだアイスシェフ。フローズンヨーグルトづくりを体験できる。

星野リゾートは去年2月、近場を旅するマイクロツーリズムを盛り上げようと、セコマと連携。セイコーマートクラブ会員を対象とした宿泊優待などの事業に取り組みんでいる。今回の取り組みは、連携の第2弾の位置付けだ。

星野代表は「セコマのカード会員は、北海道の人口とほぼ同数の540万人に上る。優待をつけ、北海道民の“セコマ愛”を分けてもらう。北海道は元々北海道内での旅行比率が高くマイクロツーリズムの土壌がある。北海道民マーケットをしっかりと捉える」と話す。

【積丹の町営温泉を再生 アイデアマンが目指す地域との二人三脚】

先月、ある場所で行われたクリスマスイベント。その場所とは、積丹町にある、温泉施設「岬の湯しゃこたん」。

「岬の湯しゃこたん」は、町営の温泉施設として2002年に開館した。日本海に臨む露天風呂は絶景でファンも多いが、思うように客足を伸ばせず開業当初から赤字が続いていた。

その再生を担うのが、株式会社「大人」の五十嵐さん。積丹でクラフトジンの製造販売をしている会社とともに新たなまちづくり会社を立ち上げ、この施設の運営を引き継いだ。

五十嵐さんは小樽市出身。札幌南高校、東大建築学科を卒業し、不動産ベンチャーを経て北海道に戻って独立。2016年に株式会社「大人」を立ち上げた。不動産業だけでなく、ウエディングやイベントの企画など、幅広く事業を展開。

移住希望者を自治体などが指名し、交渉権を得る「移住ドラフト会議」など、ユニークなイベントも行っている。札幌で毎年開かれているビジネスとアートの祭典「NO MAPS」では、総合プロデューサーも務めた。

この冬からサウナや食堂など本格的な施設のリニューアルを予定していて、宿泊の機能も備える計画。ただ、五十嵐さんの改革はこれだけではない。その1つが、この日のようなイベント。近隣の飲食店などを巻き込み、地域との関わりをより密接にしている。

五十嵐さんは「地域なしに温泉は成り立たない。相乗効果を出していけたらいい」と話す。また、積丹の観光について、季節の偏りが課題だと指摘。夏場には、ウニ・海鮮丼と海の絶景を求めて多くの観光客が訪れるが、年間通して観光客を呼べる構造へ、“脱ウニ”の戦略が必要だと話した。

【星野リゾート 次なるキーワードは“スモールマスマーケティング”】

星野リゾートが戦略とするキーワードの一つが、「スモールマスマーケティング」。それほど大きくなくても、特殊なニーズが存在する市場をターゲットとする。

星野代表が例に挙げたのが、愛犬家。犬を連れて旅行をしたい人は一定以上の規模で存在するが、その環境が整っている宿泊施設は少ない。環境の整備や企画・サービスをつくることで、その市場を取り込むことができると話す。

五十嵐社長もインバウンド向けにウエディング事業を手掛けている。絶景やアウトドアの環境で結婚式を挙げたいという海外客は少なくなく、手ごたえを感じている時にコロナ禍となってしまった。今は回復の兆しが見えてきたという。

【2023年の北海道観光はどうなる? 星野代表が重大提言!?】

星野代表は、2023年の北海道観光について「2020~2022年より良くなっていくのは間違いない」としつつ、コロナ禍前の2019年の状態に戻ることがいいことなのか、改めて考えるべきだと話した。

世界的にもこうした議論が行われていると言う。観光客がいなくなったことで海の環境が改善されアザラシが戻ってきた海水浴場などもあり、「人々が観光客で混雑していない状態が快適だということに気づいた」と指摘する。星野代表は「人数よりも質・内容を求める観光にシフトしていかなければならない」と話す。

こうした背景を踏まえ、星野代表は北海道観光に一つの提言があると言う。それが「ゴールデンウイークをずらす」こと。北海道は観光地として魅力があり、黙っていても国内客はゴールデンウイークに北海道へ来ると指摘。北海道民のゴールデンウイークを1週間~10日ずらせば、「北海道外の客がいない時期に」「混雑がなく」「料金も安く」旅行ができ、観光地・旅行客にとってWin-Winになると話した。

2023年は海外からの観光客も増えることが予想される。ただ待つのではなく、戦略を持って客を呼び込むことが重要だ。
(2023年1月7日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道